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レベル1の冒険者が世界の調停者になる  作者: pacifian
第1章 『レベルドロップ編』

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『神殿暗殺部隊襲来』


グラドたちの村から離れてまだ数時間。

森の中を歩きながら、迅はつぶやいた。


「守れてよかったな、子ども」


ルシェラは素っ気なく返す。


「……別に。あの泣き声が嫌いなだけ」


フォルが尻尾を振り、

“それは嘘だよ”とでも言いたげだった。


──その平穏を、裂くように。


空気が一瞬、張りつめた。


「止まって、迅!」


ルシェラが叫ぶと同時に、

何十本もの短剣が樹々の影から放たれた。


迅はルシェラの肩を掴んで跳躍。

地面に突き刺さった短剣が光を反射し、森が一瞬、白く照る。


フォルが牙を剥き、影の奥へ威嚇した。


黒い鎧。

同じ紋章。

同じ動き。


──神殿の暗殺部隊。


その中心で、痩せた男が一歩前に出た。

鋭い頬。濁った目。

冷たい刃そのもののような雰囲気を纏う。


「黒髪の青年・迅。

 そして悪魔族ルシェラ。

 神殿の名において──討伐する」


迅は剣に手を添えつつ言う。


「待ってください。

 俺たちはあなたたちと戦う理由が──」


男は嘲り笑った。


「理由?

 理由は“判定”だ。

 我々の神判定ではお前は深い黒。即処分対象だ」


迅は眉をひそめる。

心のどこかでひっかかる。


(黒……?)


そんな判定が自分につくはずがない。

そして、すぐに気づいた。


(……この男、嘘をついている)


迅はそっと指を胸元へ翳した。

淡い光が広がり、スキルが起動する。


「《善悪判定》──対象:部隊長」


空気が震え、数字とは違う“精神の色”が立ち上る。


──【判定:極悪(黒)】

──【本質:虚偽/搾取/売買/恐怖の果実】


さらに奥底から、像が浮かび上がる。


──暗殺部隊を使った“子どもの連れ去り”

──悪と判定が出ていない子どもまで誘拐

──奴隷商へ売り飛ばす


迅の拳が震えた。


(……こいつ……)


スキルが示した“揺るぎない悪”。

逃げ場のない黒。


迅は剣をゆっくり抜いた。


ルシェラが息を呑む。


「迅……?」


迅は低く言った。


「お前は、許さない。」


「……何を……言っている……」


迅は一歩前へ。


「神判定を偽装し、

 “悪ではない子ども”まで売っていた。

 俺は見た。スキルは嘘をつかない」


部隊長は歯ぎしりしながら叫ぶ。


「うるさい!!

 お前ら! 全員かかれ!!」


暗殺部隊たちが一斉に跳躍。

だが迅は剣を逆手に持ち替え、


「邪魔をするなッ!!」


一閃。


斬ったのではない。

剣の“峰”で急所だけを正確に叩き、

次々と暗殺者たちが地面に沈んでいく。


「ぐっ……!」「速すぎる……!」


迅は殺さない。

寸前で刃を返し、気絶だけを狙う。


ルシェラは驚愕した。


(迅……怒っているのに……人を殺さない……

 どうして……そんな戦い方ができるの?)


フォルも低く唸りながら、迅の背を守るように並ぶ。


やがて残ったのは、部隊長ただ一人。


「ま、待て!! 話し合おう!!

 私はただ命令に従って──」


迅は冷ややかに告げた。


「《判定》は、命令のせいにはできない。

 お前の“本質”は、真っ黒だった」


部隊長は後ずさり、逃げようとする。


「ひっ……!」


迅が踏み込んだ。


「逃げるな。

 お前が奪った子どもたちも、逃げられなかった!!」


──剣と剣がぶつかる鋭い音。


部隊長は素早い。

暗殺者らしく、影のようなステップで迅の首を狙う。


だが迅は剣を返し、受け流し、

逆に懐へ飛び込む。


「お前の刃には……救いがないッ!!」


二撃、三撃。

迅は正確に“隙”だけを潰していく。


部隊長は焦りで足を乱し、

その瞬間──


迅の剣が走った。


──ザシュッ!!


静寂。


部隊長の胸に深い傷が入り、男は崩れ落ちた。


迅は剣を収めながら、目を閉じる。


「……お前を救う道は、どこにもなかった。

 だから、裁いた」


ルシェラは、初めて見る迅の横顔に息を飲んだ。


(優しい迅が……怒ってる……

 “子どもを守るため”に、本気で怒ってる……)


フォルがそっと迅の手に鼻先を触れる。

迅は微かに笑い、剣を拭った。


「行こう。

 まだ……助けられる命があるはずだ」


ルシェラは静かにうなずいた。


「……ええ。

 あなたが剣を抜いた理由……

 少しだけ、わかった気がする」


その声は、どこか震えていた。


迅は部隊長の亡骸を見届け、

森の光の中へ歩き出した。

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