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精霊は還る場所を知っている  作者: くおんあづき


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帰ってくる人

【精霊は還る場所を知っている】

2026.9.25 47話一挙配信。

毎日21:00頃 2~3話ずつ更新しています。

═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═

それから、ジジが家を空ける日は少しずつ増えた。

毎日ではない。


ダンテに呼ばれて守備隊へ行く日もあれば、

近場の討伐を頼まれることもある。

それでも以前のように、何日も帰らない依頼は受けなかった。


「三日?」


ある朝、依頼書を見たジジが言った。


「そうだ」


ダンテが答える。


「南の村まで往復込みで三日」


「やだ」


「だと思った」


「じゃあ何で持ってきたんだよ」


「一応聞いただけだよ」


ダンテは依頼書を畳んだ。


「半日なら?」


「行く」


「一日」


「場所による」


「分かりやすいな、お前」


ジジは気にした様子もなく、ルナリスの髪を結んでいた。

上手くいかないらしい。

何度やっても左右の高さが違う。


シエラが横から見かねて手を出した。


「貸して」


「できる」


「できてないわ」


「もうちょい」


「ルナリスの髪で練習しないで」


ルナリスは大人しく座ったまま笑っている。


「ジジがやる」


「ほら」


ジジが少し得意そうに言った。


「ルナがそう言ってる」


「ルナリスが優しいのよ」


結局、最後はシエラが整えた。


——————————————————————


ルナリスの身体は、ゆっくりだが確実に変わっていた。


食べられる量が増えた。

起きていられる時間も長くなった。

ジジに支えてもらえば、寝台の上で身体を起こしたまま話せる。


そして。


脚にも、少しずつ変化があった。

ラガードの診療所で医師が包帯を外し、しばらく黙って患部を見る。


「……やっぱり進んでるわね」


「足?」


ジジがすぐに聞く。


「まだ足とは言わない」


「でも伸びてる?」


「ほんの少しよ」


切断されていた部分の先に、以前にはなかった丸みができていた。


傷が塞がっただけではない。

身体が、その先を作ろうとしている。


エレーンも隣から覗く。


「本当に戻るのかしら」


「分からないわ」


医師は何度目かの同じ答えを返した。


「でも、少なくとも再生は止まっていない」


ルナリスが自分の脚に触れる。


「歩けるようになる?」


医師は少しだけ考えた。


「そうなったらいいわね」


断言はしなかった。

それでもルナリスは嬉しそうに笑った。


「歩けたら庭行く」


「今も行ってるだろ」


ジジが言う。


「自分で」


「ああ」


「赤いの取る」


「勝手に取ったらまた怒られるぞ」


「誰に?」


ジジが一瞬黙った。


「……エレーン」


「私?」


突然名前を出されたエレーンが眉を上げる。


「庭見てるのお前だろ」


「そういう役まで引き継いだ覚えはないわ」


「じゃあ取っていい?」


ルナリスが聞く。


「駄目よ」


「ほら」


「あなたに言われると腹が立つわね」


医師が笑った。


——————————————————————


その日の帰り。


ジジは守備隊本部へ寄ることになった。

ラガードから新しい報告が届いているらしい。


「先帰ってて」


馬車の前でジジが言う。

エレーンがルナリスを見る。


「大丈夫よ。私たちで連れて帰るから」


「夕方には帰る」


「誰も聞いてないわ」


「ルナに言った」


ルナリスが頷く。


「分かった」


ジジは少しだけしゃがみ、ルナリスの頭を撫でた。


「行ってくる」


「いってらっしゃい」


それだけで、今度はすんなり離れた。

少し前までなら、もっと迷っていただろう。


エレーンは何となく、その背中を目で追った。


——————————————————————


帰りの馬車。


シエラがルナリスの隣に座り、エレーンは向かいにいた。


「ジジ、前より出かけるようになったね」


ルナリスが言う。


「そうね」


「最初ずっといた」


「あなたから離れたくなかったのよ」


「うん」


ルナリスは少し考えた。


「でも、帰ってくる」


エレーンが顔を上げる。


「ええ」


「ちゃんと帰ってくるって、分かった」


ルナリスは当たり前のことを確かめるように言った。

エレーンは、しばらく何も言わなかった。


待っていれば帰ってくる。


その言葉が、なぜか胸に残った。


——————————————————————


夕方。


ジジは約束通り夕方に帰ってきた。

扉が開く。


「ただいま」


食事の支度をしていたエレーンが振り返る。


「おかえり」


ルナリスも居間から声を上げた。


「ジジ、おかえり」


「ああ」


ジジがそちらへ向かう。

その途中で、鍋を覗いた。


「何これ」


「シチュー」


「魚?」


「つまみ食いしないで」


伸びかけた手を、エレーンが木べらで軽く叩いた。


「まだ何もしてねぇし」


「しようとしたでしょう」


「味見」


「同じよ」


ジジは諦めてルナリスのところへ行った。

エレーンは鍋を混ぜながら、小さく笑う。

═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═

お読みいただきありがとうございます。

くおんあづきです。

初執筆のため、慣れないところがあり読みづらい箇所等あるかと思います。

かなり長編になっていますので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

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