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桃太郎 かぐや姫編 承

 オワリ郊外の豪華な館の一室に石上も含めて5人の貴族たちが並んで正座していた。

 全員、かぐや姫争奪戦の恋のライバルたちだ。

 従者である俺は、他の連中の従者と共に5人の後ろに控えている。


 5人の前には十二単みたいな和服を着た黒髪ストレートの美女が座っていた。

 マジ、美人!

 凛として清楚。少し真面目な感じの冷たい美人だ。

 可愛い系が好きな俺のゾーンとは違うが、迫られたら100%コロッと行く自信がある。

 「こちらが、私のサラマンダーの皮にございます。」

 あれが大納言か。結構歳いってるな。

 大納言の従者がかぐや姫に桐箱を手渡した。

 「まあ!8枚も!」箱を開けたかぐや姫が嬉しそうに声を上げた。

 あ?複数枚!?

 買い占めたのを全部渡したのか!

 しまった。

 一枚で良いんだと思ってた。

 「素敵よ!かぐや、大納言大伴の事が大好きですわ!」かぐや姫は嬉しそうに言った。「アルマニャックとフォティファイドの間に置きたいくらい大好きですわ!」

 アルマニャックとフォティファイドってなんだ?

 「申し訳ございません。この世でもっとも高貴で美しいレディ。」扇子で口元を隠しながら、大納言の隣に居た優男が言った。「私は4枚しか持って来れませんでした。」

 今のキザっぽいのが右大臣かな。

 差し出された桐箱を開けたかぐや姫は嬉しそうに叫んだ。

 「まあ!阿部右大臣!なんて大きいサラマンダーの皮なの!?これもすごいですわ!」かぐや姫はこれまた喜びの声を上げた。「パライバルトルマリンやタンザナイトみたいに素敵よ!」

 パライバルトル・・・なんだって?

 他の二人の求婚者達も複数枚収めたようだ。

 この二人に至っては、王家の人間らしい。

 「かぐや姫様。私からもささやかながら。」

 桐箱をもってかぐや姫に渡す。

 近づくと、なお美人なのが分かる。肌綺麗。白い。

 「あら・・・。小さいのが一枚。」かぐや姫は明らかに不満足そうに呟いた。「これだけ?」

 「も、申し訳ございません。」石上が頭を下げた。「私の愛が足りのうございました。」

 「くっくっく。」他の求婚者たちから失笑が漏れた。

 くっそ、一枚持ってくりゃいいと思ってたんだよ。

 だって、かぐや姫ってそういう話じゃん。

 それにサラマンダーって見つけるのがすごい大変なんだよ!

 「中納言ごときがこの場に居ること自体が分不相応なのだ。」大納言が言った。

 「貴公のような葉末の貴族は姫と同じ部屋にいるだけでも恐れ多い事だと知りなさい。」右大臣も言った。「それでも姫のお姿を拝謁したいのであれば、財を投げうつくらいはしなくてはなりませんよ。あなたは貧乏人なのですから。」

 「お二人ともそこまで言っては石上が可哀そうですわ。」かぐや姫は言った。「でも、石上。かぐや、少しガッカリですわ。次は頑張りなさい?」

 うわぁ。

 一気に冷めた。

 「でも、安心して、かぐや、あなたの事も好きよ?」かぐや姫が少し考えてから言った。「そうね、カナブンとドウガネブイブイの間くらい。」

 ドウガネブイブイってなんだ?

 「次のテストは魔法樹の枝をお願いしますわ。すごいのくれたら、かぐや、ときめいちゃいます。」かぐや姫が皆に言った。「皆様の頑張りに期待していますわ。」

 この世界は魔法樹の樹ってのがある。特に何かの効果があるわけでもないがこれまた高価で貴重な品だ。

 てか、今回の試験の決着とか優越とかはないの?

 「大納言の全財力をもってして、魔法樹の枝と言わずに幹を手に入れてみましょう!今度は大きさでも負けぬように。」

 「右大臣の全権力をもってして、この世界の全ての魔法樹の枝を刈ってこさせましょう!今度は数でも負けぬように。」

 大納言と右大臣が火花を散らす。

 「では、ごきげんよう。」かぐや姫は貰うものは貰ったとばかりに部屋から出て行った。

 あいつ、試験を名目に高いもの貢がせようとしてない?

 「ああ~これで、全面床暖房にできるわぁ~」とかぐや姫の去って行った廊下の先から声が聞こえた。

 うわあ、顔は良くてもあいつはダメだ。

 大納言たちもそそくさと立ち去る準備を始めた。

 すれ違いざまに大納言が石上を見下ろすようにして言った。

 「財力もない中納言には大変な一件だな。せいぜい、かぐや殿を悲しませるような事だけはしないでくれよ。」

 そういうと、大納言は意地悪く笑って去って行った。

 「たしかに、こんな小童しか雇えない力のなさでは今回のクエストは荷が重そうですね。ふっふっふ。」

 今度は右大臣が見下すような視線を石上に浴びせて去って行った。

 石上は黙って下唇を噛んでいた。

 おのれ、小童舐めんなよ?

 「今日はふがいない結果で、すみません。」石上に頭を下げる。「たくさん獲ってこれれば良かったのですが。」

 「いえ、あなたはサラマンダーの皮をきちんと手に入れてくれました。」石上は言った。「あなたが居なかったら一枚だって持ってくることはできませんでした。」

 「ところで、石上さん、本気でかぐや姫に行きます?あなた、不幸になりませんか?本当に良いんですか?」一応、確認する。

 さっきの態度で幻滅してるかもしれんし。

 「もちろんです!さっきの聞きましたか?かぐや姫は私を大納言と右大臣の雑言からかばってくださった!なんとお優しい!」石上は感極まったように言った。「私はきっと彼らよりも愛されているに違いありません。」

 前向きだな、おい。

 「カナブンと同列扱いされてましたけど・・・?」

 「カナブンとドウガネブイブイを区別するくらいだから、きっと彼女はカナブンの事が大好きに違いありません!!」

 前向きだな。

 ドウガネブイブイってなんだ?

 「次は無様な姿を見せてかぐや姫をガッカリさせるわけには参りません。桃太郎さん!ご助力お願いいたします!!」

 まあ、こっちは仕事だからいいけど。




 ちなみに、後ででギルドで訊いたら、ドウガネブイブイってカナブンのことだった。


*桃太郎はこういってますがカナブンとドウガネブイブイは違う昆虫です。

*ドウガネブイブイは害虫でカナブンは益虫で数も減ってます。皆様におきましてはドウガネブイブイとカナブンはきちんと区別しましょう。

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