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桃太郎 学園編 初戦

 というわけで、『人魚姫』を擁する最上級クラスの2年生たちとの戦いが始まった。

 作戦会議の結果、この試合、先鋒は俺!桃太郎だ。

 次鋒は喜久兵衛、中堅がネネさん、副将がハナちゃん、大将が孝高だ。


 俺の仕事は、『人魚姫まで勝ち抜くこと』


 『第一回戦、2年生最上級チームvs1年生下級チーム。両チーム先鋒、準備してください。』

 ボランティアの放送部がアナウンスする。

 俺は先に試合場に上がって対戦相手を待った。

 ベンチのすぐ後ろに居るクラスメイト達から声援が送られてきたので、手を振ってこたえる。

 対戦相手が俺の向かいに上がってきた。

 向こうも先鋒から最強の駒を使ってきた。

 人魚姫だ。

 かぐや姫とは違う性的な魅力がそこにはあった。欧米万歳!

 人魚姫といっても下半身は魚ではなかった。

 卵に何かぶっかける的なものじゃない一般的なセックスが可能な人間の足だ。

 生臭そうでもない。いや、生臭いのかもしれないが、それでも良い。

 しかし、いきなり人魚姫というのは考え得るパターンの中で最悪の巡り合わせだ。

 孝高はたぶん俺が負けるだろうと鑑定チートで予言した。

 孝彦は『たぶん』負ける『だろう』と予言した。

 たぶんと言うなら可能性はゼロではない。1%の可能性でも残っていれば俺はその予言を覆して見せる。

 だって、俺は桃太郎なのだから!

 「始めっ!」審判が号令をかけた。

 「よろしくお願いします。」人魚姫はぺこりと頭を下げた。「カワイイ戦士さん。」

 キュン!

 お辞儀をした時に見えた谷間を凝視。

 人魚姫さん日本の文化に慣れていらっしゃる。

 「こ、こちらこそ!」人魚姫がお辞儀をし終わって谷間が見えなくなったので、こっちも思わず頭を下げた。

 「いえいえ、こちらこそ。」人魚姫はほほ笑みながら言った。「よろしければ、この競技場から下りてもらえないかしら?お・ね・が・い☆。」

 こりゃーここから下りたら、オッパイくらい揉ましてくれるかもしれん!

 急ぎ、場外に下りる。

 「勝者、人魚姫!」

 「はっ!!」我に返る俺。「い、いつから??」

 「人魚姫が競技台に上がった時にはもうメロメロでしたよ?」ネネさんがジト目で言った。

 そんな目で見ないでください。

 これは全て人魚姫の強力な能力のせいなのです。

 そう、それは【魅了】だ。

 「危ない。大将になって良かった。醜態を晒すところだった。」孝高が呟いた。

 くそ、子供ならもしかしたら効かないかもしれないとか言ってたじゃん。

 6歳児の俺にここまで効いた時点で、思春期に着地したばかりの喜久兵衛にはがっつり有効だ。

 次鋒戦も負けだな。

 この流れは一番苦労するパターンだ。

 中堅のネネさんから三人だけで最上級クラスの五人を全員やっつけてもらわないとならない。

 ため息をつきながら次鋒戦の行方を見上げた。

 ふおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!

 なんだとっ!?

 そこには信じられない光景があった。

 喜久兵衛が人魚姫のオッパイを揉んじょるっ!!

 ば、ばかなっ!こんな事があっていいものかっ!

 ひとしきり人魚姫のオッパイを揉ませてもらった喜久兵衛は「お姉さんありがとう!!」と言って、人魚姫に大きく手を振りながらベンチに戻ってきた。

 「はっ!!」

 「『はっ!!』じゃねぇぇええ!!」

 後ろで応援していたクラスメイト達といっしょに喜久兵衛をタコ殴りにする。

 「何故だー。」喜久兵衛が悲鳴を上げた。

 何故だなものかっ!!

 何故がここにあるとしたら、何故、俺はオッパイを先に揉ませてもらわなかったのかという事だけだ!!

 「1年下級クラス、中堅、前へ。」

 試合は進む。

 ネネさんが台上に上がった。

 「可愛らしい人。あなたはさすがに場外には出てくださらないわよね?」

 「あたりまえでしょ。」ネネさんが冷たく答えた。

 「あら、残念。」

 そう。人魚姫の【魅了】は男性にしか効果が無いのだ。

 「だからといって、私が弱いとは思わないでね?」人魚姫がニヤリと笑った。

 「始めっ!」審判の号令がかかった。

 ネネさんが呪文を唱え始めた。「ずいずいずっころばしごまみそずい。」

 人魚姫も同時に呪文を唱え始めた。「ずいずいずっころばしごまみそずい。」

 基本、且つ、最も有効な呪文。

 それが『ずっころばし』だ。

 お互いに一節での発動だ。二節まで唱えていたら相手の『ずっころばし』が先に命中し、詠唱が途絶えてしまうからだ。

 互いの『ずっころばし』が二人のちょうど真ん中でぶつかり合った。

 勝った。

 貫通力。

 俺の魔力を持ってようやくネネさんの一節級マジックアローを迎撃できかるかどうかだ。これはネネさんの特性なのだ。

 ネネさんの矢は、人魚姫の矢を真ん中から引き裂いて、そのまま進み、人魚姫の太ももを刺し貫いた。

 「くっ!」人魚姫が苦悶の声と共に膝をついた。

 「ずいずいずっころばしごまみそずい!」その間にネネさんが次の矢を召喚した。

 「参った!!」人魚姫が降参した。

 会場がまさかの1年生下級クラスの一勝に色めきだった。

 みんなは大喜びだ。

 次の次鋒戦、その次の中堅戦もネネさんは完勝した。

 ずっころばしを一節詠唱するだけで、試合は終わってしまった。

 相手は、ほたるこいや魔法反射を試すも、ネネさんの一撃を止めることは叶わなかった。

 副将戦を前にネネさんは自ら棄権した。

 孝高の指示による温存だ。

 戻ってくるネネさんにクラスメイト達から喝采が飛んだ。

 「1年下級クラス、副将、前へ。」

 ネネさんに代わって出て行ったのは、ハナちゃんだった。

 ハナちゃんがペコリとお辞儀をする。

 相手は、お辞儀を返すこともなく、少し苛立たし気に剣を抜いた。

 「ハナちゃん、気にしないで!」孝高が監督よろしくベンチから叫んだ。「大丈夫、魔力は君のほうが上だ!」

 「始め!」

 相手が一気にハナちゃんとの距離を詰めた。

 物理で押し切る気だ。

 1節のマジックミサイルへの一つの対処法だ。一発我慢して殴る。なにげに効果的な作戦なのだ。

 「通りゃんせ、通りゃんせっ!」

 「通りゃんせだって!?」相手の陣営から驚きの声が漏れた。

 通りゃんせは、大地の力を解放し、巨大な岩を操る古式詠唱だ。 

 地中から岩の腕を召喚して相手を押し潰したり、目の前に岩壁を召喚して相手の攻撃から身を守ったりする。

 魔力が高い場合、戦略級の大規模呪文として活用できる呪文だ。発動するだけでも難易度が高い魔法なので敵さんが驚くのも無理はない。

 ただ、実はこの魔法、対人戦の一対一では実は使いどころが難しい。

 ずっころばしやほたるこいのほうが発動が早く、小回りが利くので、小規模戦闘では使いやすいのだ。

 飛び込んできた副将の目の前の地面が広く歪み、ハナちゃんを守るように壁がせり上がってきた。

 「遅い!そして低い!」

 相手は軽々と2メートルくらいジャンプすると、壁の上で一歩踏んでハナちゃんに向かって跳んだ。

 これは、相手、何かの身体系の魔法具つけてるな?

 「なにっ!?」

 大きく躍した敵副将の無防備な股間に向かって、通りゃんせの壁によってブラインドになっていた地面から岩の腕が伸びてきて命中した。

 「のごぉっ!!」

 股間を押さえながら、墜落する副将。

 「なんで、もう一つ岩が・・・」相手はそう言いながらアワを吹いて気絶した。

 一節の通りゃんせじゃなくて、短2節の通りゃんせだからな。

 「跳躍+の魔法靴を履いてましたので、地面を荒らすのは鉄則です。」孝高が満足そうに言った。

 そう満足そうに勝ち誇った孝高には出番が回ってくることは無かった。

 ハナちゃんは次の大将戦も華麗に大勝利した。


 英雄学校創設以来初、最下層の1年下級クラスが1回戦を突破したのだ。

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