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レベル1の冒険者が世界の調停者になる  作者: pacifian
第1章 『レベルドロップ編』

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『小さな足跡、小さな涙』

旅路は乾いた風が吹き抜けていた。

リリィ、ルーナ、ガルド、そしてヴァロス──

四人は迅の行方を追い、

東の街道を進んでいた。


「迅……どこにいるの……?」


リリィが空を見上げる。

心は焦りと不安に揺れていた。


(あの日、迅は……

 “悪魔族”と一緒にいた。

 でも、理由も告げずに行ってしまって……)


ヴァロスが前を歩きながら言った。


「足跡を追うなら、街を回るのが一番だ。

 何か手がかりが掴めるかもしれねぇ」


ガルドが鼻で笑う。


「あいつ、色んな街で人助けでもしてるんじゃねえか……」


ルーナはそっと笑う。


「……放っておけない人よね、迅って」


その言葉に、リリィの胸が少しだけ温かくなった。


────────────────────────────


やがて四人は、

数日前に迅とルシェラが訪れた街に入った。


以前は重たい空気に満ちていた街並みが、

どこか明るくなっていた。


街の人たちが話しているのが聞こえる。


「冤罪の件、解決してよかったな」

「若い旅人が助けてくれたんだって」

「しかも悪魔族の女まで一緒に……?」


ヴァロスの眉がぴくりと動いた。


「……間違いない。迅のことだ」


リリィの鼓動が早くなる。


(やっぱり……迅は人を助けて旅をしている……

 悪魔族と一緒でも……“悪いこと”なんてしていない……)


その時、街角で遊んでいた子供が近寄ってきた。


あの少年。

父親の冤罪を晴らしてもらった、あの子だ。


「おねーちゃんたち、旅人さん……?」


「そうだよ!!」


リリィは優しく微笑む。


「少し、聞きたいことがあって。

 この街を助けてくれた旅人の話……教えてくれる?」


少年はぱぁっと表情を明るくした。


「うんっ! その人ね、すごかったんだよ!」


少年は勢いよく語り始めた。


「みんながお父さんを悪いって言うのに、

 助けてくれたんだ……!

 それに……」


少年は崩れた瓦礫の方を見た。


「悪魔族のお姉ちゃん……

 最初は怖かったけど……すごく優しかったんだ」


リリィたちは息を呑む。


「あの時ね、瓦礫が落ちてきて……

 僕に当たりそうだったの。

 そしたら──

 “悪魔のお姉ちゃんが、助けてくれた”んだよ!」


ルーナが目を丸くする。


「悪魔族が……人間を守ったの?」


少年は力強くうなずいた。


「うん!

 僕……悪者は悪魔族だって、お姉ちゃんにひどいこと言っちゃって……

でも許してくれた!!」


ヴァロスがポツリと言う。


「悪魔族が……そんな行動をするなど……

 昔では考えられん。

 迅に何か……影響されたのかもしれんな」


リリィは胸の奥がぎゅっと締めつけられた。


(……悪い存在じゃない?

 迅は……そんな人を信じて一緒に旅をしているの?)


ガルドが腕を組む。


「オレさぁ……

 あの銀髪の悪魔族、てっきり迅を利用してるのかと思ってたけど……

 話を聞く限り、そんな風にも見えねえな」


少年は続ける。


「それにね……旅人のお兄ちゃん……

 すっごく優しかった。

 僕の涙を拭いてくれて……

 “お父さんを信じていい”って言ってくれた」


リリィの目が潤む。


(……やっぱり迅は、変わってない……

 むしろ、もっと優しく……もっと強く……)


ヴァロスがリリィの肩に手を置く。


「どうする? リリィ。

 迅を“追う”のか、それとも──」


リリィは顔を上げた。

迷いを断ち切るように、強い瞳で言う。


「……追います。

 迅は……きっと理由があって、私たちから離れた。

 でも、私は信じたい。

 どれだけ離れても……迅が悪い人になるはずないって」


ルーナもうなずいた。


「私も行くわ。迅は……仲間だもの」


ガルドも拳を鳴らす。


「へっ、最初からそのつもりだぜ」


ヴァロスは静かに言った。


「……よし。

 “迅が残した足跡”を追う旅を続けよう。

 あいつはきっと、真っ直ぐ進んでいる」


少年がリリィに小さな花を渡した。


「お姉ちゃん……これ。

 旅人のお兄ちゃんにも……渡してあげて。

 “ありがとう”を伝えたいの」


リリィはそっとその花を胸に抱いた。


「……うん、必ず渡すね」


こうして──

リリィ隊は再び迅を追う旅へ歩き出した。


その背には、

小さな少年が見送る声が響く。


「旅人のお兄ちゃんやお姉ちゃんに、また会いたいな……!」


その声が風に乗り、東へと流れていった。

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