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レベル1の冒険者が世界の調停者になる  作者: pacifian
第1章 『レベルドロップ編』

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『王城内部戦』


王城の内部は、異様な静けさに包まれていた。


外で響いていた剣戟や怒号は、分厚い石壁に遮られ、

ここには重く冷たい空気だけが残っている。


「……進むぞ」


アレクの声が、長い回廊に反響した。


王子軍は足並みを揃え、慎重に前進する。

城門を越えたからといって、勝利ではない。

むしろ――ここからが、本当の意味での戦いだった。


迅は一歩後ろから周囲を観察していた。

天井、柱、分岐路。

すべてが防衛を前提に作られている。


フォルが低く唸る。

耳が、空気の変化を捉えている。


その直後だった。


白い法衣に身を包んだ神殿兵が、回廊の先に現れる。

複数。


詠唱陣が同時に展開された。


「神の裁きを、反逆者に――!」


光が集束する。


「下がって!」


ルシェラが叫び、前に出た。


同時に、彼女は片膝をつき、手を地面に叩きつける。


「——《黒障壁》」


轟音。

衝撃。


厚い障壁が全ての攻撃を防ぐ。


「……防がれた!?」


神殿兵が動揺する。


「神の術式を……!」


「神じゃない」


ルシェラは息を整えながら、立ち上がる。


「あなたたちが使っているのは、

 恐怖で歪められた魔法よ」


彼女は片手を掲げ、指先に闇の魔力を集中させる。


「——《対魔干渉》」


術式の核を狙い、魔力を流し込む。

神殿兵の詠唱陣が、音を立てて崩壊した。


「……くっ!」


迅が、その隙を逃さない。


一気に踏み込み、関節を打つ。

急所は外す。

致命には至らせない。


「制圧完了」


アレクは一度だけルシェラを見る。


(……無理はさせられない)


「進むぞ!」


アレクは声を張り、前進を命じた。


回廊を抜けると、広い広間に出た。


そこに待っていたのは、

王直属の部隊。


重装甲。

統率された陣形。

一切の迷いがない。


「これより先は、通さない」


隊長格の騎士が剣を構える。


「殿下であろうと、

 反逆者は反逆者だ」


アレクは剣を抜いた。


「ならば、通してもらう」


次の瞬間、激突。


鋼と鋼がぶつかり合う。

王直属の部隊は強い。

一人一人が精鋭だ。


アレクは最前線に立ち、剣を振るう。


「前列、交代!」

「無理に押すな、隊形を維持しろ!」


指揮と戦闘を同時にこなす。

肩に斬撃を受け、血が滲む。


それでも――退かない。


「……なぜ、そこまで」


敵の騎士が叫ぶ。


「なぜ、王に逆らうのです!」


アレクは剣を受け止め、押し返す。


息を吐き、踏み込む。


「民を守るためだ!」


後方では、ルシェラが民間人を庇っていた。


逃げ遅れた使用人。

震える文官。


彼女は両腕を広げ、再び障壁を展開する。


「——《黒障壁》」


飛んでくる流れ弾、魔法の余波。

すべてを受け止める。


「……大丈夫」


自分に言い聞かせるように呟き、

それでも、決して下がらない。


誰かが、震えた声で言った。


「……悪魔族が……守ってる」


その言葉は、恐怖ではなく、

戸惑いに近かった。


戦いは、膠着する。


王直属の部隊は崩れない。

だが、押し切ることもできない。


その均衡を見極め、

迅が動いた。


側面。

隊列の要となっている騎士へ。


一瞬の踏み込み。

剣を絡め、武器を弾き落とす。


殺さない。

だが、戦線からは確実に排除する。


アレクが、その前に立った。


「——進め!」


王子軍が一気に押し出す。


王直属の部隊は、後退を選ばざるを得なかった。


「……下がれ」


隊長が、苦渋の決断を下す。


「これ以上、血を流すな」


道が、開く。


最後の回廊。


空気が、変わる。


重圧。

威圧。

理屈では説明できない存在感。


フォルが、喉を鳴らす。


迅が静かに息を吸う。


「……いる」


アレクは、剣を握り直した。


疲労。

痛み。

だが、心は折れていない。


「……進む」

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