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精霊は還る場所を知っている  作者: くおんあづき


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同居人

その日、エレーンが仕事から家へ戻ると

玄関前に見覚えのない馬が繋がれていた。


「……誰か来てる?」


鍵を開ける。


「ただいま」


「おかえり」


ジジの声。

続いて、別の男の声がした。


「お前、それ普通に言うようになったんだな」


「何が」


「いや、別に」


居間を覗くと、ダンテが座っていた。


「あら」


「おう。邪魔してる」


テーブルには古い書類が何枚か広げられている。

エレーンの視線がそちらへ向く。


「何か分かったの?」


「少しな」


ジジが紙を一枚持ち上げた。


「でもまだ大したもんじゃねぇ」


「見せて」


「手ぇ洗ってこい」


エレーンがジジを見る。


「店で洗ってきたわ」


「薬草触ってただろ」


「……はいはい」


台所へ向かう。

背後からダンテの声が聞こえた。


「しかし、お前ら随分馴染んだな」


「そうか?」


「そうだろ」


「分かんねぇ」


「最初はどうなるかと思ったけどな」


「何が」


「奴隷市場でエルフ買って

 家に置いてるって聞いた時は」


「別に置いたわけじゃねぇ。勝手についてきた」


エレーンは手を拭きながら戻ってきた。


「まだそれを言うの?」


「事実だろ」


「そうだけれど」


ダンテが笑う。


「で、今は何なんだ?」


「何が」


「二人の関係」


ジジは本気で意味が分からないらしい。


「一緒に住んでる」


「それは見れば分かる」


「じゃあ……」


少し考える。


「同居人?」


エレーンの足が僅かに止まった。

同居人。

間違ってはいない。


「まあ、そうだな」


ダンテはあっさり頷いた。

ジジも既に興味を失ったらしく、

書類へ視線を戻している。

エレーンも席についた。


「……同居人」


「何」


「いいえ」


エレーンは静かに紙へ視線を落とした。

なぜ、その言葉が少しだけ引っかかったのか。

自分でもまだ分からなかった。


ダンテが一枚の記録を指した。


「リュゼル襲撃の少し後。

 北西街道で複数の荷馬車が検問を避けて

 移動してる」


「荷馬車?」


「ああ。ただし中身は確認されてねぇ」


「どこへ?」


「途中の宿場までは追える。そこから先がない」


ジジが紙を取る。


「関係あるか分かんねぇな」


「ああ。今のところはな」


エレーンは記録を眺めた。

期待するにはまだ弱い。

それでも、今までなかった線が一つ増えた。


「調べられる?」


「ああ。宿場の記録を当たる」


ダンテが答える。

ジジはすぐに言った。


「俺も行く」


「お前は書類読め」


「嫌だ」


エレーンは小さく笑った。


ダンテが帰った後。

エレーンは夕食の支度をしながら、ふと思い出した。


「ねえ」


「ん」


「さっきの」


「何」


「同居人」


「ああ」


「あなた、本当にそう思ってるの?」


聞いてから、少し後悔した。

ジジは考える。


「違う?」


「……違わないわ」


「じゃあそれでいいだろ」


「そうね」


エレーンはそれ以上何も言わず、料理へ戻った。

ジジも気にした様子はない。


同居人。


その通りなのに。

なぜか、少しだけ物足りなく聞こえた。

═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═

お読みいただきありがとうございます。

くおんあづきです。

初執筆のため、慣れないところがあり読みづらい箇所等あるかと思います。

かなり長編になっていますので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

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