桃太郎 学園編 試験
「桃太郎君すごいんだね・・・_| ̄|○」ネネさんがガックリとした様子で言った。
「そんな、ネネさんもちゃんと光の矢召喚できてたじゃないですか。」
フォローだ、フォロー。
武力の試験で巻き返してもらわにゃならん。
退学になったら可哀そうだ。
「でも、木偶壊せなかったし。ちょっと自信喪失?」ネネさんが言った。「頑張って二節チャレンジすればよかったかなぁ。」
「ネネさん二節以上唱えられるんですか?」
「ううん。唱えられるけどきちんと発動できないの。4節まで頑張ってみたけど、矢が増えてくれないの。」
4節まで唱え終えた?
それ、普通の人だとMPごっそり持ってかれて普通なら立ってられないはずなのだが・・・。
実は結構な素養があるのでは?
それとも唱え方が悪いせいで2節以降が呪文として認識されていないのだろうか?
「古式詠唱を唱えられない人も居ましたから、大丈夫ですよ。」何とか言葉を見つけてネネさんを励ます。「それに、次の武力の試験で挽回すれば・・・」
ネネさんの顔が見る見る青くなっていく。
武力のほうがダメなのかぁ・・・。
「うん、ありがとう!私頑張るねっヾ(T▽T)ノ」ネネさんが青い顔で言った。
うーむ、何とかしてあげたいところだが・・・。
「お、ちびっこ!」一人の男子生徒が突然話かけてきた。
そこには、ぼろい着物に身を包んだ少年がいた。
たしか、テストの時、喜久兵衛って呼ばれてたな。
俺に次いで若かったのでよく覚えている。中学生くらいかな?魔力の試験では簡式詠唱で木偶をきちんと破壊していた。
「おまえすごいな!そんなちっさいのに気絶しないで古式詠唱1節唱え切ったんだからな!」
「あ、ありがとうございます。」
「ため口で良いぜ!桃太郎!」喜久兵衛は言った。「お前のほうが強いしな!」
元気でいい奴だ。
喜久兵衛は今度はネネさんに向かって言った。
「お姉さん、オッパイでかいね!」
第一声それか?
「喜久兵衛もなかなかの魔法だったと思うよ。」変な方向に話題が転ぶ前に喜久兵衛に話しかける。
「名前憶えててくれたんだ!ありがとな!俺、古式詠唱は一節ももたないんだよな!とりあえず退学にならないのを目指すぜ!」
「私も退学にならないように頑張らないとだめだね!(`・ω・´)」
ネネさんは喜久兵衛の元気に当てられて少しだけ元気になったようだ。
「そうですよ。一緒に頑張りましょう!」
「俺、冒険者になりたいんだ!」喜久兵衛が言った。「この学校で頑張れば生徒会長みたいになれるかな?」
「たぶん成れるよ。」俺は答えた。
生徒会長が今回見せたくらいのレベルなら余裕だ。
「でも、古式三節って昔見たことあるんだけど、生徒会長の三節ってなんかちょっと違ったんだよなぁ。威力もすごかったし。」
そこに気づくとはいい観察眼をしている。
観察と気づきは冒険者にとって最も必要な資質だと言っていい。二番目が足の速さだ。強さは三番目。
「きっと大丈夫だよ。そのための英雄学校なんだから。」俺は適当に答えておいた。
入学出来たらみっちり俺が育ててやるよ。
剣の試験は午後からだった。
生徒同士で三回戦って、勝敗と戦いの出来を見るらしい。
「やれやれ、こんな子供をやっつけて評価されるのかな?僕が正当に評価されなかったら君のせいだからね。」俺を倒した蛇沢とかいう生徒が俺を見下ろしながら言った。「ちょっと古式詠唱が唱えられるからってこんなところに来ないでくれよ。平民は身の程を知らないから困る。」
むかつく奴だが、あまりに弱かったので気にもならない。
次の相手にも上手い事負ける。
そして、三人目。
相手はネネさんだった。
ネネさんは二敗している。こっちも二敗だ。三敗したら退学確定とかじゃなければ良いが・・・。
少なくともここで俺が勝つ手は無い。
三敗したら退学になるのだとしても、ネネさんを残してあげたい。
ちょっとネネさんには頑張ってもらおう。
彼女は二敗しているが、スジ自体はかなり良い。
身のこなしが良いのだ。そして、剣の使い方がそれ以上に下手なのだ。我流なので太刀筋が洗練されていない。そして、何といっても武器が合っていないのだ。
「桃太郎君。全力で行くからね(`・ω・´)」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
「始め!」城戸が号令をかけた。
剣を構えてネネさんが突っ込んでくる。
後の事を考えると、序盤はこっちが少し圧してしまってもいいだろう。
ネネさんの剣戟を払ってちょっと大振りで踏み込む。
ネネさんがふわりと後ろに下がった。
ちょっとだけタイミングを計ってから踏み込んで、ネネさんが受けれるように斬りつける。
ネネさんが慌てて剣を出して俺の剣をはじいた。
素早く三回、ネネさんの剣を狙って攻撃をかます。
ネネさんは少し後ろに下がりながら三回とも何とか受け切って、距離を取った。
OK。
後一撃だ。
上段で大きく振りかぶって、ネネさんの頭上からムラマサ・ブレードの一撃を叩きこむ。
ネネさんが慌てて両手で剣を横にして俺の剣戟を受けた。
剣が合わさった瞬間、ネネさんの剣がパキンと小気味いい音を奏でて綺麗に折れた。
まったく同じ場所にムラマサ・ブレードで六回打撃を入れたのだ。
「あ・・・・。」ネネさんが折れた剣を見て絶望の表情をした。
顔から血の気が引いていき、眉毛が八の字になる。
「ネネさん!まだ終わりじゃないでしょ!」慌てて檄を飛ばす。
ここで諦められては困る。
せっかく剣を短くしたんだ。
ネネさんは小太刀の長さが適性なはずだ。
だから、ここからネネさんは強くなる。
はず!
「そうね!最後まで諦めちゃだめよね!」ネネさんが剣を構えた。
「行きます!」
さっきと同じように踏み込む。
ネネさんはさっきよりも大きくかわす。
俺も即座に追いすがる。
ネネさんが今度はバク転で距離を取ろうとした。
体勢の立て直し際を攻めてみよう。
一歩前進して間合いをつめる。
と、その瞬間、逆立ちから後方に跳ねるものと思っていたネネさんが、腕をくっと曲げて沈みこむとその勢いを利用しながらストリートダンサーのように足を開いて回った。
回り込むように飛んできた蹴りを深く沈み込んでかわす。
と、その瞬間、ネネさんの折れた剣が伸びて来た。
「うわぁ!!」慌ててのけ反り、攻撃をかわす。
あぶねえ!
しまった!今の当たっとけばよかった。
思わず避けちまった。
剣を短くしただけで、ここまで攻撃のキレが違うのか。
ネネさんも自分の攻撃に思うところがあったのか、折れた剣をまじまじと眺めていた。
うん、もう少し相手をして、ネネさんがどのくらいの実力か確かめておこうか。
「参りました。ネネさん。」
試合はネネさんの勝ちに終わった。
うまく見せ場も作ってあげられたし、本人も手ごたえがあったみたいだ。良かった。
「ごめんね、途中で剣が折れてなかったら勝ててなかったかも。」ネネさんは少しはにかみながら言った。
「ネネさん、武器が合ってなかったんですね。」
「そうみたい。ビックリっしちゃった。」ネネさんが言った。
うーん、最初の試合で折ってたら全勝してたんじゃないかな?
「やめ!!止めろ!」
と、試合会場から城戸の大声が聞こえた。
「喜久兵衛君!!」ネネさんが叫んだ。
後ろを振り返ると、試合会場に血まみれで倒れている喜久兵衛が居た。
喜久兵衛の身体には致命傷になりうる傷が何か所もあった。勝負の一撃が入った後にも攻撃されたのだ。
「フン。弱い!」蛇沢が剣をピッと振って血を払った。「弱いの相手じゃはここまでやっても評価にならん。」
ネネさんと二人で喜久兵衛に走り寄る。
「くそ・・・やられちまった。くやしいなぁ。冒険者なりたかったなあ・・・。」喜久兵衛が小さな声で言った。
「喜久兵衛君しっかり!」ネネさんが喜久兵衛の頭をそっと抱え上げた。
「死にたくないよぉ・・・。」
「大丈夫よ、いま回復の先生が来てくれるわ。」
だめだ、間に合わん。
急ぎ魔法ストレージを開いてキビ団子を取り出す。
「これを食べて!」
キビ団子を喜久兵衛の口に詰め込む。
「ふがっ!ふぐ!!」
何が固形が便利だ!液体のほうが絶対便利じゃねえか!
「桃太郎君!!なにしてるのっ!」ネネさんが慌てて俺を止めようとする。
城戸も駆けつけて来て、二人がかりで喜久兵衛をキビ団子で窒息させようとしている6歳児を引き離した。
「おお!!治った!!!」その瞬間、喜久兵衛が元気に立ち上がった。
「ええっ!?」ネネさんと城戸がビックリして喜久兵衛を振り返った。
「グ、グレートポーションです。」
引きはがされた流れで、ネネさんに首を締められたまま俺は説明した。
「ありがとう!桃太郎!!窒息するかと思ったぜ!」喜久兵衛が元気に言った。
「良かった・・・。ごめん、桃太郎君。」
ネネさんは安心したのか俺の事を後ろからギュッとした。
「そんな、こっちこそありがとうございます!!」
俺は背中の感触に全集中で言った。
試験後の教員室でクラス分け試験担当の3人の先生たちが集まって話し合っていた。
「さて、最後のこの子ですが、どうしますかね。」武術の試験を担当した城戸先生が悩まし気に言った。
「成績自体は悪いですからね。」魔術の担当だった土井先生が言った。「けれど、私は入学を推します。」
「犬山ネネちゃんですか?」もう一人の先生が言った。
菅原という名の先生だ。桃太郎を校門で出迎えた先生だ。
「そりゃあ入学でしょ。」菅原先生は言った。
「そうですよね。」土井先生が嬉しそうに言った。
「スジ自体は光るものもありましたが、武術面では桃太郎君とようやく互角でしたし、ギリギリラインですよ。」城戸先生が言った。「魔術のほうは、木偶が壊せなかったのは彼女入れて5人だけでしたが?」
「壊せなかったんじゃないんですよ。壊れなかったんです。」菅原先生が言った。
「そう!そうなんですよ!」土井先生が嬉しそうに言った。「ネネさんは爆発魔法のかかっている木偶を爆発させずに貫いたんです。これがどういう意味を持つか分かりませんが、ネネさんは何か特別な物を持っていると思います。」
「まあ、土井先生がそう言うなら。魔力試験は私の専門ではありませんし。」
「では、合格で良いですね!」
「それより、桃太郎君は本当に下級クラスで良いのですか?」菅原先生が言った。「ミカド推薦の子ですよ。」
「武力的には3敗だしな・・・最後の試合はかみ合っていたが、強い相手に力を出せないのはいただけない。」城戸先生が言った。「ミカドのご推薦だから入学はさせますが、正直、退学させた連中に申し訳が立たない。」
「魔術的には合格です。ただし、年齢を考慮すれば、という言い訳込みですね。古式詠唱が不完全でした。」土井先生が言った。「それでもあの年で古式一節を発動させたのは賞賛に値します。大事に育てていきたいところですね。そのためにも下級クラスで地道な訓練をさせるのは良いと思います。」
「なるほど。まあ、しょうがないですね。ミカドもクラス編成までは指示して来ませんでしたし。」菅原先生も同意した。
「じゃ、桃太郎君も下級クラスってことで。」
「これで、クラス分けは終了ですね。」
「あ、一つお願いがあるのですが。」菅原先生が言った。「今年の下級クラスの担任、私にしてもらえません?」




