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第12話 初めてのパーティ配信

 奈落魔狼が唸る。


 低く。


 獰猛に。


 赤い目が闇の中で揺れていた。


 アルトは拳を握る。


 ミナは後ろで震えている。


『新人、囲まれてる』

『四方向』

『普通に詰み』


「普通に言うな普通に!!」


 魔狼が跳んだ。


 一匹目。


 速い。


 だが。


【《危機察知》発動】


 アルトは紙一重で避ける。


 そのまま酔拳の妙な動きで懐へ潜る。


「うおらぁ!!」


 拳。


 ズゴッ!!


 魔狼の顔が吹き飛ぶ。


『うおおお!!』

『核入った』

『新人マジで殴り合うな』


「武器がねぇんだよ!!」


 だが次の瞬間。


 背後。


『新人後ろ!!』


「っ!」


 二匹目。


 牙が迫る。


 避けきれない。


 その瞬間。


「《ヒール》!!」


 淡い光。


 ミナの魔法陣が展開される。


 アルトの身体が軽くなる。


【《小回復》】

【《疲労軽減》】


「うおっ!?」


 身体が動く。


 アルトは無理やり回転した。


 牙が頬を掠める。


 ギリギリ。


『回復うまっ』

『ミナちゃん有能』

『支援適性高いな』


 ミナは涙目で叫ぶ。


「む、無理ですぅぅぅ!!」


「めちゃくちゃ仕事してる!!」


 アルトは思わず叫び返した。


 その時。


 コメント欄に、

 妙な通知が流れる。


【神界切り抜き】


《初パーティ配信、開始三分で修羅場》


再生数:12,402


「切り抜き早すぎだろ!!」


『職人が寝てない』

『今神界最速コンテンツ』

『新人バズりすぎ』


 魔狼が再び飛びかかる。


 三匹同時。


「うわ無理!!」


 アルトは咄嗟に近くの岩を掴む。


【《鬼握力》発動】


 岩が砕けた。


「だから加減!!」


 飛び散った岩片が、

 偶然魔狼の顔へ直撃する。


『草』

『もう何でもあり』

『物理配信者』


「配信者言うな!!」


 だが。


 その時だった。


 奥の闇。


 そこから、

 巨大な気配が現れる。


 ズシン。


 ズシン。


 地面が揺れる。


『あ』

『終わった』

『ボス犬だ』


「雑魚戦じゃなかったの!?」


 闇の奥から現れたのは、

 明らかにデカかった。


 五メートル級。


 漆黒の毛並み。


 頭が二つある。


【奈落双頭狼】


 ミナが絶望顔になる。


「第二層の中ボスです……!」


「中ボス!?」


『新人、配信映えしてきたな』

『観測神ニッコニコ』


 アルトは頭を抱えた。


「喜ぶなあの仮面野郎!!」


 双頭狼が咆哮する。


 空気が震える。


 雑魚狼たちも一斉に動いた。


「うわ来たぁぁぁ!!」


 乱戦。


 アルトは必死に避ける。


 殴る。


 転がる。


 叫ぶ。


 ミナは後ろから必死に回復魔法を飛ばす。


『うおおお!!』

『めっちゃ連携してる』

『新人パーティ適性あるな』


「適性とか今どうでもいい!!」


 その時だった。


 双頭狼の片方が、

 ミナへ向きを変えた。


 赤い目。


 完全に獲物を見る目。


『ミナちゃん狙われた』

『やば』

『回復役から潰しに来た』


 ミナが固まる。


「っ……!」


 動けない。


 双頭狼が跳ぶ。


 巨大な牙。


 迫る死。


 アルトの頭が真っ白になる。


 気づけば。


 身体が勝手に動いていた。


「ミナァァァッ!!」


 轟音。


 アルトがミナを突き飛ばす。


 代わりに。


 双頭狼の牙が、

 アルトの肩へ食い込んだ。


「――ぁ、がっ!?」


 鮮血。


 激痛。


『うわぁ!?』

『新人!!』

『かばった!?』


 アルトの顔が歪む。


 痛い。


 めちゃくちゃ痛い。


 でも。


 ミナは無事だった。


 ミナが涙目になる。


「な、なんで……!」


 アルトは痛みに顔を引きつらせながら笑う。


「……後衛は守るもんだろ」


 一瞬。


 コメント欄が止まった。


 本当に。


 完全に。


 そして。


【神界同時接続数:12,907柱】


 数字が、

 一気に跳ね上がった。


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