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レベル1の冒険者が世界の調停者になる  作者: pacifian
第1章 『レベルドロップ編』

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『反逆の盗賊長』

冤罪を解決した迅たちは、次の街に向かって歩みを進めていた。


険しい岩山を抜けた先に、

風の流れが急に変わった。


フォルが耳を立て、低く唸る。


「……敵の気配?」


迅が剣に手を添えると──

矢が一本、地面に突き刺さった。


「動くな!」


岩陰から十数人の盗賊が現れる。


皆ボロ布のような鎧を纏い、傷だらけの顔。

だが、その目には妙な光があった。


「旅人か……悪いが、この先は通さねぇ。命が惜しいなら戻れ」


ルシェラは冷たい声で言い返した。


「盗賊風情が道を塞ぐつもり?

 邪魔なら払うわよ」


殺気が走る──はずだった。

しかし、その刹那。


フォルが突然前に出て、

低く、だが敵意のない唸り声を放った。


盗賊たちがざわめく。


盗賊の中心にいる大柄な男が一歩前へ。


「……来た道を戻るなら危害を加えるつもりはない。」


褐色の肌、鋭い眼光。

腕には何重もの傷跡。

“悪党の風貌”としては申し分ない。


だが迅は違和感を覚えた。


(……この男、嘘の匂いがしない)


盗賊長の男はじっと迅を見据えた。


「お前たち。……何しにここへ来た?」


迅は素直に答えた。


「通りすがりだよ。

 ただ、困ってる人がいれば助けたいだけだ」


盗賊たちは嘲笑した。


「はっ! 嘘をつくな!」


「どうせ俺たちを討伐しに来たんだろ?」


だが盗賊長だけは笑わなかった。


「……その言葉、嘘じゃねぇな」


迅は静かに歩み寄り、盗賊長の目を見つめる。


「あなた……“善”ですね」


盗賊たち全員が凍りついた。


盗賊長は驚きに目を見開く。


「……何?」


「あんたの目は人を護ってる目だよ。

 それに、この山道には罠が多かったけど、

 “人を殺す罠”は一つもなかった」


盗賊長は息を吐いた。


「……チッ、見抜く奴がいるとはな」


ルシェラが前に出て言う。


「どういうこと?

 あなた達は街道を荒らす“盗賊”ではないの?。」


盗賊長は苦い表情で岩に腰を下ろした。


「……俺たちは盗賊じゃねぇよ。

 昔は村人だった。

 だが神殿の“神判定”で村長が悪扱いされて、村全体が危険視されたんだ」


迅は息を呑む。


「……神判定……」


盗賊長は悔しそうに拳を握った。


「俺たちは追放され、住む場所も食料も奪われた。

 生きるために“盗賊のフリ”をするしかなかっただけだ」


ルシェラは眉を寄せる。


「じゃあ……嘘で塗り固められた“偽の悪”ってわけね」


盗賊長はルシェラの方を見た。


「お前は……魔族か?

 本当に悪いのは“恐怖した連中の方”じゃねぇのかって思う時もある」


その言葉にルシェラの瞳が揺れた。


(……魔族だから悪い、と言われ続けてきた自分と同じ)


迅は盗賊長へ歩み寄った。


「あなたたちを救いたい。

 誤解を解いて、元の生活に戻れるように」


盗賊長は鼻で笑った。


「……馬鹿な奴だな。

 そんな簡単に戻れるわけねぇだろ」


迅は微笑んだ。


「簡単じゃなくても、やってみる価値はあるよ」


盗賊長の顔に、しばらく消えていた“人の色”が戻った。


「……名前を聞いておこうか、旅の青年」


「迅。そして──」


ルシェラとフォルを振り返る。


「ルシェラとフォルだ。」


盗賊長は立ち上がり、手を差し出した。


「俺はグラド。

 盗賊“長”なんて呼ばれてるが、

 ただの不器用な村の兄貴分だ」


迅はその手をしっかり握った。


「よろしく、グラドさん」


ルシェラは腕を組んだまま、呟く。


「……悪に見えても事情がある、か。

 人間は本当に面倒ね」


フォルがワン、と鳴く。

その声は、まるで──


“それでも信じてもいいんだよ”


と言っているようだった。

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