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レベル1の冒険者が世界の調停者になる  作者: pacifian
第1章 『レベルドロップ編』

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『国民を守る戦い』

昨日掲げられた王子軍の旗は、夜のうちに取り払われている。

だが、それで終わるはずがなかった。


王軍は動いた。

それも、徹底的に。


街道には装甲兵が展開され、

要所要所に検問が設けられ、

鐘が鳴るたびに、人々は足を止める。


――戦争の準備ではない。


“制圧”の準備だ。


「……来るぞ」


アレクは前線に立ち、王軍の動きを見据えていた。


彼の背後には、王子軍。

近衛師団を核とし、昨日の衝突で合流した兵たち。

まだ少数だが、統率は取れている。


「今日の戦いは、奪うためじゃない」


アレクの声は、緊張の中でも揺れなかった。


「民を、取り戻す」

「恐怖から、解放する」


兵たちが、無言で頷く。


「だから――」


アレクは剣を掲げる。


「民間人を最優先で守れ」

「倒すな、殺すな」

「道を、作れ」


それは、戦場では異質な命令だった。


だが、誰一人として疑問を口にしない。


王軍は、数で押してきた。


盾の列。

槍の壁。

魔導支援部隊。


対する王子軍は、明らかに劣勢だ。


「前線、圧迫!」


「東側、路地に民間人!」


報告が飛び交う。


「東を優先!」


アレクは即断する。


「第二隊、回り込め!」

「盾を前に、速度を落とせ!」


彼自身が、先頭に立つ。


剣を振るう。

だが、狙いは急所ではない。

叩き落とす。

弾く。

押し返す。


「……なぜ、殺さない」


王軍の兵が、息を切らしながら叫ぶ。


アレクは答える。


「お前たちも、民だからだ」


その言葉に、兵の動きが一瞬止まる。


路地では、混乱が広がっていた。


逃げ遅れた市民。

泣き叫ぶ子ども。

転倒する老人。


「下がって!」


その前に、ルシェラが立つ。


剣は抜かない。

魔力も、解放しない。


だが、彼女の存在だけで、

王軍の兵は踏み込めなかった。


「……ここから先は、行かせない」


低い声。

冷たいが、敵意はない。


兵が槍を構える。

その瞬間――


迅が、背後から一撃で制圧する。


倒れるが、息はある。


「今日は、均衡を保つ」


迅は戦況を俯瞰している。

一人でひっくり返せる。

だが、そうしない。


これは、アレクの戦いだからだ。


避難路が、徐々に確保されていく。


「こっちだ!」

「走れ!」


王子軍の兵が、民を導く。


最初は怯えていた市民たちが、

やがて、気づき始める。


――この兵たちは、守っている。


「……あの人が」


誰かが、アレクを指さす。


前線で、剣を振るい、

怒鳴り、指示を出し、

民の盾になっている青年。


「王子……?」


噂が、静かに広がる。


恐怖よりも先に、

理解が、芽を出す。


王軍の指揮官が、怒号を上げる。


「なぜ、押し切れん!」

「数では勝っているはずだ!」


「……民間人が」


部下が、歯を食いしばる。


「王子軍は、民を盾に……」


「違う!」


指揮官は否定しかけ、言葉を失う。


盾にしているのは、

王軍の方だと、気づいてしまったからだ。


アレクは、中央広場へと踏み込んだ。


ここを取れば、

王都の動線が開く。


「……ここだ」


アレクは叫ぶ。


「ここを抑える!」


王軍が、再編して押し寄せる。


アレクは、剣を構え直す。


「俺が、前に立つ」


疲労はある。

恐怖もある。


だが、逃げない。


「俺は――」


彼は、兵と市民、両方に向けて叫ぶ。


「王になる男だ」

「その資格を、今日、証明する!」


剣が交わる。


だが、次第に、

王軍の動きが鈍る。


兵が、攻撃をためらい始めた。


「……本当に、守ってる」


「俺たちが、守ってきたものは……」


疑念が、広がる。


戦いは、いつの間にか

**“制圧”から“膠着”**へと変わっていた。


「……引け」


王軍の指揮官が、歯を食いしばって命じる。


「一時撤退だ」


王子軍は、追わない。


アレクが、剣を下ろす。


「追うな」

「今日は、ここまでだ」


兵たちは従う。


静寂が戻る。


瓦礫の中、

避難を終えた市民たちが、

遠巻きに、王子軍を見ている。


誰かが、小さく言った。


「……守られた」


その言葉が、

すべてだった。


アレクは、深く息を吐き、

剣を鞘に収める。


彼の姿は、

もはや“反逆者”ではない。


見られている。

選ばれ始めている。


迅は、少し離れた場所で呟いた。


「……器だな」


ルシェラは、静かに頷く。


フォルが、空気を嗅ぎ、低く唸る。


アレクは、王城の方を見据えた。


これは、戦争ではない。

国を、取り戻す戦いだ。


そして――

人々は、初めて見始めた。

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