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心配

 ルイスと共に本を読んでいると、開かなかった筈の扉が勢いよく開いた。それも、大きな音を立ててだ。そのせいで、私の心臓が大きく跳ねたと同時に尻尾の毛を逆立てた。それはルイスも同様で身体が大きく反応していた。二人で急いで扉の方を確認した。


「ニーナ! ルイス!」


 だが、扉の先にいたのは珍しく大きな声で名前を呼ぶシルルだった。


「えっ? シルルさん?」


 私達は焦った様子の彼女に目を見開いて驚いた。しかし、その様子から只事ではないと感じた私達はベッドから降りて彼女の側へと駆け寄っていく。


「どうしたの? 大丈夫? 何かあった?」


 私の言葉に彼女は安堵した様子を見せた。そして、首を横に振った。


「…………何でもないわ。大丈夫よ」


 大丈夫じゃないよね? 明らかに可笑しいと思う。そう思っていると、すぐに彼女の後ろからサキが顔を出した。


「ニーナちゃん達は大丈夫?」


「サキさん?」


 彼もシルル同様に安堵したように見えた。二人の様子から私達は船の爆破以外に何かが起きた事を察した。


「……一体、何が起きたの?」


 その言葉にシルルは答えようとしない。そのため、視線を彼女からサキに向けた。だが、彼はチラリとシルルを見て、言うか言わないかと迷っていた。


「サキさん! 教えて!」

「答えろよ」


 私達の言葉にサキは小さく息を吐くと、シルルに声をかけた。


「シルル姉さん。二人にも伝えておくべきだと思うよ。勝手に船の中で聞き込みを始めそうな勢いだもん」


 彼の言う通りだ。何が起きたのか教えてくれないなら、この後にヴィルグの元へと向かうつもりでいた。


「ふぅ……わかったわ……」


 そして、アカツキ達を含めた獣人達が自分の意思に反して獣化してしまった事について聞いた。


「俺達のように勝手に獣化したなら、そいつらも魔力を含んだ薬草を食べたのか?」


 ルイスの言う通りだ。私達もこの船に乗る前に意思に反して獣化した。アカツキ達も同様の事が起きたのではないのだろうか?


 だが、サキはその言葉に首を横に振った。


「昨夜の料理を作ったのはジンだよ。ジンがそんな事をするとは思えない。それに、ニーナちゃん達は獣化していないからね。ルイスの線はかなり薄いと思うよ。俺はね、獣化前の状況の方が怪しい気がするんだ」


 確かにそうだ。魔力が含まれた薬草を食べたなら、私とルイスも獣化していないとおかしい。


「獣化前の状況って?」


 私の問いにサキはアカツキから聞いたまま、私達に説明した。


 光に煙? その後に獣化って……。


「……魔法ね」


 ずっと、黙っていたシルルが話に入ってきた。それと、同時に開いた扉からヴィルグが顔を出した。だが、彼の表情はどこか焦った様子だった。


「ニーナ達は無事か?」


 そして、彼の視線が私達を捉えると、安堵していた。


「リーダー。アカツキ達は?」


「…………見当たらない」


「はっ?」


 ヴィルグの言葉が信じられないのか、サキの目が僅かに揺れた。


「見当たらないって? 部屋から移動したわけじゃ……」


「探して見たが、アカツキは見つからなかった。それに……サキ、あの部屋には他に誰がいたんだ?」


「誰って……ジンにネズミの双子にナマケモノ……」


「シオンなら、部屋から出ないだろう」


 シオンという人が誰なのかはわからないが、ネズミかナマケモノのどちらかだろう。


「…………あの数分で消えるって……」


 いつも飄々としているサキが呆然としていた。


「そこでだ。エルフの姉さん。あんたの力を借りたい」


 シルルさんの力?


「…………わかったわ」


 すると、彼女は私達に視線を向けた。


「貴方達は……」


「いっ、一緒に行く」

「一緒に行くから」


 ルイスと言葉が被った。そして、ルイスは私の手を握り締めた。


「シルルが駄目だって言われても、俺達はついて行くからな」


「ルイス……。わっ、私達は……ほっ、本気だよ」


 絶対についていく。その意思をしっかりと彼女に伝えるために視線は絶対に逸さなかった。


「…………わかったわ。一緒の方が何が起きても対処できるものね」


 シルルの言葉に私達は顔を見合わせた。


「ニーナ。絶対に俺の手を離すなよ」

「わかった」


 そして、私達は皆でアカツキ達が消えたとされる部屋へと向かった。

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