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レベル1の冒険者が世界の調停者になる  作者: pacifian
第1章 『レベルドロップ編』

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『リリィ隊、追跡開始』

ギルドの朝は、いつもより静かだった。


先日の、迅が“悪魔族と共に追放された”という噂が、

街中に広がったからだ。


リリィはギルドの扉を乱暴に押し開けた。


「……迅を探しに行く!」


宣言のような声に、

ガルドとルーナが同時に跳ねるように立ち上がる。


「お、おいリリィ!? 本気かよ!」


「気持ちはわかるけど……危険すぎるわよ!」


リリィは肩を震わせながら振り返った。

目には眠れなかった証拠の赤みが残っている。


「……迅があんな顔で出ていくなんて、絶対おかしい。

 悪魔族といたのも……何か理由があるはず。

 私は……迅を信じたい!」


溢れそうな涙をこらえながら、

リリィは胸に手を当てた。


その時だった──


「だったら、俺も行く」


ギルドの入口から、低い声が響いた。


白髪の男──ヴァロスが立っていた。


訓練用の木剣ではなく、

長年使い込んだ本物の剣を腰に提げて。


「ヴァロスさん……!」


ガルドが驚く。


ヴァロスはゆっくり歩き、

リリィの前で止まった。


「迅に剣を教えたのは俺だ。

 あいつがどんな奴で、何を大事にしてるか……よく知ってる」


その表情はいつになく柔らかい。


「迅は……弱者を見捨てることだけは絶対にしねぇ。

 あいつが悪いことをするなんて……ありえない」


リリィの胸が熱くなる。


(やっぱり……迅を知ってる人は、誰も疑ってない……)


ヴァロスは続けた。


「それに……あいつは無茶をする。

 誰かを守ろうとして、すぐ自分の命を投げ出す。

 あのまま悪魔族と二人きりで放っておいたら……絶対に危ない」


ルーナが息を呑んだ。


「……確かに。

 迅って、……どこか危なっかしいのよね」


ガルドも頷く。


「昔、遺跡の魔犬からリリィ守るためにボロボロなってたよな……」


リリィは顔を伏せた。


(迅は……いつも誰かを守る側で、自分を誰かに預けようとしない。

 だから今度は……私が迅を守る番だ)


拳をぎゅっと握る。


「行こう! 今すぐ!」


その強い言葉に、ヴァロスが微笑む。


「言うと思ったよ」



ギルドの外へ向かう途中、

ルーナが声をかけた。


「ねぇリリィ……

 迅はどうして悪魔族と一緒にいたのかしら?」


リリィは足を止め、

朝の光の中でそっと目を閉じた。


「わからない……けど迅は……

 いつも本気で、誰かのために動いてる」


ギルドをでた迅の背中。

震える声でリリィの名前を呼んだあの表情。


そして、彼の後ろに立つ銀髪の悪魔族を守るような立ち振る舞い。


「たとえ相手が悪魔族でも、迅はきっと……理由を聞いて、守ろうとする。

 そんな人だから……信じたいって思えるの」


ルーナは思わず微笑んだ。


「……リリィ、ずっと見てきたのね。迅のこと」


ガルドは照れ隠しのように鼻を鳴らす。


「お、おう……まあなんだ……

 迅はいい奴だ。そこは間違いねぇよ」


ヴァロスは三人のやり取りを見て、

ゆっくりと街の出口を見つめる。


「……迅。

 お前を独りで行かせねぇぞ」


彼の声は、どこか父親のように優しかった。



四人は山道へ向かい、歩き始めた。


リリィの胸の中には、不安も、恐怖もある。

でも──

それ以上に、大きな決意が芽生えていた。


(迅……私たちは必ず追いつくから。

 あなたを一人にしないって、決めたんだから)


風が吹き、

リリィの髪が揺れる。


そして、四人の影は山道へと吸い込まれていった。

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