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レベル1の冒険者が世界の調停者になる  作者: pacifian
第1章 『レベルドロップ編』

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『アレク・レイフォード』

王の間には、重い沈黙が垂れ込めていた。


白と金で統一された空間。

聖王国の威厳を象徴するその場所で、

誰もが口を閉ざし、玉座を見上げている。


玉座に座すのは、

聖王国――国王アレクシオン


その前に立つのは、

神殿代表神官、軍務卿、重臣たち、

そして――近衛騎士団長。


近衛団長は一歩前に出て、低く報告した。


「陛下。

 先日ご報告した悪魔族と人族について、

 改めて補足を申し上げます」


王は短く頷いた。


「申せ」


「南方森林地帯にて接触した際、

 当方は交戦寸前まで至りましたが――

 悪魔族の威圧により撤退いたしました」


王の間に、低いざわめき。


「兵が一切動けなくなるほどの圧。

 殺意は見せずとも、

 制御を誤れば甚大な被害が出ると判断しました」


王は腕を組み、低く言う。


「……やはり危険だな」


「はい。

 討伐対象として間違いありません」


その言葉に、神殿代表も即座に同意した。


「悪魔族が人界を歩いている時点で異常。

 しかも人族を伴っている。

 見逃す理由はありません」


王は視線を神殿代表へ移す。


「その神殿側からも、新たな報告があると聞いているが」


神殿代表が進み出た。


「は。

 南方に存在した小神殿が、

 何者かにより制圧されました」


王の間がざわつく。


「神殿が、だと?」

「賊か? 反乱か?」


神官は首を振る。


「いえ。

 現地の記録と生存者の証言から、

 先の悪魔族と人族によるものと断定しております」


王の目が細くなる。


「……理由は」


「地下牢の解放です」

「収監されていた者たちが解き放たれ、

 神官一名が死亡。

 兵は制圧されました」


重臣の一人が声を荒げる。


「神殿を襲い、罪人を解放するなど……

 完全な反逆行為ではないか!」


神殿代表は続ける。


「加えて――

 戦闘の最中、

 悪魔族が子どもを庇ったという証言が残っています」


一瞬の静寂。


そして、失笑。


「馬鹿馬鹿しい」

「悪魔族が慈悲を?」

「神官を欺くための演技だろう」


王は即断した。


「論ずる価値はない」

「悪魔族は悪だ。

 それ以上でも以下でもない」


その言葉に、

ほとんどの者が頷いた。


――だが。


その場で、ただ一人、

沈黙を保った青年がいた。


第一王子、アレク・レイフォード。


――威圧だけで兵を制圧。

――追撃せず、殺戮も行わず。


(今回の報告)

――神殿を潰した。

――だが、子どもを庇った。


(……噛み合わない)


アレクは一歩前に出た。


「父上」


王が視線を向ける。


「……何だ、アレク」


「討伐対象であることに異論はありません」


その一言で、

重臣たちの警戒がわずかに解ける。


「ですが」

「この悪魔族の行動には、

 明らかに一貫性のない点があります」


神殿代表が眉をひそめる。


「殿下、それは――」


「承知しています」

アレクは静かに遮った。


「悪魔族が危険であることも、

 国家にとって脅威であることも」


「だからこそ――

 私が討伐に向かいます」


王の間がどよめく。


「殿下自ら!?」

「それは危険すぎる!」


アレクは王を見据えた。


「討伐隊を編成してください」


王が低く問う。


「……それで、何を確かめる気だ」


アレクは一瞬、言葉を選び、

はっきりと答えた。


「その悪魔族が、

 本当に“無差別の脅威”なのかどうか」


王はしばらく黙り込んだ。


やがて、冷たい声で告げる。


「……よかろう」


「行け、アレク」

「だが忘れるな」


「聖王国は、悪魔族を信用しない」

「討伐対象であるという前提は、変わらぬ」


アレクは深く頭を下げた。


「……承知しました」


王の間を後にしながら、

アレクは心の中で思う。


(もし、

 あの悪魔族が“ただの悪”でないなら――)


(それを確かめるのは、

 王子である俺の役目だ)


こうして、

討伐という名の調査が始まった。

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