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四天王vsキジ

 戦場を後に、悪魔軍の上を一直線に王城へと飛ぶ。

 姫路城の時に比べたらどってことないなんて言ったが、上から見るとその数の多さに戦慄する。

 喜久兵衛たちは大丈夫だろうか。

 「桃太郎君!」

 ネネさんが叱るように声を上げた。

 ネネさんを見上げた。

 やっぱ怒っていた。

 「信じて。」

 ネネさんは一言そう言って、前を向いた。

 俺も前を向いた。

 今まで、一直線に城へと向かっていたワイ子が急にS字を描いた。

 一瞬、俺たちに影が落ちた。

 上を見上げる。

 そこには、ワイ子の4倍くらいあろうかというドラゴンが居た。

 こいつが青龍朱雀か!

 青龍というか、まんまドラゴンだ。

 青いドラゴンだ。

 ワイ子は頭上の青龍朱雀から狙われるのを避けるかのように、左右に身体を揺らしながら魔王軍の上を城へ向かって飛ぶ。

 一方の青龍は狙いを定めるかの如く、ワイ子の上空を悠々とまっすぐ、追いかけて来た。

 「ガァアアアアアアアッ!!」

 青龍朱雀が吠えた!

 「クルルルルルルッ!!」

 呼応するようにワイ子も咆哮を上げた。

 「ワイ子!頼む!」

 ワイ子は城が近づいたためか、左右に切り揉みするのを止めて、一気に速度を上げて一直線に魔王城へと加速した。

 魔王城の詳細が見えてくる。

 のっぺりとした壁と歪な骨格の城だ。

 増設を繰り返して高くなっていったような形なのに、城の外壁にはつぎはぎの後も無ければでっぱりすらない。

 げ、魔王城、ベランダとかそういうのがない。

 バルコニーとか、外の見える大廊下とか、四天王の青龍が出るハッチみたいなのがあるかと思ったてたのに。

 これではワイ子に降ろしてもらうための場所がない。

 そもそも、城には窓自体がほとんどない。

 まったくないわけではないが、巨大な城全体に10箇所くらい、ぽつりぽつりと開いているだけだ。

 それもどれもこれも、50センチ四方くらいしかない。

 城の正面に降りて、一階から登るしか無いか。

 青龍は俺たちが下りるのを許してくれないだろう。

 飛び降りるか?

 「桃太郎君!てっぺんの窓!開いてる!!」ネネさんが叫んだ。「一番上にある窓から入るよ!!(`Д´)ノ」

 へ?

 ネネさんが俺の襟首をつかんだのを感じた。

 ワイ子が一気に城の頂上に加速する。

 迫りくる城の壁に、四角形の穴を目視した。

 その瞬間、身体が宙に浮いた。

 ワイ子の加速を乗せて、ネネさんが俺を窓の中に投げ込んだのだ。

 「ほっ!」

 反射的に身体を魔法陣で包む。

 中に放り込まれた俺はゴロゴロと転がって止まった。

 周りを見渡すと、殺風景な部屋に筒状の何かが置かれている。

 望遠鏡・・・かな?

 見張り部屋のようだ。

 そうだ!!

 「ネネさん!ワイ子!!」

 慌てて、窓に駆け寄ろうとする。

 「ほっほっ!」

 その瞬間、今度は窓からネネさんが飛び込んできた。

 「ぬごっ!」ネネさんに巻き込まれて絡まり合うように部屋の中を転がって止まる。

 「痛たた。(´・ω・`)」ネネさんが俺の上でうごめく。

 顔の上にオッパイがあるというのに、防御魔法陣のせいで固い。

 「よし、成功!」ネネさんは明るく言った。「ワイ子ちゃん!」

 下敷きになった俺の心配はしてくれず、ネネさんが窓のほうに走って行った。

 まだ、怒ってるんかな・・・。

 俺もおずおずと近寄って、いっしょに窓から外を見た。

 ワイ子と青龍朱雀がギャーギャーと威嚇し合っている。

 やはり、ワイバーンとドラゴンって相性悪いんだな。

 ワイバーンっていうかもはやキジだけど。

 大きさ的には青龍朱雀のほうがずっと大きい。

 見た目だって強そうだ。

 ワイ子に勝てるんだろうか・・・。

 ネネさんが久しぶりに俺の手を握った。

 そして、痛いくらいに強く握りしめた。

 「行こう。桃太郎君。ワイ子ちゃんを信じよう。」

 そう言って、ネネさんは振り返ると俺の手を引っ張って部屋の外へと向かった。




 『行ったぞ。』青龍朱雀はキジに声をかけた。

 『良かったのか?彼らは魔王にあだなす者たちだぞ。』キジが怪訝そうに訊ねた。

 キジは大きく旋回して青龍朱雀の前にやって来ると、翼をゆっくりとはためかせて青龍朱雀の正面に浮かんだ。

 『構わぬ。』青龍朱雀が答えた。『彼らが居ては、そなたが本気を出せまい。』

 『そうか、拙者を高く買って貰って礼を言う。』キジが言った。『貴公の名は何と言う?』

 『スザクと言う。』朱雀が答えた。

 『よい名だ。スザクよ、礼を言う。』

 『そなたの名は?』今度は朱雀が訊ねた。

 『おうが・・・いや、拙者の名はワイ子!』

 『む?女性の名に聞こえるが。』

 『知らぬ。主のつけてくれた名だ。』

 『そうか、失礼をした。非礼を詫びよう。ワイ子よ。』

 『戦いを始める前に一つ聞いてよいか、スザク。』

 『なんだ?』

 『何故、貴公ほどの龍が魔の者になどつき従っている。』

 『ふっ、魔の者につき従っているつもりは無い。我の主君もまた人間である。』

 『そうなのか?魔王とは人間なのか。』

 『そうだ。いや、そうであったというべきか。』

 『その者に恩義があるのだな。』

 『多少は・・・な。遠い昔、友を救って貰った。』青龍朱雀は言った。『その時、彼は良い人間であった。』

 『そうか、恩義を返すためか。貴公は誇り高き龍族であるな。』

 『そなたもであろう。主君の元に居ることを邪魔してすまなかったな。』青龍朱雀は言った。『しかし、我はそなたまで見過ごす分けにはいかぬ。そなたの相手は我がせねばならぬ。そなたを通してしまうのは、すでに従う価値のない主君相手とはいえ義に欠ける。』

 『気にするな。スザク。拙者はこのような場でそなたのような誇り高き龍と相まみえることができて光栄だ。』

 『ありがとう、ワイ子。種族を捨ててまで力を求めし翼竜よ。』

 『貴公を倒すためだ。』

 『そうか。我も光栄の極みだ。』

 『では、始めよう。』

 『うむ。今日この日、我々は二匹の獣に戻り、野生のまま戦うこととしよう。』

 『ああ。幸せだ。』

 二つの巨大な龍たちは大地を揺るがすような咆哮をあげた。

 そして、二匹の龍は戦いを始めた。


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