ここに居れば
【精霊は還る場所を知っている】
2026.9.25 47話一挙配信。
毎日21:00頃 5話ずつ更新しています。
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夕方。
児童所の門を出ると、ルナリスはすぐにガイアの隣へ並んだ。
「今日も、お花の絵描いたよ」
「へえ。何の花?」
「リンドウ、ルピナス、ジギタリス!」
「すごいな、花の名前いっぱい知ってるんだな」
「うん!ララノアがたくさん教えてくれるの」
「そっか」
「あとね、外で虫見つけた」
「虫?」
「ちっちゃいやつ」
ルナリスが指で大きさを作る。
「これくらい」
「ちっさ」
「触ったよ」
「へえ」
「ジジも触れるかな」
「触れんだろ」
「ガイアは?」
「触れるよ」
「じゃあみんな触れるね」
「何の確認だよ」
ルナリスが笑った。
二人で道を歩く。
「ジジ、ちゃんとおうちいるかな」
「いるだろ」
「どっか行ってない?」
ガイアが少し黙った。
「……ありそうだな」
「見に行こ」
「だな」
歩く速度が少し上がる。
「ルナ、走んなよ」
「走ってないよ」
「俺も走らねぇからな」
「早歩き!」
「はいはい」
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家に着き、扉を開ける。
「ただいまー!」
「おかえり」
居間から声が返ってきた。
ジジは椅子に座って本を読んでいた。
「ジジいた!」
「いるよ」
「よかった」
「何が?」
「ガイアが、ジジどっか行ってるかもって」
「おい、ルナ」
ジジがガイアを見る。
「俺そんな信用ねぇの?」
「三回くらい外出ようとしてただろ」
「出てねぇじゃん」
「俺が止めたからだろ」
「ちゃんと家にいたんだからいいだろ」
「はいはい」
ガイアが持っていた荷物を置く。
「おかえり」
ジジが言った。
「……ただいま」
ガイアはそのまま台所へ向かった。
ルナリスがジジのそばへ行く。
「あ、ジジ」
「ん?」
「明日、おじさんのところお泊まり行っていい?」
「レグラスんとこ?」
「うん!」
「レグラスがいいって言ったならいいよ」
「いいって!」
「じゃあいいよ」
「やった!」
「…………」
ガイアが振り返った。
「明日?」
「うん!」
「ルナ、泊まり?」
「うん!」
ガイアが黙った。
「どうした?」
「……いや」
「ガイアも明日どっか行くの?」
ルナリスが聞く。
「あー……俺も明日は」
「何あんの?」
ジジが本から顔を上げた。
「…………」
「何?」
「……何か」
「何かって何だよ」
「何かあんだよ」
「何が?」
「まだ分かんねぇ」
「予定なのに?」
「うるせぇな」
ジジが眉を寄せる。
ルナリスもガイアを見ている。
「ガイア、いないの?」
「……いや」
「ルナ帰ってきた時いる?」
「…………」
ガイアがルナリスを見る。
「……い…る?」
「ほんと?」
「いる」
「やった」
ルナリスが笑った。
ガイアは息を吐いて、夕食の支度を始めた。
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夕食の間も、ルナリスは児童所であったことを話し続けていた。
絵の具をこぼした子がいた。
昼に果物を食べた。
庭で見つけた虫は葉の裏へ逃げた。
「ガイア、虫触れる?」
「さっきも聞いたろ」
「ジジにも聞くの」
「俺も触れるよ」
「じゃあ三人とも触れるね」
「だから何なんだよ、それ」
ガイアが笑った。
「ルナの中では重要なんだろ」
「重要!」
「ほら」
「何がほらだよ」
ジジも笑う。
「ジジ、明日からお仕事行くの?」
「行く」
「大丈夫?」
「もう平気だよ」
「走っちゃだめだよ」
「走らねぇって」
「ほんと?」
「ほんと」
ガイアがジジを見る。
「無理すんなよ」
「しねぇよ」
「痛くなったら帰れよ」
「分かってる」
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夜。
寝台の真ん中で、ルナリスは眠っていた。
ジジは仰向けになり、ガイアはルナリスの向こうで横になっている。
「ガイア」
「ん」
「宿舎、もう引き払ってんだよな」
「そうだな」
「荷物は?」
「預けてる」
「全部?」
「ほとんどな。元々大して持ってねぇし」
「ふうん」
少し間が空いた。
「これからどうすんの?」
「んー……」
ガイアが天井を見る。
「宿舎はすぐは無理だから、宿でも取るかな」
「暫くまたバインスにいるんだろ」
「…まぁ」
「その後は?」
「まだ決めてねぇよ」
「…………」
「何?」
「別に」
「さっきから何なんだよ」
「何が?」
「何か言いてぇんだろ」
ジジは少し黙った。
「……ここに居れば?」
「…………」
ガイアが顔を向けた。
「何?」
「ここ」
「ここって?」
「俺んち」
「…………」
ガイアが身体を起こす。
「お前んち?」
「さっきから言ってる」
「何で?」
「宿舎空いてねぇんだろ」
「そうだけど」
「だったらここでいいじゃん」
「いや……」
ガイアが部屋を見る。
それから寝台を見る。
「ここ一部屋しかねぇじゃん」
「そうだな」
「俺どこで寝んの?」
ジジが寝台を軽く叩いた。
「ここ」
「…………」
「今も寝てんじゃねぇか」
「今はそうだけど」
「じゃあいいだろ」
「毎日ここで寝んの?」
「住むならそうなるだろうな」
「…………」
ガイアが額を押さえた。
「何?」
「何でもねぇよ……」
「嫌なのか?」
「嫌とかじゃねぇけど」
「じゃあいい」
「お前ほんと……」
ガイアは途中で言葉を切った。
真ん中ではルナリスが眠っている。
明日はここにいない。
「…………」
「ルナも喜ぶだろ」
「…まあ」
「暫くガイア来なかったから、気にしてたし」
「……そう」
「俺も」
ガイアがジジを見る。
「何?」
「俺も、ガイアいる方がいい」
「…………」
「何だよ」
「いや……」
「だったらここに居れば?」
ガイアはしばらく黙っていた。
「……考えとく」
「ん」
ジジはそれ以上何も言わなかった。
ガイアも横になる。
「…………」
「ガイア、おやすみ」
「……おやすみ」
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翌朝。
「ルナ、もういい」
「まだ混ぜる」
「混ぜすぎ」
「もうちょっと!」
「駄目。貸せ」
「やだ」
「じゃあそれ固くなっても知らねぇぞ」
ルナリスの手が止まった。
「固くなるの?」
「なる」
「やだ」
「じゃあ貸せ」
素直に器を渡す。
ガイアが中を確認した。
「よし。大丈夫」
「ルナ上手?」
「上手上手」
「焼く!」
「それは俺」
「ルナもやりたい」
「熱いから駄目」
「じゃあ何する?」
「果物持ってきて」
「分かった!」
ルナリスが台所の中を動き回る。
ジジは食卓に座って二人を見ていた。
「まだ?」
「うるせぇな」
「腹減った」
「もう焼けるよ」
「昨日も待てって言われた」
「毎日飯作らせる気かよ」
「うまいからいいじゃん」
「何がいいんだよ」
ルナリスが果物を持って戻ってくる。
「ガイア、これ?」
「そう。それ切るから置いといて」
「ルナ並べる」
「じゃあ頼む」
「うん!」
焼き上がったパンケーキを皿へ移す。
ガイアが切った果物を、ルナリスが一つずつ並べていった。
「できた!」
「おー」
「ルナが作った!」
「俺も作っただろ」
「ガイアと作った!」
「そうしとけ」
三人で食卓につく。
ジジが一口食べた。
「うまい」
「ほんと?」
ルナリスが身を乗り出す。
「うん」
「ガイアのも?」
「ガイアがほとんど作っただろ」
「ルナも混ぜたよ」
「じゃあ二人の」
「うん!」
ルナリスが笑った。
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食事を終えると、ジジは鍛錬所へ向かう準備を始めた。
「無理すんなよ」
「分かってる」
「肩痛くなったら帰れ」
「分かってるって」
「走んなよ」
「ガイア」
「何?」
「やっぱシャイアみてぇ」
「うるせぇ」
ジジが笑った。
「じゃ、行ってくる」
「いってらっしゃい!」
ルナリスが手を振る。
ガイアもジジを見る。
「......いってらっしゃい」
「ん」
「行ってくる」
扉が閉まる。
ルナリスがガイアを見上げた。
「ルナも児童所行く」
「そうだな」
「今日おじさんのおうち泊まるよ」
「知ってる」
「明日迎え来る?」
「......行く」
「ガイアが?」
「ああ」
「ジジも?」
「ジジは仕事だろ」
「じゃあガイア来てね」
「分かった」
ルナリスが笑う。
ガイアはルナリスの頭を撫でた。
「ほら。遅れるぞ」
「はーい」
二人で家を出た。
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お読みいただきありがとうございます。
くおんあづきです。
初執筆のため、慣れないところがあり読みづらい箇所等あるかと思います。
かなり長編になっていますので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。




