三名の議員
【精霊は還る場所を知っている】
2026.9.25 47話一挙配信。
毎日21:00頃 5話ずつ更新しています。
═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═
レグラスから再び連絡が入ったのは、それから数日後だった。
ジジはバルトとともに、エルフ居住区にある議会棟を訪れていた。
案内された部屋へ入ると、レグラスとアグラディアがすでに待っている。
机の上には数枚の書類が置かれていた。
「来たか」
「ああ」
ジジが椅子へ座り、バルトもその隣へ腰を下ろす。
レグラスは二人が座ったのを確認すると、一枚の書類を手に取った。
「先日の件だが、関与した者が判明した」
ジジの表情が変わる。
「誰だ」
「議員が三名」
レグラスは書類を机へ置いた。
―ガルド・ヴァルセイン
―モルギアナ・セルヴィア
―ジザール・アルヴェリス
「……議員?」
「ああ」
バルトが腕を組む。
「議員が三人揃って、あんな真似したってのか」
「現時点で、三名すべての関与を確認している」
「何のために」
ジジの声が低くなる。
「それについては、まだ三名から正式な供述を取っていない」
「…………」
「ただし」
レグラスがジジを見る。
「三名とも以前から、
ルナリスを人間であるお前のもとへ置いておくことに
否定的な発言をしていたようだ」
ジジの眉間に皺が寄った。
「だから俺から取り上げようとしたって?」
「その可能性は高い」
「ふざけんな」
低い声が落ちる。
「ジジ」
バルトが横から名前を呼ぶ。
「分かってる」
そう答えながらも、ジジの表情は険しいままだった。
レグラスは続ける。
「偽造された書簡に使われた内容についても調べた。
本来、私がギルドへ出した依頼を閲覧できる者は限られている」
児童所周辺の警備。
ルナリスの訓練に備え、
念のため警備を増やすために出した正式な依頼。
その内容が利用された。
「三名とも、立場上その内容を知ることが可能だった」
「じゃあ、ほぼこいつらじゃねぇか」
「だからといって、私がここで罪を決めるわけにはいかない」
ジジがレグラスを見る。
「三名を正式に召喚する」
「ここに?」
「いや」
レグラスは首を横に振った。
「公の場で行う」
バルトが僅かに身を起こす。
「他の議員も入れるのか」
「ああ。今回の件は、
三名だけを密室で問い質して終わらせていいものではない」
六ヶ国議長の名を利用した書簡の偽造。
人間との正式な取り決めへの介入。
そして、一人の子どもを本人の意思とは関係なく引き離そうとした行為。
「議員という立場にある者が関与した以上、他の議員にも審理を公開する」
「俺も行く」
ジジが即座に言った。
レグラスが頷く。
「そのつもりで呼んだ。当事者であるお前にも出席してもらいたい」
「あたりまえだ」
「俺も出るぞ」
今度はバルトだった。
レグラスが視線を向ける。
「今回の話は、エルフの中だけで終わる問題じゃねぇ」
バルトの表情から、いつもの豪快さが消えている。
「そっちの議員が、人間相手に六ヶ国議長の名を使って偽の書簡を作った。
しかもギルドまで巻き込んでる」
「ああ」
「俺はバインス側の書記として参加する」
ジジが隣を見る。
「書記?」
「審理の内容は全部記録する」
バルトはレグラスを見る。
「必要なら六ヶ国にも報告させてもらうぞ」
「構わない」
レグラスの返事に迷いはなかった。
「むしろ、その方がいい」
「父上」
それまで黙っていたアグラディアが口を開く。
「三名には、いつ召喚を?」
「明後日だ」
「分かりました。では、私の方で必要な資料を揃えておきます」
「ああ、頼む」
ジジは机の上に置かれた三人の名を見る。
ガルド。
モルギアナ。
ジザール。
ルナリスを自分から引き離そうとした者たち。
「…………」
「ジジ」
またバルトに呼ばれる。
「何だよ」
「今から行くなよ」
「行かねぇよ」
「顔が行く顔してんだよ」
「行かねぇって」
レグラスが小さく息を吐いた。
議会棟を出たあと、ジジとバルトはそのままギルドへ戻った。
扉を開ける。
——————————————————————
「おら、そこ腰引けてんぞ!」
聞き慣れた声が鍛錬所から飛んできた。
「次! ほら来い!」
鍛錬所の方を見る。
ガイアがいた。
若い冒険者を何人か捕まえ、なぜか剣の相手をしている。
「……何やってんだ、あいつ」
「知らん」
バルトが答える。
二人に気づいたガイアが剣を下ろした。
「お。おかえり」
そのまま近づいてくる。
「どうだった?」
ジジは黙ってガイアを見る。
「……何だよ、その顔」
「犯人分かった」
ガイアの表情から笑みが消えた。
「誰」
「議員三人」
「…………」
ジジはレグラスから聞いた内容を話した。
本来の警備依頼を利用したこと。
三人ともその内容を知ることのできる立場にいたこと。
以前からルナリスを人間のもとへ置くことに否定的だったこと。
そして、明後日。
公の場で三人を召喚し、審理すること。
「俺も出る」
ジジが言う。
「俺も書記で出るぞ」
バルトが続けた。
「ガイア、お前も来い」
「…は?俺?」
「こいつ押さえとけ」
バルトがジジを指す。
「何で俺なんだよ」
「ガイア以外に誰が押さえられんだ」
ガイアがジジを見る。
「…………」
「何だよ」
「まあ、必要になったらな」
「ならねぇよ」
「どうだかな」
「お前まで言うな」
明後日。
三人の議員が、公の場へ引き出される。
ジジはもう一度、その名を頭の中で繰り返した。
═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═•⊰❉⊱•═
お読みいただきありがとうございます。
くおんあづきです。
初執筆のため、慣れないところがあり読みづらい箇所等あるかと思います。
かなり長編になっていますので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。




