桃太郎はお供の犬山ネネ、サル、ワイバーンを連れて鬼ヶ島に鬼退治に向かいました。
話が進み始めると展開が早い。
1週間もしないうちに、船団が集結し、魔王ヶ島への進軍が開始された。
全国大会が始まるまで学校でワイワイしていたのが信じられない。
出航までの一週間ずっとネネさんに見張り続けられていた俺は、ネネさんと一緒に船に乗ったことでようやく解放された。
仲間から目を離すなとは言われたが、仲間から見張られるとは思ってもみなかったよ。
相変わらず、ネネさんは口をきいてくれない。
ずっと気まずかった空気から解放された俺は一人で甲板に出た。
海には凶悪なモンスターは居ないし、海の上ならみんな安全だろう。
ここから魔王ヶ島まで船で二週間。
もしかして魔王ヶ島、国外じゃね?
桃太郎と、犬山ネネ、サル、ワイバーンによる鬼退治。
ギリ桃太郎だ。
ギリ桃太郎か?
場合によっては、ワレンガ、サル顔の冒険者、ワイバーンなんて組み合わせの可能性もあった訳だから、それにくらべりゃ十分桃太郎か。
問題は、この中から誰かが死ぬかも知れないという事だ。
大切な者・・・真っ先に思い浮かぶのはネネさんだ。
本当はオオサカに置いてきたかった。
いや、目を離すなだから置いてきたほうがダメだった可能性もある。
と、都合の良い解釈を思いつくがたぶん違うんだろうな。
船の欄干から海を眺める。
周りには兵士たちが山ほど乗った船団が浮かんでいる。
本当に、戦争に行くんだな・・・なんてしみじみ思う。
「居た居た。」孝高がやってきた。「秀吉さんが桃太郎君に今回の戦争の作戦を話したいから来るようにって。」
秀吉の船室は特に飾りっ気も無く、俺たちの船室に比べて少し広いだけだった。部屋の片隅には転がすように布団が丸められていた。
俺とネネさん、そして孝高と重治さんが集まって秀吉から魔王軍についての説明を受ける。
秀吉は俺たちが魔王の前に相手にするであろう四天王について説明を始めた。
「まず、最初の一人は青龍朱雀だ。」
「え、どっちなのですか?」
二匹で四天王1つ分ってこと?
「スザクという名の青龍だ。」
ややこしいなぁ、おい。
いいの?4匹中2匹使っちゃったよ?
「ちなみに身体が玄武岩でできている。」
3匹まとまってた。
「もしかして、白かったり虎と関係あったりします?」
「白くはないな。虎も関係ないが、その災害級の破壊力から『トラブ龍』とは呼ばれてるな。」
その呼び方はギリセーフなのだろうか。
「あれはいつ頃だったっけな、たしか・・・」
「秀吉さん!秀吉さん!次の四天王行きましょう、次の四天王!」この流れだと歌詞っぽいのが一文字でも出てきたらガチアウトだ。慌てて話題を変える。
「2人目の四天王は菅原道真公だ。」
は?
「そう、清涼殿落雷事件で醍醐政権を崩壊させた、あの道真公だ。今は悪魔側に組している。」秀吉は続けた。「悪霊となりはてたとはいえ、かつての英哲。魔王側の優れた軍師となっている。魔王のブレインだ。実は教師に成りすましてお前たちの学校に潜んでスパイをしていたという噂もある。」
え゛?菅原道真ってあのミッチーだよな?
潜んでいたも何もその名前で俺たちの担任してた人が居るんですが。
そういや、全国大会辺りでめっきり影が薄くなって、世界戦の途中から居ねぇ!
「菅原先生は私達の担任です。」ネネさんが言った。
「まさか、世界大会に悪魔を手引きしたのも菅原先生?」孝高が呟いた。
「え?嘘でしょ?」
「彼とは、互いに軍を率いてやり合うことになろう。私が相手だ。」秀吉は言った。「だが、彼は強い。魔王軍の兵士も私の軍より多いだろう。私では正直勝てない。」
「ええっ!?」
「かまわん。お前が魔王を倒すことが最優先だ。私の勝敗や生死など些細な事。理由は後で話そう。」
「は、はぁ。」
突然、ミッチーが出てきてこっちは大混乱だ。
「3人目は玄武だな。」
玄武かぶった!
「何物をも通さない固い防御を誇る鬼だ。」秀吉が言った。「これは犬山ネネにあたってもらいたい。」
「私ですか?」
「パワーはすごいが、動きが遅い。それに、君のずっころばしなら奴の防御も抜ける。」秀吉は言った。「君にうってつけの相手だ。」
「そいつ僕がやっつけて、その後魔王もやっつけるじゃダメですか?グレートポーションだってあるんだし。」
「桃太郎君!怒るよ!!」ネネさんが言った。
ずっと怒ってるじゃん!ずっと怒ってるじゃん!!
「ダメだ、理由は後で話す。」
「最後の四天王はケルベロスだ。」
白虎は?
「魔王城の最後の扉を守っている異形の悪魔だ。魔王城の最後の扉を守っている。こいつに関しては情報がない。」
三つ首のワンワンだぞ。
火を吐くんだ。
「最後に魔王について説明しよう。」
秀吉は少し間をおいてから言った。
「やつは時を操ることができる。」
な、なんだって?無敵チートのスキルじゃん。
「心配するな。」
秀吉が言う。
俺、そんなに顔に出てるかな?
「ある程度の意志があれば奴の時間制御は簡単に防ぐことができる。問題は、対象が彼の時を操る能力に従順な場合や気絶したり死んでいたりする場合だ。」
「つまり??」
「怪我をしても治る。死んでも生き返る。」
「なんだ。強力なヒーラーってことですね。」
「まあ、そうだ。だが、死んでも生き返るのは厄介だ。それに悪魔共を一気に成長させることもできる。それは、簡単に軍を作れるという事だ。」
「ああ、つまり、四天王を倒しても、すぐ魔王を倒さないと四天王が蘇るってことですね?」
「その通り。仮に全員で最初の四天王をやっつけても、他の四天王と戦っている間に蘇ってくるだろう。このやり方では我々はずっと四天王と戦い続けることになりかねない。」
無限四天王・・・。
「私が今回強行軍に出たのもこれが理由だ。」秀吉は言った。「どのくらいで復活するか解らんが、姫路城攻めで消費した悪魔どもの増産はもう始まっているだろう。」
なるほど。
世界の神と英雄がやっつけた傷が癒えないうちに魔王城に攻め入りたいという事か。
ん?
「世界の神や英雄たちは協力してくれないのですか?」
「大昔にアレクサンダー大王の力を借りたことがあったのだが、美少女化して返してしまってな。それ以来諸外国は日本に非協力的だ。」
日本人め・・・。
「あ!天照大御神は?」
「大学入試に失敗して引き籠っとる。」
くっそ、あいつ引き籠りのプロだしな。
「私が野戦で血路を開くので、ワイ子に乗って桃太郎君とネネさんで魔王城に乗り込んで欲しい。」秀吉は言った。「最悪、魔王が倒せれば、悪魔たちの復活も四天王の復活も無くなる。すまぬが完全に桃太郎君頼みだ。」
「分かりました。」ネネさんが即答した。
・・・。
ネネさんを危険にさらさない方法はないものか。
「私が菅原公と野戦。ワイ子が青龍朱雀。ネネさんが玄武。モモちゃんはケルベロスを倒し、そのまますぐ魔王戦となる。モモちゃんには大変な戦いを強いてしまうが、君頼みなのだ。頼む、日本のために魔王を倒してくれ!」
「この作戦だとケルベロスを倒した後私が乗り込むことになりますが、ケルベロスが復活する可能性は?」
「正直解らん。そこまで簡単に時を戻し命を作り上げられるのであれば、我々にそもそも勝ち目はない。」
勝てる確信無いんじゃねえか。
ネネさんついてきちゃったし、やるしかねぇのか?
「私とワイ子はかなり苦しい戦いだ。しかし、モモちゃんさえ魔王に勝てば良い。これがこの作戦の骨子だ。」
マジかよ。
「ワイ子をそんな戦いに置くわけにはいきません。」
「クルルルルル!」
俺がそう言った瞬間、外からワイ子の鳴き声がして、船室の壁がどんどんと外から殴られた。
「ちょ、ワイ子?」
「当たり前だよ!」ネネさんが不機嫌に言った。「私もワイ子ちゃんも、桃太郎君より大人で桃太郎君の仲間なんだからね!」
「・・・・・・。」
「ちょ、私の部屋の風通しを良くされても困るのだ!止めてくれ!」秀吉が焦って言った。
慌てて甲板に出て、壁に頭突きを続けているワイ子をなだめる。
「ワイ子。止めるんだ。船の上で暴れちゃダメでしょ!ごめんなさいは?」
「いや、モモちゃん。謝るのは君のほうだ。」秀吉が俺に言った。「君はもっと仲間を信頼したほうがい
ワイ子が秀吉の頭をパクリと咥えた。
「私もワイ子君が勝てないかもしれないと言ってごめんなさい。」
ワイ子の口の中から秀吉のくぐもった声が聞こえた。
「クル!」
ワイ子が満足そうに言って口を開けるとベトベトの秀吉が出てきた。
「ンア!!」ワイ子が言った。
「ワイ子ちゃん、どうしたの?」
「ワイ子?」
・・・おや?
ワイ子のようすが・・・。
ワイ子が両方の翼を大きく広げて、空に向けて長い首を掲げた。
「ワ、ワイ子っ!?」
ポーズを決めているワイ子が急に輝き始めた。
「まさか、自らの力でもう一段高みに行こうというのか?」秀吉が驚きの声を上げた。
ワイ子の身体のいたるところから光り輝く鱗のような羽が生え始めた。
ああっ!
オチが読めた!!
お前、今、絶対でけぇキジになろうとしてるだろ!
こんなもん通してたまるかっ!
キャンセルだ、キャンセル!
BBBBBBB!!
ワイバーンはきょだいなキジにしんかした。
畜生!
俺のカッコいいワイバーンを返せ!
BBBBBBB!!




