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四天王vsサル

 魔王ヶ島に船団が到着した。

 岩だらけの荒れた大地に俺たちは降り立った。

 草木のない岩場が続く。

 黒雲が立ち込め、遥か彼方に禍々しいシルエットの城が小さく見える。

 そして、その周りの大地が黒く染まっている。

 つい最近見た。

 あれは悪魔が大量に集まっているのだ。

 「思ったよりも、敵の軍隊は少ないようだ。」秀吉がニッコリと笑った。

 確かに姫路の時の絶望を知っているので、あのくらい何とかなりそうな気がする。

 ただし、今回はこちらに神はいない。

 代わりに船団で連れてきた大軍が居るが、一万そこそこだ。

 そして、敵は20万は下るまい。

 さらに、魔物たちの中に時々大きい個体が混じっている。

 もし、ここで俺とネネさんとワイ子が軍のそば側に居れば勝てる可能性はある。

 姫路ではこの半分くらい抑え込んだ自信はある。

 だが、俺は魔王を倒さなくてはならない。

 「モモちゃん!心配すんな!!」

 心配そうに魔王城のほうを眺めていた俺の肩を喜久兵衛が叩いた。

 「後ろは俺が守る!!」

 喜久兵衛とハナちゃんはここで敵の20万と闘うために俺たちについてきた。

 「グレートポーションもあるし!モモちゃんはモモちゃんの仕事をしよう?」

 「うん、ありがとう。」

 でも・・・

 「モモちゃん、ネネっちにちゃんとごめんなさいした?」

 「・・・・・・。」

 「もっと、俺らの事信じてよ。」喜久兵衛が言った。「俺らだってそこそこには強いんだからさ。」

 「うん。」

 でも、俺がそうしたせいで君だって死ぬかもしれない。

 俺はみんなを信じることで、みんなを、ネネさんを失うのが怖いんだ。

 



 ネネさんと俺は、秀吉と一緒に軍の一番先頭に立っていた。

 敵に見られるためだ。

 俺たちがここに居れば、敵はこの戦場に俺たちが居ると思う。

 俺とネネさんは戦略級の人間だ。

 俺たちが戦場に居ると解かれば、相手はここに戦力を割かなくてはならない。

 もしかしたら、四天王もこちらに向かってくるかもしれない。

 その間に、俺とネネさんはワイ子に乗って、魔王城を目指すのだ。

 喜久兵衛やハナちゃんや孝高を戦場に残して。

 「お~い!」

 魔王軍のほうから大きな声がした。

 誰か手を振っている。人型だ。

 って、ミッチーじゃねえか!

 「菅原先生!!」

 「元気そうですね~。」向こうから声が聞こえた。「ちょっと話をしませんか~。」

 そう言って、ミッチーは向かい合っている軍同士の真ん中に一人で歩いてきた。

 「モモちゃん、罠だ。」秀吉が言う。

 「いえ、大丈夫です。話をさせてください。」

 本当に大丈夫かは知らんが、色々と話をしてみたい。

 「私も行きます。」ネネさんも言った。

 そして、何か言う前からネネさんにめっちゃ睨まれる。

 酷いや。

 そりゃあ、言おうとしたけどさ。

 「俺も!ミッチーと話したい!!」後ろから喜久兵衛が出てきた。

 ハナちゃんも頷いた。

 「僕も行きたいですね。」孝高も言う。

 「分かった。その代わり、全員はダメだ!ワイ子に乗れる人数だけだ。」秀吉が言った。

 というわけで、ワイ子の背中に乗る。

 「全員乗れました~。」

 「・・・・・・。」秀吉が頭を抱えた。

 「ワイ子ちゃんすご~い。(*^▽^)」

 「クルルルル!!」

 「じゃあ、行ってきます。」

 というわけで、5人を乗せた重量過多気味のワイ子はミッチーの前に着地した。

 「ミッチー久しぶり!!」喜久兵衛が元気に挨拶した。

 こういう時喜久兵衛が居るとほんと助かる。

 「やあ、世界大会からほったらかしちゃってごめんなさいね。」ミッチーは言った。「四天王が忙しくって。」

 「菅原先生。本当に四天王だったなんて・・・。」ネネさんが絶句する。

 「世界大会に悪魔を呼んだのも、先生なんですか?」気になっていたことを訊ねる。

 「そうですよ。すごかったでしょ。」

 「酷いです!あれのせいで私達どんな思いをしたと思ってるんですか!」ネネさんが怒って声を大きくした。「死ぬほど怖かったんですよ!!」

 「でも、世界大会がそのまま進んでたほうが死んでたかと。」

 「確かに。」異口同音に5人が納得の返事を返した。

 俺、絶体絶命だったし。

 「なんで、あんなことしたんですか?」孝高が訊ねた。

 「うーん。後ろの子たちね。皆、空っぽなんです。」ミッチーは悪魔軍を振り返って悲しそうに言った。「彼らはみんな、ここ一、二週間で生まれた子たちです。生まれて、すぐ成長させられて、次の日にはもう生んで、その子がまた成長させられて。それの繰り返し。ときどき戦いの訓練をして、また生んで。それだけです。」

 「あの悪魔はみんな姫路の後に生まれたというのですか?」孝高が眼前に見える数十万の悪魔たちを指さして訊ねた。

 「そうですよ。ただ皆さんと戦うために作られたんです。」ミッチーは答えた。「彼らだけじゃないんです。姫路で死んだ子供たちもね、ここ最近の悪魔たちはみんな空っぽなんです。だから、目的を与えたかった。あなた達のような勇者を殺すっていう目的を。」

 「だから、世界大会に集まった英雄たちを狙ったんですね。悪魔たちに英雄を倒せば魔界に帰れると嘘をついて。」俺は訊ねた。

 「そうです。良く知っていますね。」

 「悪魔たちが可哀そうだとは思わなかったんですか?」今度はネネさんが訊いた。「みんな死んだんですよ?」

 「生きている意味がないのに、死ぬことが不幸なわけないじゃないですか。」ミッチーは言った。「彼らは目的のために死んだんです。いえ、死ぬ直前だけは目的を持って生きることが出来たのです。彼らは本当に少しだけ幸せでした。」

 「もっと、他にやりようは無かったのですか?」

 「残念ながら。」ミッチーは弱々しく首を振った。「私は魔王軍の四天王で後ろのみんなの親代わりです。彼らを裏切るわけにはいかない。生まれてくる意味がないからって私自身が彼らの生まれてくるのを阻止する訳には行かないのです。」

 ああ。

 そうか。

 彼は、このバカげた悪魔たちの生産を俺たちに止めて欲しいのか。

 「代えをいくらでも作ることのできる命に意味などありません。」ミッチーは言った。「そこに個性も愛も思いも残らないのです。彼らは揃えられただけなんです。」

 「ミッチー・・・戦わないとダメ?」喜久兵衛が言った。

 「お願いします、喜久兵衛君。頑張ってください!」

 「うん、わかった。」

 「私も後ろの子たちのために全力を尽くします。」

 「先生・・・。」

 「あと、藤原性名乗って喜んでる秀吉君はちょっと〆ておきたいですしね。久々に怨霊の腕がなっちゃいますね。」先生は最後に茶目っ気たっぷりに言った。「私の軍と秀吉君の軍どっちが強いか勝負です。」

 「はい。」

 俺たちはワイ子に乗ると秀吉の元へと戻って行った。

 菅原先生はずっと俺たちに手を振っていたが、ワイ子が無事に着地したのを見届けると悪魔たちの軍の中へ帰っていった。


 そして、戦争が始まった。


 進軍のラッパは秀吉軍が吹き鳴らした。

 俺も他の兵士たちと一緒に進軍し、途中で反転してワイ子の所まで戻り、ネネさんと魔王の待つ城へ飛ぶ流れだ。

 後ろを向いて戻って行くところを見られないように、徐々に遅れる。

 俺の背中をパチンと叩いて誰かが追い抜いて行った。

 喜久兵衛だった。

 もう一度。

 今度はハナちゃんだ。

 そして、また一つ。

 孝高だ。

 そして、もう一度。

 痛ぇな!今のは誰だよ!?

 俺は3人の背中が乱戦に消えるのを見送ってから、踵を返した。




 「桃太郎は行ったか。」秀吉が問うた。

 「はっ。」重治が答えた。

 「よし、では我々もひと暴れしてこようか。」

 「しかし、軍の指揮はどうされるのです?」

 「ここに来て作戦も何もない。」秀吉が答えた。「数が圧倒的に負けている。地の利もない。しかし、時間は稼がねばならぬ。ならばやれることは一つぞ。」

 「御意。」

 「このサル。一世一代の大うつけを演じてみせるわ。」秀吉は剣を取った。「行くぞ!!」

 秀吉は前線まで駆け抜けると、味方の最前線よりもさらに前に単騎飛び出しながら叫んだ。

 「相手の魔王がなんぼのものぞ!我は第六天魔王の名を継ぐものぞ!皆の者!我に続け!!」

 即座に、すぐ背後から呼応して大声が上がった。

 「第六天魔王に続け!第六天の魔王が現世の魔王ごときに遅れを取るものか!!」叫んだのは黒田孝高だった。「みな、第六天魔王秀吉に続け!!」

 「おお!なんかかっけぇ!いくぜ!!」

 「おおっ!」

 周りから次々と声が上がった。

 秀吉軍の指揮が一気に上がる。

 「孝高、礼を言う。」

 秀吉は自分の所まで前線を押し上げてきた孝高に言った。

 「どういたしまして。まさか、秀吉さんがこんな猿芝居をするとは思っていませんでしたよ。」

 「所詮はただのサル真似よ。」秀吉は答えた。「お前こそ勝てる戦しかしない奴だとばかり思っていた。」

 「その通りですよ。」孝高は平然と答えた。

 「ふっ、そうか。」秀吉はもう一度大声を上げた。「皆の者!勝つぞ!!」



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