言っただろ
翌朝。
エレーンが仕事へ出る準備をする横で、
ジジも外套を羽織っていた。
「今日は宿場でしょう?」
「ああ」
「どのくらいかかるの?」
「分かんねぇ。夕方には戻ると思う」
「そう」
エレーンは鞄を持つ。
「何か分かっても、一人で先へ進まないで」
「ああ」
「分かったら戻って話して」
「分かってる」
「ならいいわ」
エレーンは玄関へ向かった。
「行ってくるわね」
「ああ。気ぃつけろ」
「あなたもね」
二人は家の前で別れた。
薬草店では、いつも通り一日が過ぎた。
仕事にも慣れ、ミレアから任されることも
少しずつ増えている。
それでも、時折ジジのことが頭をよぎった。
何か見つかっただろうか。
もう帰っているだろうか。
以前ほど落ち着かなくなることはない。
ジジは戻ると言った。
なら、戻るだろう。
そう思えるくらいには、彼のことを知っていた。
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「ただいま」
夕方、家へ戻る。
返事はない。
エレーンは荷物を置き、夕食の準備を始めた。
しばらくすると、外から足音が聞こえる。
扉が開いた。
「ただいま」
「おかえり」
エレーンは鍋から顔を上げる。
「何か分かった?」
「ああ。少し」
「聞かせて」
ジジは外套を脱ぎ、テーブルへ座った。
「宿場はまだ残ってた」
「それで?」
「昔働いてた奴が一人いた」
懐から折り畳んだ紙を出す。
「当時、変な商隊が何度か通ってたらしい」
「変な?」
「夜に来る。宿には泊まらない。
馬だけ替えてすぐ出る」
エレーンの表情が変わる。
「荷馬車は?」
「複数」
「中は?」
「見てねぇらしい」
少し間を置く。
「一度だけ、荷台から声がしたって」
「声?」
「ああ。女か子どもか、そのくらいしか覚えてねぇ」
エレーンは黙った。
「どこへ向かったの?」
「南」
「追った?」
ジジは首を振る。
「追ってねぇ」
エレーンが顔を上げる。
「……そう」
「言っただろ」
「何を?」
「勝手に先行かねぇって」
あまりにも当然の顔だった。
エレーンはしばらくジジを見る。
「行きたくなかった?」
「行こうとは思った」
「でしょうね」
「でも約束したからな」
ジジは紙を机へ広げる。
「先にこれ持って帰った」
エレーンは小さく息を吐いた。
「……ありがとう」
「何が」
「約束守ってくれて」
「守るだろ」
「そうね」
エレーンは少し笑った。
紙には簡単な地図が描かれていた。
宿場から南へ続く道。
途中で二つに分かれている。
「明日ダンテに見せる」
「私も仕事が終わったら行くわ」
「ああ」
「勝手に決めないで待ってて」
「分かってる」
「ならいいわ」
エレーンは立ち上がった。
「夕食にしましょう」
「手伝う?」
エレーンが少し意外そうに見る。
「珍しいわね」
「別に普通だろ」
「じゃあ野菜切って」
「ああ」
二人で台所へ向かった。
帰ってきたジジが、今日知ったことを話す。
エレーンはそれを聞く。
いつからか、それがごく自然なことになっていた。
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お読みいただきありがとうございます。
くおんあづきです。
初執筆のため、慣れないところがあり読みづらい箇所等あるかと思います。
かなり長編になっていますので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。




