桃太郎 大戦編 後
「無理だ!もう食いたくない!!」隣で張飛がやけくそ気味に吠えた。「あれを食べに戻るくらいだったら、俺はここで戦って死ぬ!!」
さすがにもう誰も戻れとは言わない。
みんなもお腹いっぱいなのだ。
やっぱ固体にしたの失敗じゃねえか!
「クソ、ここで負けるのか・・・。」ワシントンが絞り出すように言った。
「まだ・・・がんばり・・ま・・・しょう・・・。」息も絶え絶えにネネさんが言う。ネネさんはMPの限界を越えてしまっている。
「そうだよ!頑張って!!」ネネさんの穴を埋めて防衛線を守っているのは喜久兵衛とハナちゃんだ。
「向こうの数も減っては来ている。耐えよ!うぇっぷ。」関羽が頑張って呑み込んだのが分かった。
「XXXXXXXXXXXX。XXx!」
とは言え、こっちもきつい。
リバースしそうだ。
取り逃がしも多くなってきている。
取り逃がした悪魔たちを片付けていたハナちゃんと喜久兵衛も前線に取り込んでしまった。
後ろも少し心配だ。
悪魔たちの波は途切れることをしらない。
数の暴力とはこういう事なのかと実感する。神が居てもこちらは50人。数百万の悪魔を相手に勝てるわけがなかったのだ。
「ちくしょぉおおおおお!」
心の叫びが思わず口をつく。
「かーごめかごめ、かごの中の鳥は、いついつ出ー会う、夜明けの晩に、つーるとかーめが出会った、後ろの正面だあれ!」
美しい声が響いた。
傷が回復していく。広範囲の回復魔法だ!
声のほうを振り向くとそこには見知った顔が居た。
ババァ??
聖女とみこ!?
え?今の声ばあさんなの!?
「ちゃちゃつぼちゃつぼ、茶壺にゃ蓋がない、底を取ってふたにしろい!」
これは声そのまんまジジィだ。
雷撃が敵軍を駆け巡る。
振り返るとやはりそこには
ジジィ!高橋!!
「ど、どうして!?」
「いや、世界大会を見に来たんじゃよ?」
「桃太郎ががんばってるのがみたくてねぇ。」
じいさん・・・ばあさん・・・俺なんかのために・・・。
「旅費も出してくれるって言うしねぇ。」
「スィートじゃったぞ!スィート!ベットがキングサイズじゃ!」
ジジィ、そして、ババァ。
それ多分俺の学費から出てるんじゃねえか・・・。
グレートポーション以外での回復が発生し、周囲から歓声が湧き上がった。
防衛線を張っていた英雄たちの士気が一気に高まった。
「桃太郎や、少し時間をかせいでおくれ。」ジジィが俺に言った。「おっきな奴をかましてやるのじゃ。」
ジジィが杖を構えた。
あれ?ジジィって魔法使いなん?
「分かりました。任せてください。」俺はそう答えると、周りに叫んだ。「皆さん、広範囲の古式詠唱を行います。それまでの時間を稼いでください!」
「私が支援しますからね。頼みますよ、桃太郎、皆さん」ばあさんも言った。
「支援がくるぞおおお!!!時間をかせげええええ!!!」張飛が天をも揺らすような大声をだした。
「おおっ!!」防衛線の各所から、遥か彼方からも歓声が聞こえた。
「行くぞっ!」ジジィが叫び呪文を唱え始めた。
「ジュゲムジュゲムゴコウノスリキレ・・・」
は、速い!!高速詠唱か!!
というか、寿限無か。これ何節扱いになるんだ?
「・・・チョウキュウメイノチョウスケっ!!」
あっという間じゃないか!!こっちの援護なんていらないっ!
さすがは伝説の勇者高橋!!
「ありゃっ、和尚。こりゃまたずいぶん長い名前じゃないっすか。」
!?
「そんなこと言ったって熊さんや、お前さんが丈夫で長生きをするようにって願いを込めてくれって言ったんじゃないかね。」
ジジィが喋り続ける。
一席全部やるの!?
「そうは言っても和尚、この寿限無ってのは何ですかい?フランス語の愛してるとかそういうやつですかい?馬鹿だね熊さん、それはジュデームだよ。」
「み、みんな!耐えるぞ!!」慌てて叫ぶ。
「XXx!」
XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX、XXXXXXXXXXXX。
つ、強ぇえ!!
俺も負けてられない。
「シャ!」「ゆめ!」「あい!」
古いも新しいも関係ない!著作権ギリギリを責める!
ジジィが呪文を唱え始めたのに気付いたのか魔王軍の攻撃も激しさを増した。
耐える!耐えて見せる!
そして、15分。
突然、空が暗くなった。
「あんまり長いもんだから治っちまったよ!!」ジジィが言った。
「桃太郎、みんな!壁の内側に入って!!」ババァが叫んだ。「発動するよ!!」
「呪文が来るぞおおおお!城壁の内側に入れえええええ!!!」張飛が再び叫んだ。
ジジィがゆっくりと頭を下げながら言った。
「お後がよろしいようで。」
途端に大音響とともに巨大な地震が起こった。
みんながバランスを崩してよろめく。空を飛んでいる何人かを除くと、みんな立っているのがやっとだ。
しかし、勇者高橋の唱えた呪文は地震の呪文ではなかった。
この地震はただの呪文の衝撃だ。
壁の向こう側、悪魔の軍隊たちの頭上を飛んでいた悪魔たちが地面に叩きつけられる。
そして、地に立っていた魔王軍全員が地面に倒れ伏した。
ジジィの唱えたのは重力の魔法だった。
それはとてつもなく広大で、とてつもなく強力な魔法だった。
悪魔だけではない。
大地の木々は粉砕され地面にめり込む。眼下の建物が崩壊していく。
大地そのものも重力でどんどん下へと沈んでいく。
目の前の大地から、断末魔といろいろな物が折れるバキバキという音が届いてきた。
目の前に立っている者はもういない。
「伝説の百節級詠唱・・・。」ルーズベルトが呟いた。
「すげぇ・・・。」張飛も呟いた。
遠くでは神々を含めた代表たちがみな驚嘆している。
あのXXXXですらXXXXXXXXXXXXXXXX。
地鳴りはしばらく続き、見渡す限りにいくつもあった岡や山が平野となり、東西から海が流れ込んできた。
「残党狩りは、任すぞい。」ジジィが言った。「腰が痛くてもうだめじゃ。」
「すごい!すごい!おじいさん!」俺は思わず叫んだ。
「これ、桃太郎、油断せんと。まだ、城に張り付いている悪魔どもがおる。そいつらをやっつけい。」ジジィは言った。
確かに、万ほどの悪魔が残っている。
でも、終わりがある。
この程度なら朝飯前だ。
夕日が沈むころ、最後の悪魔が粉微塵に吹き飛んだ。
雲一つない空から照りつける夕焼けが、姫路城の前に黒く潰れた悪魔たちの残骸を赤く照らしていた。
俺たちの勝利だ!!
悪魔の大軍を倒し切ったのだ!!




