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レベル1の冒険者が世界の調停者になる  作者: pacifian
第1章 『レベルドロップ編』

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『城門攻防』

王城は、沈黙していた。


厚い城壁。

巨大な城門。

その上に並ぶ、王軍と神殿の兵。


ここは王都の中心であり、

この国の“意思”が集約される場所だ。


「……来たな」


アレクは、城門前の広場に立っていた。


背後には王子軍。

数は決して多くない。

だが、誰一人として目を逸らしていない。


王城側では、神殿の旗と王軍の紋章が並び立つ。

それ自体が、威圧だった。


「ここを越えれば、もう戻れない」


近衛師団長が、低く言う。


「分かっている」


アレクは答える。


「だから、ここで止まるわけにはいかない」


城壁の上から、声が響いた。


「王命である!」


王軍の指揮官だ。


「王城に近づくことは許されない!」


「これ以上進めば――反逆とみなす!」


神殿の神官が、続ける。


「神の名の下に、ここで止まれ」

「王は、秩序だ」


その言葉に、アレクは一歩前に出た。


「秩序とは、民を守ることだ」


静かな声。

だが、確実に届く。


「恐怖で縛るものを、秩序とは呼ばない」


ざわめきが起きる。


城壁の上の兵たちの視線が、揺れた。


最初に動いたのは、王軍だった。


盾の列が前に出る。

弓兵が構える。

神殿側の魔導陣が淡く光る。


「来るぞ!」


王子軍が身構える。


「前進!」


王軍が押し寄せる。


――激突。


盾がぶつかり、

剣が交差し、

城門前の空気が、一気に張り詰めた。


アレクは前線に立つ。


剣を振るう。

だが、狙いは常に“止める”こと。


「押し返せ!」

「囲め!」

「殺すな、制圧だ!」


その声は、戦場を貫いた。


「……なぜ、退かない」


王軍の兵が、息を切らして呟く。


アレクは答えない。

代わりに、さらに一歩前へ出る。


退かない。

引かない。


それ自体が、答えだった。


神殿側が動く。


詠唱。

空気が歪む。


「神の裁きを――」


「させない」


同時に、彼女は片膝をつき、手を地面に叩きつける。


「——《黒障壁・展開》」


闇色の魔力が広がり、半球状の障壁を形成する。

直後、神殿兵の魔法が叩きつけられた。


「……通さない」


神官が息を呑む。


「悪魔族……!」


迅は、城門を見ていた。


正面突破は無理だ。

だが――


「……今だ」


彼は、横の通路へ動いた。


王城へ物資を運ぶための小門。

守りは薄いが、要所だ。


迅は一気に踏み込む。


剣を抜く。

一閃。


門番が倒れる。

命は奪わない。


「開け」


低い声。


仲間が、内側から城門の機構へ取り付く。


これは、“道を作る”一手だ。


城門前では、膠着が続いていた。


王軍は押し切れず、

王子軍は引かない。


城壁の上の兵たちは、

下を見下ろしながら、迷っている。


「……王子が、退かない」


「民を守るって……」


言葉にならない声が、広がる。


その時――


重い音が響いた。


城門の内側で、機構が動く。


「……門が」


誰かが呟く。


軋む音。

ゆっくりと、しかし確実に、

王城の城門が、開き始めた。


「なっ……!」


王軍の指揮官が叫ぶ。


「止めろ!」

「門を閉じろ!」


だが、もう遅い。


アレクは、その光景を見て、

一歩、前に出た。


「行くぞ」


声は、落ち着いている。


「城へ」


王子軍が、動く。


王軍の列が、割れる。

完全な敗走ではない。

だが、道を塞げなくなった。


城門の前。


アレクは、一度だけ振り返った。


そこには、市民の姿があった。

遠くから。

怯えながら。

だが、確かに――見ている。


「……俺は」


アレクは、城門へ向き直る。


「逃げない」

「ここで、止まらない」


城門は、完全に開いた。


それは、勝利ではない。

通行許可でもない。


アレクは、城内へ足を踏み入れる。


王城への道は、開かれた。


それは、剣でこじ開けた道ではない。

退かない意志が、開いた道だった。


迅は、後方で剣を収める。


ルシェラは、城門を見上げ、静かに呟く。


「……人は、こうやって前に進むのね」


フォルが、低く唸る。


次の障壁。

次の意思。


城門の向こうで、

王は、待っている。

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