やっと見つけた
最下層。
扉が一つあった。
他の牢とは違う。
厚い木。
外側から何本も鍵が掛けられている。
ジジは立ち止まった。
胸がうるさい。
何度。
違う場所へ行った。
何度。
違う名前を追った。
何度。
手遅れかもしれないと思った。
それでも。
止めなかった。
鍵を見る。
全部壊した。
扉を開ける。
暗い。
小さな寝台。
その上に。
白い髪が見えた。
ジジは動かなかった。
いや。
動けなかった。
「……ルナ?」
声が掠れた。
寝台の上の身体が、僅かに動く。
小さい。
三歳だった頃よりは大きい。
けれど。
十八歳の身体ではない。
五歳くらい。
痩せた腕。
白い髪。
眼には厚い布。
毛布の下。
両脚が。
途中からなかった。
「…………」
息が止まる。
剣で斬られた時も。
魔物に囲まれた時も。
こんなふうに身体が動かなくなったことはなかった。
一歩。
ようやく進む。
「ルナ」
もう一度。
今度は少しだけ近くで。
白い髪の少女が顔を動かした。
「……ジジ?」
十五年。
面影はほとんどない。
やせ細り。
汚れた白い髪。
失われたもの。
それでも。
その呼び方と声だけは。
変わっていなかった。
「……ああ」
ジジは寝台の横へ膝をついた。
「俺」
手を伸ばす。
途中で止める。
どこに触れていいか分からない。
「ジジ?」
「ああ」
「……ほんと?」
「うん」
小さな手が動く。
空を探す。
ジジはその手を取った。
細い。
冷たい。
「遅い」
ルナリスが言った。
胸の奥で。
何かが崩れた。
「……悪ぃ」
「ずっと待ってた」
「ごめん」
「来るって思ってた」
「うん」
「シエラが、もう来ないかもって言っても」
「…………」
「来るって思ってた」
ジジはもう答えられなかった。
頭を下げる。
握った手へ額をつける。
「遅くなった」
声が震えた。
「ごめん」
「うん」
「ごめん、ルナ」
「……いいよ」
その言葉で。
涙が落ちた。
ジジ自身が、一番驚いていた。
泣き方など忘れたと思っていた。
けれど。
止まらない。
「ジジ?」
「ん」
「泣いてる?」
「泣いてねぇよ」
「嘘」
「……うるさい」
ルナリスの口元が。
ほんの少しだけ笑った。
——————————————————————
足音がした。
エレーン。
その後ろに、支えられながらシエラもいる。
「ルナリス」
シエラの声。
「シエラ?」
「ええ」
「エレーン、いた?」
「いるわ」
エレーンが近づく。
そして。
寝台を見た。
息を呑む。
言葉が出なかった。
シエラは泣きながら笑っていた。
「ね?」
ルナリスが顔を向ける。
「何?」
「言ったでしょう」
シエラの声が震える。
「ジジは来るって」
「うん」
ルナリスは、ジジの手を握ったまま答えた。
ジジは顔を上げる。
何か言おうとして。
言えなかった。
——————————————————————
「ルナ」
「なに?」
「帰ろう」
少し間があった。
「……どこに?」
ジジは答えた。
「家」
ルナリスの指が。
握った手に、少しだけ力を込めた。
「……うん」
十五年。
ようやく。
ジジは、その手を取り戻した。
═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═
お読みいただきありがとうございます。
くおんあづきです。
初執筆のため、慣れないところがあり読みづらい箇所等あるかと思います。
かなり長編になっていますので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。




