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本当に甘い香り……?

「ニーナ」


 皆が集まっている場所へとヴィルグとエメルと共に向かっていると、後ろからルイスに声をかけられた。


「ルイス!」


 私はすぐに彼の元へと駆け寄った。


「羽は順調?」


「まあ……まだ、何とも言えない」


「そっか……」


 それもそうだ。元々、この国に寄った理由はルイスの羽の補助道具を作る材料を手に入れるためだ。そんなにすぐには完成はしないだろう。


「ニーナ。あの、緑色の奴は誰だ? 見た事がない」


 エメルを見たルイスは警戒していた。それに気づいたエメルは手を振った後に一気にこちらに距離を縮めてきた。


「坊や。初めまして」


 にっこりと微笑んだエメル。だが、ルイスに対して『坊や』は駄目だ。ほら、顔を顰めている。


「坊やじゃない」


「坊ちゃん?」


 エメル。そうじゃない、そうじゃないんだよ。そう言いたいが、私は口を閉じたままだ。


「違う!俺の名前はルイスだ。坊やとか坊ちゃんなんて呼ぶな」


「そうか。ルイスか! 俺の名前はエメルだ。ルイス

 、よろしく頼む」


 ルイスはエメルを睨みつけたが、彼は気にした様子はなく、むしろ微笑ましそうな顔で笑った。まるで、小さな子供の相手をしているようだ。まあ……彼よりも、私達は実際に小さいのだが。


「あれ? そう言えば、シルルさんは?」


「ミクリを叱ってる」


 一体何をしたのだろうか? 彼女はすぐにシルルに怒られている。


「話が終わったなら、行くぞ」


 ヴィルグの言葉に私とエメルは頷いた。


「ルイスも一緒に行こうよ」


「どこに行くんだ?」


 確かに、彼に何の説明もしていない事を思い出した。そのため、歩きながら、軽く説明した。


「獣人達が……?」


 ルイスは話を聞いて、少しショックを受けていた。彼の中で、この国の獣人は幸せに暮らしていると思っていたからだ。まさか、姿を消しているなど信じられないのだろう。


「もしかしたら……屋台で嗅いだ香りが獣人を誘っている可能性があるんだ」


「…………あの、変な匂いか」


「うん。なんか……甘い匂いだったよね?」


 その言葉にルイスは軽く首を傾げた。


「甘いと言うより……酸っぱい……果物の匂いじゃなかったか?」


 その言葉にエメルが反応した。


「確かに。俺も甘い匂いは一瞬で、柑橘……果物の匂いだった気がする」


「ええ⁈ 私は甘い匂いだったよ!」


 私達の会話を聞いていたヴィルグは足を止めた。


「ニーナ。お前が嗅いだ匂いは甘いんだな?」


「そうだよ」


「……ルイスとエメルは果物。それも、柑橘類の香りだな?」


 ヴィルグの言葉に二人は頷いた。


「嗅いだ者によって、匂いの感じ方が違う……そして、人には感じない匂い」


 ヴィルグはそのまま、考え込んでしまった。何か、思い当たることでもあるのだろうか?


「ヴィルグさん。とりあえず、皆んなの所へ、行こう」


 きっと、ヴィルグを待っているはずだ。そのため、考え込んでいる彼の手を引っ張った。


「ん? ああ……すまない」


 そして、四人で部屋に到着すると、そこには皆が集まっていた。


「シルルさん達はまだ、なのかな?」


 私は部屋の中を見渡して、彼女の姿を探した。


「……ニーナ、ルイス」


 すると、丁度、部屋に到着した彼女が声をかけてきた。そして、その彼女の後ろには意気消沈したミクリの姿があった。その様子を見て、私は苦笑した。


「アイミーに呼ばれたけど、何の騒ぎなの?」


 シルルは不思議そうに部屋の中を見ていた。


「シルルさん。それは……今から、ヴィルグさんが話してくれるよ」


「わかったわ」


 私とルイスはシルルの側に立ち、ヴィルグとエメルは皆んなを見渡せる場所へと移動した。だが、突然のエメルの登場で皆がざわついた。見た事がない者のため、警戒しているのだろう。


「静かにしろ! これから、皆に説明する!」


 ヴィルグの一声で部屋の中は静まりかえった。流石はヴィルグさんだ。そして、彼は皆を見渡すと、話し始めた。エメルが誰なのか、この国で何が起きているのか、そして、消えた獣人を見つけるために行動する事を話した。


「話は以上だ! これから、消えた獣人を見つけるために作戦を立てる!」


 彼の言葉に誰も抗議する者は現れなかった。ヴィルグが皆に信頼されているのもあるが、話を聞いた船員達はひどい話だと憤っていた。それに、早く助けてやろう! と話しているのを聞いて、この船の人達は優しく、いい人なんだと改めて認識した。

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