カメレオン③
ヴィルグの真下には獣化した彼の姿があったが、今はその姿はない。景色に溶け込んでいるのだ。
「この部屋にいる事はわかっている」
その声色は低い。そのため、ヴィルグを怖がって、彼は出てこない気がする。
「姿を消すな」
辺りを見渡す、ヴィルグに話しかけた。
「ヴィルグさん」
「ん?」
「あの、カメレオン。景色に溶け込むのが上手なんだよ」
「だからか……昨日、サキが見失っていたな」
「でも、気配は感じていたよね?」
私の言葉にピンと来た彼は笑った。すると、私の頭を勢いよく撫でた。
「ありがとうな」
私は何もしていない。しかし、頭を撫でられるのは好き。
そう思っていると、ヴィルグが移動して、扉を開けると、サキが現れた。
「……やっぱりな」
「……あは、あははははは」
サキは扉の前にずっと居たようだった。そんな彼はヴィルグの顰めっ面に苦笑していた。
「だが、丁度よかった」
「えっ?」
ヴィルグの言葉に驚いているサキに先程の事を説明した。
「へえ……じゃあ、この部屋にカメレオンがいるって事?」
「そうだよ。私達にお願いをしに来たんだから、サキさん。攻撃はしないでね」
昨日の事がある。彼が攻撃しないとは限らない。そのため、予め注意しておいた。すると、彼は「了解、了解」と笑っているが、本当にわかっているのだろうか? 正直、少し不安である。
「いた!」
そう思っていると、サキが一気に壁に詰め寄った。そして、手をそのまま伸ばして何かを鷲掴みしたような仕草を見せた。
「うわぁ……」
そのサキの姿に一瞬、カメレオンを哀れんでしまった。
「ぎぃぎゃああああ!!」
大きな悲鳴が聞こえると同時にサキの手によって捕まえられたカメレオンがその姿を現した。目を見開き、口から舌が飛び出している。
「ニーナちゃん、リーダー。捕まえたよ」
そんなカメレオンとは対照的にサキは満面の笑みを浮かべていた。なるほど、これは確かにカメレオンから見れば、サキは魔王に見えるだろう。心の中で納得してしてしまった。
「こんにちは。カメレオンさん」
サキは勿論、その笑みをカメレオンの彼にも向けた。すると、さらに大きな悲鳴をあげて固まってしまった。
「あらら……」
「はあ……サキ。カメレオンを机の上におけ」
「はーい」
頭を抑えて眉間に眉を寄せたヴィルグの言葉にサキは従った。そして、机の上にそっと置かれたカメレオン。だが、彼は固まったままだった。
「カメレオンさん」
私が呼ぶと、視線がゆっくりと私に向いた。そして、そのまま、舌も口の中に戻っていった。
「お嬢さん……俺は……魔王に捕まった筈じゃ……あれは、夢か?」
「捕まったのは、確かだよ……」
カメレオンの視線が私の後ろに移動した。
「すまない。お嬢さん。私はここまでのようだ。妹だけは助けて欲しい」
そう言うと、カメレオンは横に倒れた。
「おい、カエル」
そんなカメレオンの彼にヴィルグは声をかけた。
「だから、俺はカメレオン……いえ、なんでもないです」
彼の言葉にすぐに起き上がったが、ヴィルグの顔が怖かったのか、すぐに口を閉じた。
「お前の口からも話を聞きたい。隠す事なく、俺達に全て話せ」
「……はっ、話したら、妹を助けてくれるか?」
カメレオンは佇まいを直したと思うと、人型になった。
「話を聞いてからだ。俺達にもできる事とできない事がある」
「…………わかった。全て話す」
そして、カメレオンの彼は私、ヴィルグ、サキに何がこの国で起きているのか話し始めた。




