おじいさんとおばあさんは桃太郎にキビ団子と刀を持たせました。
さすがに、一人で旅立つというのは少しだけ心細い。
なんだかんだで、家族はしてたな。俺、邪魔者っぽかったけど。
まあ、家庭事情なんてどこも複雑だ。
5歳児と言っても、普通にモンスターは狩れるし、それを調理することもできるので食い扶持には困らない。
それに、俺、桃太郎だし、そのうち金銀財宝が手に入るのだろう。
ジジィとババァの元を離れ、まだ見たことのない町へと一人むかう5歳俺。
街へは1か月ほどで到着した。
てか、ほんとに田舎に住んでたのな、あの二人。
バラエティーで取材されるレベルで人里離れてたぞ?
街は大きく、城壁で囲われていた。城壁が日本の石垣ではなく、欧州のそれなんだが。この世界の世界観はどういう方向性なんだろうか?
城門は兵士が守っていた。ちなみにちょんまげではなかったが、日本刀っぽい刀を帯剣していて服装も若干「和」の要素が入っていた。
いろいろ聞きこんで、街の冒険者ギルドへと到着した。
手前側は洋風でも和風でもない感じで木の椅子があって、奥にのれんのかかったカウンターがあった。
のれんには「どるぎしゃんけ~ぼ」って書いてある。
なんとなく、田舎のうどん屋みたいな雰囲気だ。
左手は一段高くなった広間に畳が敷かれて、そこで冒険者たちが何人もくつろいでいた。
男性の格好は若干和テイストでどっちかってと『侍』って感じだ。ちょんまげではない。女性の格好もファンタジー感が強いが、髪留めがかんざしだったり、ガラが和服っぽかったりしている。
冒険者たちからの目線が痛い。
『え?こいつが冒険者?』
『冒険者を舐めるんじゃねえ。』
『坊や、おうち帰ってマンマのお乳でも飲んでな(笑)』
あたりの煽り文句がフラグにならんのよ。
だって、俺5歳だもの。
その手の注意喚起はむしろ正しい忠告にあたると思う。
それ以前に、あまりにも自分が幼児なため、冒険者ギルドに居た強面たちが誰一人として絡んで来ない。
あの子は何しに来たんだろうとこっちを見ている。
魔法使いっぽい女の子に笑顔で手を振られたので、思わず手を振り返してしまった。
子供のお使い番組とか見てる感じなのだろうか。
「す、すみません。」
カウンターに背を伸ばして、受付のお姉さんに声をかけた。
お!美人や!
「はいはい、ボク。お使い?」受付のお姉さんがニッコリとほほ笑む。
カウンターから出てきて俺の前にしゃがみこんだ受付ちゃんの豊満な谷間が熱い!
やったぜ!子供万歳!
見ず知らずの美人にほほ笑まれるだけで嬉しい俺、ちょっと情けない。
「い、いいえ。ぼ、冒険者になりたくて・・・。」
「・・・(ニッコリ)」
なんか言ってくれ。とても気まずい。
「その、冒険者になりたいんですけれど、どうしたら良いですか。」
「そっかそっか。」受付ちゃんがニッコリと笑った。「ボク、冒険者になりたいんだ~。剣士さんにあこがれてるのかなぁ?それともまじゅちゅしさんかしら~。」
「魔法が使えるか分からないので、まずは剣士か物理で戦うような職業がいいです。」そう言えば、この世界の職業制度ってどうなってるんだろう?「魔法が使えるようになったら、職業の変更はできるのですか?」
「おー偉い偉い。ちゃんと将来の事考えてるのねぇ。」受付ちゃんが、俺の頭を撫でた。
恥ずかしそうにうつむくふりをしてオッパイをガン見。
「大丈夫、きちんとテストに合格した職業は好きに名乗ってもいいのよ~。」
複数登録できるってことか。
「まず、剣士になるためには、毎日素振りをしなさい。あと、走るのも大事よ。強いモンスターから逃げられないと死んじゃうからね。魔法使いでも走れないとダメだからね。何事も基礎は大事。」
将来の夢とかちゃうねん、登録に来とるねん。
5歳児って苦労してんだな。
「あ、あの。5歳だと登録は無理なんですか?」
「え?」受付ちゃんが困った顔で俺の顔を覗き込んだ。
「冒険者登録をしたいんですけど・・・。」
「あ~、うん、じゃあ、一応冒険者能力診断してみよっか。」受付ちゃんが言った。「そしたら、冒険者さんになれるか解かるからね~。」
さすがに5歳児をまともに相手はしてくれないようだ。
だが、能力診断ってのは興味がある。
自分はどんくらい強いのだろう?
それに、水晶玉が光って割れたり、謎の数値がカンストしたりとか、異世界転生特有のアレをちょっと期待する。
「採血するけど、お注射大丈夫?」
医学なの!?
冒険者ギルドの受付がちゃんと採血できるか心配だったが、そもそも医者だったとしてもこの世界の人間自体が採血できるか怪しいので運を点に任せてお願いすることにした。でないと話が進まん。
手続き書に桃太郎・5歳と記入し、受付ちゃんに採血をしてもらう。
カウンター向こうに戻った受付ちゃんが謎の分析装置に俺の血液を注入すると、そのうち、カウンターの上の装置からカタカタカタと音がして、診断書らしき紙が印刷されて出てきた。
受付ちゃんがその紙に目が釘付けになる。
そして、俺と診断書を何度も見比べる。
これはすごい診断結果が出たようだな。
「モモタロウ君、もう一回お注射いいかな?」
その数値を信用してください。
結局、3回血を抜かれた。
5歳児からこんなに血取って良いものなのか?
ギルドに居た冒険者たちが俺たちの周りに集まって、3枚ある俺の診断結果を回し見ながら騒めいていた。
「おい、これホントか?」
「こんなガキだぞ?」
「そもそも、こんなすごい数値見たことないぞ。」
「絶対機械の不調だって。こんなバカげた値が出るわけない。」
「ミヤコにだってこんなすごい能力の奴はいねえ。」
いいかげんに俺にも見せてくれ。
「桃太郎君、君すごいよ!」受付ちゃんが興奮気味に言った。「ちょっと信じられないけど、即戦力どころか一流冒険者の素質があるよ。これなら、こっちからお願いして登録して欲しいよ!」
ようやく、受付ちゃんが紙を渡してくれた。
武力 4
魔力 6
HP 8
MP 10
えっ?なにこれ?
私の能力低すぎ?
「こ、これ、高いんですか?」
「それはもう!!」受付ちゃんが満面の笑顔で言った。「武力か魔力が1あったら、冒険者登録してもOKなのよ。熟練の冒険者でも4がやっと。5もあれば英雄。魔力6とMP10なんて見たことも聞いたことない数値よ。」
桁増やそうぜ・・・。
「でも、HPはものすごく少ないから、気を付けて。やっぱりまだ小さいからかしらね。」
HPは低いのかよ!
他と尺度をそろえてくれ。
「もう、今日、登録しちゃいましょ♪」受付ちゃんは上機嫌だ。
どうやら驚きのステータスらしい。
せっかく俺の望んでた異世界転生が展開されているのに、表記の仕方でイマイチ乗り切れん。
『9999Lvの・・・』とか『戦闘力53万』とか表記のインフレって大事よな。
まあ、登録してくれるみたいだから何でもいいや。
受付ちゃんの用意してくれた台に乗って、カウンターの用紙に必要事項の記入を開始する。保護者欄はなさそうだ。良かった。
と、カウンターに何気なく置いた荷物に受付ちゃん食いついた。
「こここ、これは、もしかして魔剣・ムラマサブレード!!」
どえらい剣名でてきた。
「それをどこで!?」
俺は素直に育ててもらったジジィから貰ったと説明した。
「では、あなたはもしや、伝説の英雄・高橋様のお孫様なのでは?」
んなわけあるかい。
あのジジィ3歳児に腕相撲で負けて泣いた男だぞ?
てか、5年暮らしててジジィの名前知らないや。
「まさかあのおじいさんがそんなことありませんよ。それに私は育てて貰っただけですし。」俺はやんわり否定した。
そんなことより確認しておかないといけないことがある
「それより、この剣ってヤバい剣なんですか?」妖刀ムラマサって言うしな。
「ええ、まず、人の世の生き血をすすります。次に不埒な悪・・・。」
「ごめんなさい。もういいです。」異世界転生物の倫理規定に引っかかりそうな予感がしたので俺は慌てて話題を変えた。「それより、その高橋という英雄はどういった人だったんですか?」
「60年前に、先代の魔王をやっつけて『都』を救ったパーティーのリーダーね。」
ふと、今度は受付嬢の目線が袋につまっている団子に止まった。
「ああ、おばあさんが旅のお供にって持たせてくれたんですよ。」
俺はそう言って袋の口を開いて、キビ団子を見せた。
三日で飽きてその後はモンスター食ってたので、まだたっぷりと余っている。
「意外と無くならないし、何故だか腐らなくて。ためしてみますか?」
潰れてもなく汚くもないのを受付ちゃんに一つ渡す。
「!!」
受付嬢が驚く。
「こ、これは!グレートポーション!!」
「ポ、ポーション!?・・・固体、というか団子なんですけど?」
「ポーションって本当は魔法薬全般の事をさすの。桃太郎君の言う通り普通のポーションは液状なのだけど、それだと戦いの途中で瓶が割れてしまったり重かったりと不便だったから、高橋様と共に魔王を倒した伝説の聖女・とみこ様が改良されたのがこのグレートポーションなのよ!」
ババァの名前出てきちゃったよ!?
え、何?
じゃあ、ジジィやっぱ勇者ってこと?
てことはあいつら少なくとも70越えなの?元気すぎない?
「このグレートポーションは、回復・再生効果の他にも、戦意高揚・能力向上・魔力回復・覚醒・腰痛・肩こり・リウマチ・美肌など様々な効果が知られています。」
途中から温泉みたいだな。
それにしても、ずいぶん、ヤバいもん大量にくれたものだ。




