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レベル1の冒険者が世界の調停者になる  作者: pacifian
第1章 『レベルドロップ編』

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『死闘の末に』

 最下層の闇に、迅の足音が響いた。

 ヴァロス教わった守る剣――

 上級ダンジョンでの戦いでさらに洗練されていた。


(……強くなったんじゃない。

 思い出したんだ……体が、本来の動きを)


 レベルドロップで全回復した身体は、

 迅がまだ見たこともない速度で動く。


 ――ガァアアアアッ!!


 最初に飛び出したのは、二足歩行の巨獣。

 棘のような骨が腕から突き出している。


 その腕が振り下ろされる瞬間、

 迅は剣を横へ滑らせた。


 ――キィィインッ!!


 火花が散り、骨の刃が弾かれる。

 バランスを崩した巨獣の胸へ、迅は踏み込んだ。


「これで……ッ!」


 剣が、骨の隙間へ吸い込まれた。


 一閃。


 ――ドシュッ!!


 巨獣の体が大きくのけぞり、崩れ落ちる。


――ピコンッ

【レベルが10上がりました】


「……ッ!」


 全身が再び熱を帯びる。

 力が、魔力が、速度が――上がっていく。


 だが、群れは止まらない。



 今度は、蜘蛛のような魔物が壁を這い回りながら迫る。

 毒の針を射出してくる。


「くっ……!」


 迅は床を蹴り、低く転がる。

 背後の岩が針で砕けた。


(この速さ……前の俺じゃ絶対に避けられなかった)


 反撃の一歩。

 跳び上がる。

 剣を振り下ろす。


「はあああッ!!」


 ――ザシュッ!!


 黒い体液が弧を描き、魔物が落下する。


――ピコンッ

【レベルが12上がりました】


 また上がった。

 呼吸が、魔力が、研ぎ澄まされていく。


「……いける……!」


 迅の目が輝きはじめる。



 次の瞬間、十数体の魔物が一斉に動き出した。

 狼型、甲殻型、触手型――この階層で生き残った猛者たち。


 一匹でも強敵。

 それが群れとなって押し寄せる。


 迅は奥歯を噛みしめた。


「来いよ……全部まとめて相手してやる!」


 剣を構え、真正面から突っ込む。



 剣が閃き、魔物が倒れ、

 そのたびに迅の身体が強化されていく。


――ピコンッ

【レベルが15上がりました】


――ピコンッ

【レベルが10上がりました】


 息が荒くなる。

 汗が飛び散る。

 だが、迅の動きは止まらない。


(こんな……感覚……初めてだ……!)


 剣を振るうたびに、筋肉が軽くなる。

 視界が広がる。

 魔物の動きが読める。


 手応えだけは、どれだけ強くなっても――

 痛いほどわかった。


「まだだ……《レベルドロップ》ッ!!」


――光。

――全回復。

――ステータス不変。


「次だッ!!」


 迅は光の中から飛び出し、

 次の群れへ突進した。



 魔物が咆哮を上げる。

 牙が迫る。

 触手が襲う。


 すべてが――遅く見えた。


「……終わりだ!!」


 閃光のような踏み込み。

 剣が描くは、一直線の軌跡。


 まとめて五体を両断した。


――ピコンッ

【レベルが75上がりました】


 経験値が、一気に流れ込む。

 全身が震えるほどの高揚に包まれた。


「は……はは……!」


 笑ってしまう。


 強い。

 圧倒的に。


 数十分前まで“死ぬだけの場所”だった最下層が、

 もう迅にとって恐怖ではなかった。



 そして――。


 最後の魔物、

 巨大な牛のような魔物が突進してきた。


 地を揺らすほどの一撃。

 普通の冒険者なら触れるだけで死ぬ。


 しかし迅は、剣を肩に軽くかけた。


「ありがとう。

 俺を……ここまで強くしてくれて」


 踏み込みは一瞬。


 最下層の地面がひび割れた。


「――行くぞォッ!!」


 閃光。


 たった一撃。


 魔物の巨体が、真っ二つに裂けて倒れた。


――ピコンッ

【レベルが18上がりました】


 静寂。


 迅は深く息を吸った。


(……こんな世界があったのか)


 最下層の魔物――

 本来なら冒険者の死地。

 そのすべてを迅は、自力で踏み越えた。


 誰に頼らず。

 誰に助けられず。


 ただ、己の力と――

 “最弱だった自分”と向き合いながら。


 迅は剣を振り、血を払った。


 目はもう、死地ではなく――

 次の戦い を見据えていた。

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