消えた獣人の行方
「部屋の中に、魔力の残骸は多少は残っているけど……」
シルルが部屋の中を隅々まで見渡している。だけど、私の目には普通の部屋に見える。荒らされている様子もないため、五人も消えたようには見えない。
「……わかるのはエメルと、もう一人の……魔力だけ」
二人の魔力は少し前に起きた爆破で感じ取った魔力と同様のものだった。シルルはその事をそのままヴィルグに報告すると、彼は顔を顰めた。その様子を私は見ている事しかできなかった。
「ニーナ、ルイス。行くわよ」
シルルが私達に声をかけた。そのため、彼女の後について行こうとした時だった。目の端にきらりとした物が見えたのだ。しかし、それは私だけではなかった。繋いでいる手が引かれたのだ。
「ルイス?」
ルイスも同様の物が見えたのだ。そのため、二人して彼女の後ではなく、部屋の本棚の隅の方へと移動した。
「何これ?」
私達が見つけたのはまるでサイコロのような物だった。面には見た事がない文字? 模様が彫られていた。
サイコロ……? でも、私の世界の物と少し違う。何の文字? 模様? 見た事がない。
「あっ! ルイス!」
それをルイスが手に取ったのだ。
「勝手に触ったら、駄目だよ」
「ただの石だ」
そう言って、私にそれを渡してきた。そのまま受け取った私もだけど、しっかりとそれを眺めた。六面全てに模様が彫られている。
「ニーナちゃん、ルイス? 行くよー」
先に行っていたサキがいつまで経っても来ない私達を見にきた。
「あっ! ごめんなさい!」
私はこれをシルルさんに見せた方がいいと考えて、それをポケットにしまった。
「行こう。ルイス」
「ああ」
そして、私達はすぐにサキの後を追いかけた。
「二人とも、俺達の側を絶対に離れないでね」
笑顔でそう言った彼だが、その目の奥は笑っていなかった。
「ごっ、ごめんなさい……」
「あっ! 怒ってないからね! 俺は、心配しているだけだよ」
「大丈夫。わかってるよ」
彼自身、この船の中を警戒しているのだろう。特に獣人が五人も消えたのだから。一体、この船の中で何が起きているのかわからない。
エメルさん……貴方は一体、何をしたの? それに、今、どこにいるの?
私はエメルがいなくなる前に見せた悲しそうな表情を思い出した。
「アカツキ達が何処に消えたかだが……」
ヴィルグの執務室に集まった私達。だが、その問いに答えられるものは誰一人いない。その時だった。部屋の扉がノックされて彼が返事をする前に開いた。
「リーダー! 話は聞いたわ!」
そこにはアイミーが本を一冊手に持っていた。
「アイミー?」
そして、私達の方にやってくると、机の上に本を置いた。
「これは?」
ヴィルグの問いにアイミーはウィンクをしながら答えた。
「シオンに頼まれて探したこの国の地図よ!」
「地図にしては分厚いな」
確かに、凶器にもなりそうな分厚さだ。
「あらあら。ただ、分厚いだけじゃないわよ。時計の塔の設計位置。そして……地下通路まで描かれているのよ」
「シオンに頼まれたからって、良く見つけたな……」
ヴィルグの言う通りだ。私も、それは大事に保管されてそうな物のように見える。
「私も探す前はそう思っていたのよ。シオンにだって、難しいって言ったわよ。だけどね……古本屋で見つけちゃった!」
ええ⁈ そんな簡単に見つかる物なの?
「……偽物の可能性は?」
ヴィルグは本に触れながら、パラパラと軽くめくった。
「シオンに確認すると、久しぶりに興奮しながら、本物だ! って騒いでいたから、本物だと思うわ」
先程から名前が出ているシオン? さんは誰なんだろう? そんな私の問いにサキが答えてくれた。
「シオンはこの船の学者かな? 彼も獣人だよ」
「へえ……。獣人?」
「そうだよ。シオンはナマケモノなんだ。そして……消えた五人のうちの一人だよ」
「あっ……」
私はそれを聞いて彼に何も言えなかった。ただ、私にできる事は、彼の手を強く握り締める事だけだった。




