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桃太郎 学園編 入学

 「はあ、英雄学校ですか。」

 「ええ、いい話だとは思うわよ。」受付ちゃんが言った。

 ある日突然俺は受付ちゃんに学校への入学を進められた。

 「子供のころから大人に混じって冒険者ってのはどうかなって思うのよ。桃太郎ちゃん、お金も結構稼いだでしょ?学校に行って、同年代のお友達を作ったほうが絶対いいわよ。」

 同年代か・・・6才だろ?やだよ。

 「ミカドの命令だし、しょうがないんじゃない?」

 そうなんだよなぁ。

 なんか、急に偉い人からミヤコに行って学校に通うよう命令が来た。

 やっぱワイバーン乗り回してる6歳児は国としても放っておけないのだろうか。

 「英雄学校って何するんです?」

 「卒業すれば冒険者とかになれるのよ?」

 俺、もう特S級の冒険者なんですが・・・

 でも、お金もあるしミヤコにも行ってみたい気はする。

 ミカドの機嫌を損ねて受付ちゃんに迷惑かけても悪いし、オワリのギルドとズブズブになる前にここを去ることにした。

 受付ちゃんとは名残惜しいが、多分俺が成長しきるころには垂れてきてる可能性が高い。

 歳の差は残酷だ。

 それに学歴で子供の未来が決まるって言うしね。

 いちおう、ミカドの推薦してくる学校だからいい学校なはずだ。

 そして、旅立ちの日、俺はギルドの仲間たちと受付ちゃんに別れを告げてオワリの国をワイバーンに乗ってミヤコに向けて飛び立った。



 ミヤコへはワイバーンで2日もかからなかった。

 ミヤコは山間の平原に広がる大きな街で、東西南北に碁盤の目のように道が整備されていた。街の北のほうに大きな和風な宮殿が立っている。

 街に直接降りると大騒ぎになるので、街の東の山間に止めてそこから歩くことにする。

 ミカドから届けられた入学案内を見ながら、街の東の川沿いにある英雄学園にたどり着いた。

 「こんにちは。」門の所に立っていた先生が話しかけてきた。「もしかして新入生かな?」

 「あ、はい、そうです。」

 「そうかい、そうかい。君が桃太郎君か。」先生が言った。「待っていたよ。」

 「え?私の事を知っているのですか。」

 「そりゃあそうだよ。時間ギリギリだから中庭に急いでくれるかな?」

 そうりゃあそうだよ、ってなんだ?

 その疑問の答えは中庭に行ってすぐ分かった。

 中庭には、新入生だと思われる少年少女たちが集まっていた。数は100人くらい。

 そして皆10代~20代前半だった。ほとんど10代後半だ。

 俺だけやけに若いんだ。

 生徒たちの中に奇抜な奴や強そうな連中はいない。

 みんな見るからに普通の若者って感じだ。

 そんな中に一人6歳児が居る。

 高校入試とか大学入試に、小1がやって来てる感じだ。

 なにが同年代のお友達やねん。そんなんおらんやんけ。

 周りの生徒たちがこの幼児は何だと俺のほうを振り返った。

 まあ、しゃあない。

 「こんにちは。ボクちゃん、どうしたの?迷子?」

 と、後ろから声をかけられた。

 セミロングの黒髪。少し日に焼けた健康的な。ぱっちりとした大きな瞳。やさしそうな甘い声。整った鼻と大きくて少し薄い唇。

 そこには、俺の理想を具現化したような女性が立っていた。

 「ボクちゃん、お名前は?」彼女はニッコリと俺に向かって屈みこんでやさしく声をかけてきた。

 薄手の布であしらわれた浴衣のような着物の襟が少しだけたわみ、胸元が少しだけ見えた。

 奥に続いている曲線は着物の中に美しい果実が実っていることを語っていた。

 「ボ、ボクは桃太郎です。」何とか答える。顔に血が巡ってきたのが解かる。「あ、貴女のお名前はなんとおっしゃるのですか。」

 「私?私はネネ。」彼女は答えてから、再び尋ねてきた。「どうしたの?幼等部はここじゃないわよ?」

 え?幼等部なんてあるの?

 慌てて、送られてきた案内を確認する。英雄科の試験案内って書いてある。

 「ええっと、英雄科の試験に来たのです。」

 俺は送られてきていた案内状をネネさんに手渡した。

 「え!?ほんとだ?」ネネさんが手紙を見て驚きの声を上げた。「桃太郎君、その年齢で私と同級生なんだ!すごいね!ヨロシクね(`・∀・´)ノ」

 「ほ、ほんとですか!よろしくお願いします!」

 やったぜ!

 将来、俺の小太郎が立派になったら、是非、あなたの桃と私の太郎で桃太郎しましょう。

 「はーい。学生注目!」集団の前に立っていた先生から大きな声がした。「私は英雄学校の教師の城戸だ。お前たちの剣術の腕を見る。隣の土井が魔法の面倒を見てくれる。」

 城戸先生はマッチョないかにも体育教師、土井先生は細面でやさしそうな女性の教師だ。

 「今日の入学に際して、お前たちには試験を受けてもらう。」

 入試あるの?

 聞いてない。

 「試験の結果でクラス分けを行う。また、あまりに結果の悪いものは本日をもって退学となってもらう。」

 入試って訳ではないのね。

 でも、結果が悪いと即退学だったら、入試みたいなもんじゃん。

 まあ、俺が落ちることはないだろ。

 よーし、ネネさんと同じクラスになるぞ~。

 



 クラス分けの試験が始まった。

 剣と魔法の両方の実力を実技で試めし、その結果で各クラスに振り分けられる。

 クラスは、最上級クラス/上級クラス/中級クラス/下級クラスの4つに分けられていて、4年のカリキュラムの間クラス替えはない。

 つまりだ、ここで絶対にネネさんと同じクラスに入らなくてはならない。

 先に魔法の試験からだ。

 ネネさんの隣を確保しながら試験会場に移動する。

 ネネさんのほうも俺みたいなちっちゃい子が心配だったのか、手を繋いで一緒に歩いてくれた。

 ああん、手が柔らかい。

 この子が犬かサルだったら仲間なのに。

 いや、待てよ?

 この人を俺の犬にしてしまばいいのではないのだろうか?

 ネネさんを見ながらちょっと卑猥な想像をする。

 ぐへへ。

 「?」ネネさんが6歳児の熱い視線に首をかしげてから、俺が緊張していると思ったのかニッコリと笑って「大丈夫よ」と言った。

 だめだ。

 こんな素敵な笑顔の人を犬にすることなんてできない!

 俺はなんてバカなことを考えてしまったんだ!

 会場は大きな広場で、真ん中に木偶の人形が置かれていた。その隣には、金髪のイケメンが立っていた。

 「皆さんがどのくらい魔法を扱えるか確認します。」土井先生が言った。「この木偶に思いっきり魔法をぶつけてください。魔法の種類は問いません。まず、生徒会長に見本をみせてもらいましょう。」

 あの金髪は生徒会長か。

 金髪は姫をダンスに誘う騎士のように優雅にお辞儀をすると、木偶から少し離れて詠唱を始めた。

 英雄学校の生徒とやらの実力を見定めさせてもらいましょ。

 「ずいずいずっころばしごまみそずい・・・。」金髪が詠唱を開始した。

 古式詠唱だ。まあ、雑魚右衛門ですら二節詠唱できたのだから、このくらいはしてもらわないと困る。

 「・・・抜けたどんどこしょ!」

 木偶の上空を囲むように無数の魔法陣が現れ、光の矢が針のむしろのように木偶に注がれた。

 木偶はまさに木っ端みじんに爆散した。

 「古式詠唱の三節だと・・・。」

 「しかも、疲れた顔一つ見せない・・・。」

 周りの生徒たちが、驚きの声を上げた。

 ネネさんの俺の手を握る力がギュッと強くなったのが分かった。ネネさんもものすごい真剣な顔だ。

 「まあ、俺なんて今の段階で二節唱えられるし。」

 「生徒会長で三節なら、私にも最上級クラスに行けるチャンスがあるかも。」

 周りの皆が強がり始めた。

 ちがうぞ。

 今のは、三節じゃなく短五節だ。

  ずいずいずっころばしごまみそずい/茶壺に追われてとっぴんしゃん/抜けたーらどんどこしょ

 の三節を

  ずいずいずっころばし/ごまみそずい/茶壺に追われて/とっぴんしゃん/抜けたーらどんどこしょ

 に分けることで威力を格段に上げているんだ。

 生徒会長は余裕そうだ。

 実力を隠したのか、俺たちを試しているのか。

 入学生たちの中に今の詠唱が短五節であったことを気づいているのはいないようだった。

 ネネさんも「三節・・・(´・ω・`)」とつぶやきならが羨ましそうにしている。

 こりゃ、かなり手加減せんとネネさんと同じクラスには行けないかもしれん。

 新しい木偶が用意されて、試験が始まった。

 ほとんどの生徒が古式詠唱を選んだ。

 古式詠唱の他に簡式詠唱というのがこの世界にはある。簡式詠唱のほうが魔法らしい長い呪文で発動も簡単だ。だが、唱えている時間の割に効果が小さい。

 なので、同じ効果を持つ古式詠唱が唱えられるのであれば古式詠唱を使ったほうが戦いには役に立つ。

 簡式詠唱はMPを温存したいときや、戦闘中以外で使われることがほとんどだ。

 ぶっちゃけ、俺は、『10』という無尽蔵なMPを保有しているので、古式詠唱が打ち放題だ。ほとんど簡式詠唱は憶えていない。憶えたのは、魔法ストレージの召喚と、火加減を調整する魔法くらいだ。この二つはその効果を代替えできる古式詠唱が知られていないので憶えるしかなかった。。

 新入生たちのほとんどが古式1節の詠唱だった。が、中には2節を余裕で唱える者や、3節を唱え切って気絶する者なんかも居た。

 ネネさんは「ずっころばし」の古式1節だったが、残念なことに召喚できたのは貧相なマジックミサイルで、木偶を破壊することはできなかった。

 「次、桃太郎。」

 ゆっくりと前に出る。

 会場の空気が凍り付いた。

 「え?アレ、受験生だったの?」

 「あの女の子の連れ子じゃなくて?」

 ああっ、ネネさんにまで迷惑が。

 11節詠唱して俺TUEEEEEしたいところだけど、それだとネネさんと別クラスになってしまう。

 たぶん、ネネさんは下級クラスになりそうだ。なんとか手を抜いて成績を合わせていかなくてはならない。

 木偶を壊さない程度に威力を調整しなくてはいけないのだが、俺の魔力だと1節でも上級クラス以上に入りかねん。

 1節を短4節に分けて、後半3つは詠唱から排除して口にするだけにして、四分の一節詠唱にしよう。

 「ずい!ずいすっころばし。」

 節を分けたことがばれないように早口で言う。

 いつもより小さな光の矢が木偶に命中した。

 木偶が派手にぶっ壊れる。

 うせやん!

 これ、木偶に派手に飛び散る仕掛けかなんか仕組んでやがったな?

 「桃太郎君・・・すごい・・・。」とネネさん。

 生徒会長がこっちをじっと睨んでいる。

 まずい、短節詠唱がバレたか?

 「おい、あのちびっこが古式詠唱を使ったぞ・・・。」

 「マジかよ・・・。気絶もしねえ。」

 周りの生徒たちも、古式一節を唱え切ったと、俺のことを驚きの目で見ていた。

 これは、ちょっとネネさんと成績が開いてしまったかもしれない。

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