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精霊は還る場所を知っている  作者: くおんあづき


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それぞれの道

【精霊は還る場所を知っている】

2026.9.25 47話一挙配信。

毎日21:00頃 2~3話ずつ更新しています。

═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═

朝。

マリアの小屋の前には、いくつもの荷物が並んでいた。


ジジとルナリスは、ダンテと共にバインスへ。

エレーンとシエラも、今日ここを出る。


「これで全部か?」


ダンテが荷物を見る。


「たぶん」


ジジが答えた。


「お前の『たぶん』は信用できねえ」


「エレーンが昨日見た」


「じゃあ大丈夫だな」


「俺は?」


「信用してねえ」


「ひどくねぇ?」


ルナリスが笑った。


「ジジ、信用ないの?」


「あるよ」


「ねえよ」


ダンテが即答した。


シエラが笑い、ルナリスの前にしゃがむ。


「ルナリス」


「何?」


「練習したこと、覚えてる?」


「覚えてる」


「本当に?」


「右と左」


「それは練習する前から覚えていてほしいわ」


「でも分かんなくなる」


「動く時は、ちゃんと声をかけてもらうのよ」


「ジジに?」


「ジジだけじゃなくて。バインスに行ったら周りの人にも」


「うん」


「危ないところでは一人で動かない」


「うん」


「それから――」


「姉さん」


エレーンが止めた。


「多いわよ」


「だって心配でしょう」


ルナリスが頷く。


「もう忘れた」


「ほら」


「じゃあジジに覚えてもらう」


シエラがジジを見る。


「聞いてた?」


「聞いてた」


「覚えた?」


「たぶん」


「駄目じゃない」


「俺が覚えてる」


ダンテが言った。


「ダンテ帰る」


ルナリスが即答する。


「バインスまではいる」


「じゃあそのあと誰が覚えるの?」


「ジジ」


「結局俺じゃねぇか」


「ちゃんと覚えろ、馬鹿」


ルナリスが笑った。


「エレーン」


「何?」


「こっち来て」


エレーンがルナリスの前へ行く。


「ここ?」


「もっと近く」


しゃがむと、ルナリスが手を伸ばした。

宙を探した手を、エレーンが取る。


「今日行くの?」


「ええ」


「シエラも?」


「一緒よ」


「どこ?」


「まだ決めてないの」


「バインスじゃない?」


「ええ」


「なんで?」


「別のところに行ってみたいから」


「そっか」


ルナリスは少し黙った。


「また会える?」


「会えるわ」


「いつ?」


「まだ分からないわね」


「明日?」


「早すぎるわ」


「じゃあ明後日?」


「それも早い」


「いつ?」


「だから分からないって」


「分からないの嫌」


エレーンが笑った。


「困ったわね」


「じゃあ会いに来て」


「ええ」


「絶対?」


「絶対」


「約束?」


「約束」


ルナリスが小指を出した。

エレーンも小指を絡める。


「破ったらルナが探しに行く」


「それは困るわね」


エレーンが笑う。


「じゃあ来て」


「行くって言ってるでしょう」


「絶対ね」


「ええ。絶対」


ルナリスが満足したように笑った。

エレーンが立ち上がると、シエラがもう一度前へしゃがんだ。


「元気でね、ルナリス」


「シエラも」


「ちゃんとご飯食べるのよ」


「食べる」


「夜更かしもしない」


「ジジする」


「ジジの話じゃないわ」


「ジジが寝なかったらルナも寝ない」


シエラが顔を上げた。


「ジジ」


「何?」


「早く寝て」


「俺?」


「あなたが寝ないとルナリスも寝ないそうよ」


「寝てるよ」


「ジジ遅い」


ルナリスが言った。


「ほら」


「……分かった」


笑い声が起きた。

やがて、ダンテが空を見上げる。


「そろそろ出るぞ」


「そうだな」


ジジが荷物を持った。

エレーンとシエラも、それぞれの荷物を背負う。

昨日までと同じように五人で立っているのに。


向かう先だけが違った。


「じゃあね、ジジ」


エレーンが言った。


「ああ。またな、エレーン」


「ええ。また」


シエラも手を上げる。


「元気でね」


「シエラも」


「ルナリスをお願いね」


「うん」


「ダンテも」


「俺も?」


「一応」


「一応って何だよ」


シエラが笑う。


「じゃあ、行きましょう」


エレーンが言った。


「うん」


二人が並んで歩き出す。

少しずつ。


マリアの小屋から離れていく。


「エレーン!」


ルナリスが呼んだ。

エレーンは振り返らなかった。

片手だけを高く上げる。


「またね、ルナリス!」


「またね!」


シエラも手を振った。

二人は、そのまま歩いていく。


「エレーン」


シエラが隣を見る。


「何?」


「泣いてる」


「知ってるわ」


「…戻る?」


エレーンは首を振った。


「行こう」


「うん」


二人の姿が、道の向こうへ小さくなっていった。

ルナリスは手を振り続けていた。


「もういない?」


「……ん」


ジジが答える。


「そっか」


それでも。

ルナリスは、しばらく手を下ろさなかった。

ダンテが荷物を担ぎ直す。


「俺たちも行くぞ」


「ん」


ジジはルナリスの後ろへ回った。


「行こう、ルナ」


「うん」


三人も歩き出した。

エレーンとシエラが向かった道とは。


反対の道へ。

═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═

お読みいただきありがとうございます。

くおんあづきです。

初執筆のため、慣れないところがあり読みづらい箇所等あるかと思います。

かなり長編になっていますので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

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