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レベル1の冒険者が世界の調停者になる  作者: pacifian
第1章 『レベルドロップ編』

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『不穏な影』

聖王国レイフォード──

大理石の白い城壁が陽光を受け、黄金のように輝いている。


しかし城内に流れる空気は、

その光とは正反対に冷え切っていた。


王アレクシオン三世が治めるこの国は、

平和が保たれているようで、実際は

“恐れによる支配” で形を保っている。


王城の会議室。


重厚な扉が開き、

国王アレクシオンが姿を見せると

その場の空気がさらに張り詰めた。


「……報告を聞かせよ」


深い声が響く。


軍務大臣、近衛騎士団長、諜報司令が並び、

一人が震える手で書類を差し出した。


「陛下。

 本日、ギルド支部より緊急報告が届きました。

 街に“上位と思われる悪魔族”が出現したとのことです」


会議室がざわついた。


「上位……? 本当にか?」


「はい。

 複数の目撃者が“人型で長い銀髪の悪魔”を確認した、と」


国王の眉がわずかに動く。


「その悪魔は何をした?」


「……街の冒険者を圧倒し、

 ギルド長をも震え上がらせたとのこと。

 同行していた若い男は追放処分にされたそうです」


近衛団長が苛立ちを抑えきれず言い放つ。


「悪魔と共に現れる人間──

 これは洗脳か、あるいは裏切り者です!」


「その可能性は高いでしょうな」


軍務大臣が頷く。


「街レベルでは判断がつかず、

 ギルド側も“危険度不明の脅威”として王国へ報告してきたようです」


国王はゆっくり椅子へ腰を下ろした。


「……悪魔族とは、長い間沈黙していたはずだ。

 なぜ今になって姿を現す?」


誰も答えられなかった。


だが“恐れ”は確かに広がっていた。


国王アレクシオンの声が落ちる。


「悪魔の脅威を放置すれば、民心は乱れる。

 敵が姿を見せたからには──王が討たねばならん」


その口調には

民を守るためではなく、支配を強化するための意思

がにじんでいた。


「近衛を中心に“悪魔討伐隊”を即刻編成せよ」


「ははっ!」


近衛団長が胸に拳を当てる。


「銀髪の悪魔──

 その者を発見し次第、討伐あるいは拘束いたします。

 同行していた人間も“共犯者”として処分対象とします」


国王は満足げに目を細めた。


「よい。

 民を不安にさせる影は、早期に刈り取れ」


軍務大臣が補足する。


「噂によれば……悪魔は女の姿をしていたとか」


「女だろうと関係ない。

 悪魔ならば悪だ」


国王の決意は冷たく、疑う余地もない。



諜報司令が別の文書を広げた。


「また、目撃証言には続きがありまして……

 “悪魔を庇い、肩を並べて歩く青年がいた”とのこと。

 剣士風の男で、街のギルドでは有能と見られていたようです」


近衛団長が鼻を鳴らす。


「有能かどうかは関係ない。

 悪魔と共に行動する者は──危険思想の持ち主だ」


国王は静かに頷いた。


「討伐隊は、悪魔と青年の両名を追え。

 生死は問わない」


重く、冷たい命令が下される。


その瞬間、

迅とルシェラの運命が、聖王国と正式に敵対する道へ進んだ。



会議が終わる頃、

国王は窓の外の夜空を見上げてつぶやいた。


「銀髪の悪魔か……

 本当に存在するとはな」


そこに

憐れみも畏れもない。


あるのはただ──

支配者としての“排除すべき影”を見る目だけ。


その夜、王城の塔から、

討伐隊出立の号鐘が鳴り響いた。


湖畔で静かに過ごしていた迅とルシェラへ、

まだ届かない不穏な音。


だが確実に、

二人への包囲網は動き出していた。

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