桃太郎 大戦編 別れ
次の日の朝、俺たちは新神戸国際空港に来ていた。
代表選手たちの見送りだ。
昨日死線を一緒に越えた仲だ。見送らないわけにはいかない。
多忙な彼らは早くも今日、飛行機に乗って母国に帰る。
何か、おかしいって?
今までおかしくないところがあったか?
「あばよ、日本代表。」ゲートの向こうで張飛が手をふった。
「ええ、また会いましょう!」こっちも手を振り返す。「今度はミヤコを案内します!」
中国代表がみんな、こっちに手を振ってきた。隣で戦っていた者同士だ。互いが強いことも判り合っている。
みんなで手を振り返す。
日本代表だけではない。
アメリカ、オスマン、イングランド=フランス、アフリカも全員で手を振った。
次はアメリカ代表だ。
「桃太郎、助かったよ。」ルーズベルトが握手を求めてきた。
「いえ、こちらこそ。あなた達が日本に居てくれてよかった。」俺は出された手を固く握り返した。
彼とはまさに隣で助け合って戦った。
少し、別れが惜しい。
「XXXXX!XXXXXXXXX!XXXXX。XXXXXXXXXXXX。」XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX.。「XXx!」
君は強すぎて、ちょっと同調できない。
一応握手はする。
アメリカ代表も飛び立って行った。
イングランド=フランス合同チームが同じ飛行機で飛び立っていく。
彼らについてはほとんど絡みもなかったが、いい奴らだった。
たぶん。
次はオスマン代表のフライト時間だ。
「日本代表よ。試合ができなくて残念だ。」ゼウスが行った。
「勘弁してください。敵いませんよ。」
俺は素直に答える。来年また戦うとか素直に嫌だ。
「そう言うな。お前はなかなかの物だ。」ゼウスが言った。「私は今年で卒業だが、来年うちのヘルメスが来る。相手をしてやってくれ。」
結局神じゃねえか。
やだよ。
来年からは校内大会の時点で出ないからな!
来年は人魚姫のチームが、再来年は蛇沢たちのチームが行くから覚悟しておけ!!
やべえ。
ちょっと楽しみ。
蛇沢達の年は絶対に見にこよう。
頭の中で考えていることは言わない。
「ありがとございます。」ゼウスの手を握った。
と、もう一人、神が近寄ってきた。
「桃の子よ。神託をしたい。」
キリストだった。
え?
「キリストさん!代表の飛行機もう行っちゃいましたよ?」
「心配するな。宗教上の都合で今日から1週間はオスマン代表なのだ。」
「へー、しゅーきょーってたいへんなんですねー。」
あからさまに興味のなさそうな声を出して、間違っても神が信者について余計な説明をしないようにする。
「神託を告げる。桃の子よ。これからそなたは大いなる物語の渦に巻き込まれよう。そして、大切な者とお前の12年を失う事となるだろう。仲間に気をつけるように。」
不吉!!
なんで、神はいつもはっきりものを言わんのじゃ?
一方的に神託されても解らんのじゃ。
って、今、神、目の前に居るよ。一方的じゃなくて双方的じゃん。解んないとこは聞けばいいんじゃん。
「それは、いったいどういう意味なのでしょう。」
「すまぬ。言えることは無い。1か月ほど後からの、お前の12年間がまったく見えないのだ。」キリストが言った。
使えねぇな。
「大切な者を失うとはどういう意味なのです?仲間に気をつけろという事は誰か死ぬんですか?」
「プライベートな事ゆえ、詳しいことを述べるわけには行かぬ。」
おい。神はそういうの超越してこい。
「それは、お前にとっては死よりも厳しい事なのやもしれん。」キリストが憐れむような目で俺を見た。「仲間たちから目を離さないように。こんな事しか言えなくてすまぬ。しかし、どうしても伝えておきたかった。」
神よ。あなた、今、不安煽っただけですよ?
「心配するな、桃太郎。」ゼウスが言った。「神託とは確定した未来ではない。キリストに何が見えておるかは知らんが、お前の不幸な未来を変えられる鍵を貰ったとでも思っておけ。その鍵で開けられる未来があると気づいたら、迷わずそちらに進むがいい。そうすれば未来は変えられる。ではな。」
不吉な神託を残して、神々はトルコとかそこら辺に飛行機で帰っていった。
そして、よりによって良く分からないアフリカ代表が残った。
イングランド=フランス合同チーム以上に情報がないし、カッコもすごい。関わりも薄かったから俺はぶっちゃけもう帰りたい。
けど、そういうのができない小心者なので、出航待ちロビーの椅子に気まずく一緒に座る。
人見知り俺。
まったく知らない人に自分から話しかけるのは難易度が高い。
「桃の者よ。世話になったな。」アフリカ代表のワレンガが話しかけてきた。
常識人で良かった。
話しかけてくれれば普通に会話できる。
「いえ、こちらこそ日本を守ってくれてありがとうございます。」
「悪魔たちは我々を狙ってきたとンドグボジュスイが言っている。」
なんか、とんでもないこと言いだしたぞ?
「そ、そうなんですか?」
「我々というより、我々英雄候補すべてだな。」
そう・・・なの?
タイミング良すぎるとは思ったが。
「ンドグボジュスイは悪魔の言葉解かる。彼が元悪魔だからだ。」ワレンガが言った。「悪魔たちは言っていた。『英雄たちに殺されれば魂が救われる。英雄たち殺せば魔界に帰れる。』つまり狙いは我々。」
突然の驚くべき情報提供にワレンガの顔をを見上げた。
あ?
あれ?
耳!
ワレンガ、獣人じゃねえか!!
めっちゃ、獣耳が頭についとる。学生なのにすげー髭だなあとか思ってたけど、これもタテガミじゃね?
ちょ、もしかして・・・。
いや、聞くのはやめとこう。
たぶん、間違いなくライオンなんだが、万一犬系の何かだったりすると、ネネさんを犬にすることができなくなるかもしれない。
「フライトの時間が来たようだ。」ワレンガが言った。「さらばだ桃の者よ!」
アフリカ代表も最後に伏線めいたものを残して去って行った。
お前ら、去り際に不安煽るのほんと止めてくれよ。
「桃太郎君、すごい!」
「桃太郎君、頭良かったんだな・・・。」
ワレンガが行ってしまうとネネさんと孝高が駆け寄って来た。
え?
何が?
「桃太郎君、何か国語話せるの?(?▽?)」
今更そんな設定的なやつ来るの!?
いままでの会話解ってたの俺だけだったんかよ。
「うーん・・・。」
はて、どう答えよう。。
「失礼。あなた方は英雄学校の代表の皆様ですよね?」
「はい?」
突然、横からまったく関係のない日本人に声をかけられた。
「日本政府はあなたがたを魔王討伐の精鋭部隊として招兵します。拒否権はありません。」
大勢の兵士たちが俺たちの周りを取り囲んだ。
そして、喜久兵衛とハナちゃんがすでに兵士たちに捕らえられ、喉元に短剣をあてられていた。




