表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
83/88

獣化の理由

 エメルは船に戻ってきていた。だが、爆破の犯人が自分だと勘付いているものがいるはずだと考えている彼は獣化して姿を背景に溶け込んだ。そして、誰にも気づかれないように船の中を移動していく。


「ユメルのため。ユメルのため……なんだよ」


 何度も自分に言い聞かせる。そうでなければ、実行できそうになかったからだ。頭の中でユメルとニーナの姿が重なった。すると、両手が震えた。罪悪感、懺悔、後悔など一気に色んな感情が押し寄せたのだ。


「……ユメルの……ためなんだ」


 もう一度、小さく呟いた時だった。前から歩いてくる人影が見えてすぐ様口を閉じて物陰に隠れた。姿は景色に溶け込んでいると言ってもサキのように気配で気づかれるかもしれないからだ。


「ほんま怪我人が少なくてよかった……」


「そうだね……」


 その言葉にエメルは安堵した。いつの間にか手の震えは止まっていた。そんな彼の目に映ったのはフワフワの大きなクマだった。彼らが通り過ぎるまでその姿を目に焼き付けるように映していた。


「ああ……この船は……お嬢さん達以外の獣人も乗っているんだった」


 エメルはニーナ達二人の幼い獣人だけをずっと目に捉えていた。だが、彼らの姿を見て思ったのだ。標的を幼い獣人ではなく、大人の獣人にしようと。

 エメルはポケットから小さな魔道具を取り出した。船に戻ってくるまでの間に自分の魔力を貯めていた。


「…………」


 だが、一瞬だけ確認するだけでそれを再びポケットに戻すと、もう一つの手のひらサイズの小さな魔道具を取り出した。これは、先程の爆破では使用していない物だった。


「…………人数を確認して、それから……」


 ブツブツと何かを呟いた彼は再び背景に溶け込むと、彼らの後について行った。


 姿が見えない上に船内は未だ混乱状態が続いていたため、エメルが付いてきていることに気がつかなかった。


 そして、エメルは先程確認したクマとそれ以外の獣人を見つけた。数人だけだが、大人の獣人だ。エメルは気を引き締めた。周りを見渡し、サキがいない事を確認した。気配が鋭い彼に見つかっては終わりだ。そのため、しっかりと部屋の中を確認した。


 エメルは爆破の魔道具ではなく、もう一つの魔道具を手にとり、魔力を流した。この魔道具はとある魔術師から受け取った物だった。その人物は幼い獣人を攫いやすくする物だと言っていた。エメルはその効果を知っている。そして、それとともに一枚の紙を取り出した。それには魔法陣が描かれており、一度きりしか使えないと教えられていた。


「使うのは……今」


 エメルの瞳は濁っていた。だが、その顔は覚悟を決めていた。


「…………」


 そして、一気に魔道具を作動させた。その瞬間、眩いほどの光が発せられた。


「なっ、なんや⁈」

「何が起きたの⁈」


 光で目がやられている間に、その部屋全体が煙に包まれた。そのせいで、部屋の中は一時的にパニックに陥っていた。だが、その瞬間だった。部屋の扉が開いたのだ。


「アカツキ、いる? えっ? この状況どうしたの?」


 そこにいたのはサキだった。扉が開いた事により、煙は薄くなり、部屋の中が見渡せた。


「え?」


 だが、部屋の中を見たサキは言葉を失った。何故なら、アカツキを含めた数人の獣人が獣化していたからだ。驚いたのは彼だけではない。


「なっなんで勝手に⁈」

「僕は元から獣化してたけど、皆んなはどうしたの?」


 ジンの言葉に獣化してしまった獣人達は困惑していた。アカツキを含めて、自らの意思で獣化したわけではなかったからだ。


「一体、何があったの?」


 サキの言葉にアカツキが説明した。急に光に包まれたと思えば、部屋中が煙に包まれ、気がつけば意思に反して獣化した事。


 サキの登場にエメルは息を潜めた。今、バレるわけにはいかない。その一心で呼吸さえ、必死に止めた。


「とりあえず、リーダーにすぐに伝えてくるよ!」


 ただ事ではないと感じたサキはそう言うと、すぐに部屋から出て行った。

 そして、彼が部屋から出て行ったことを確認したエメルは息を吸った。


「…………貴方達には申し訳ないけど……ユメルのためだから」


 そう呟くと、魔法陣が描かれた紙を取り出した。エメルが魔力を込めると、その魔法陣が淡い緑の光を帯びた。そして、次の瞬間に部屋の床に大きな魔法陣が描かれる。エメルが魔力を込めた紙と同じ魔法陣だった。


「なっ⁈」


 それは一瞬の出来事だった。驚いた瞬間には魔法が発動されたのだった。


「大丈夫か! 何が起き……たんだ…………はっ?」


 そして、ヴィルグがアカツキ達がいる部屋へと到着した時にはもう、エメルを含めた彼らの姿はなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ