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すぴーどすた~☆ ~近衛学園初等部女子フットサル部~  作者: 四季 雅
第1章 ☆チーム結成編!☆
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☆③─18話 黒崎灯夜



「……」



 練習が終わった後、母さんが用意してくれた晩飯を凪と一緒に食っているんだが、どうにも俺は箸が進まない。


 あれからずっと雪姫の言葉が頭に残っている。




(俺が、無意識に『勝利のルート』を見ないようにしている……か)




 彼女は、俺が何かを見てしまわないようにわざとチームから一歩引いていると言っていた。


 そんなことはない、とは思った。これでも全力でやってきた。チームがバラバラにならないよう必死に守ってきた。



 けれど、前の練習試合で俺は直接的な指示をほとんど出さなかった。菜穂ちゃんを利用した時間稼ぎの作戦を一回。それだけで全て事前に策を渡して後は任せていた。




 どうして? 試合の運びを選手に任せるためか?



 もしくは、俺が試合に集中しすぎないためか。




 俺は今でも、試合に入りすぎて「勝利のルート」を見てしまうことを恐れているのか。


 まだ、過去の鎖に縛られたままなのか……。





「おにぃ。なにボーっとしてるの」


「……ああ、いや。なんでもない」



 俺が白米を箸で持ったまま微動だにしていないとさすがに不審がったのか凪が声をかけてくる。


 凪とは本心を打ち明け合ったものの、まだ過去のこと──「勝利のルート」のことだけは深く話せていない。話してもきっと理解されないだろうから。




 選手だけじゃなく、俺にも……成長しなきゃいけない何かがあるってことか。




「あ、ねぇねぇ、おにぃ。始まったよ」


「え?」



 凪が袖を引っ張ってきてテレビを指さす。


 そこに映っていたのは……




『全国のフットサルに燃える少年少女たち。こんばんは』




 一人の、四十代ほどの男が、画面の中に立ってこちらに呼びかける。どこかで見たことがある。この男は、たしか……



『私は『黒崎(くろさき) 灯夜(とうや)』。日本フットサル協会の会長をやっている者だ』




 そうだ。今のフットサル協会のトップ。


 俺もチームの監督をやっていることから最近はフットサルの本なんかを読んでいる。そこでチラッとだけ見かけたことがあるんだ。



 なんでもこいつが「フットサルランキング」なんかを実装したらしい。当初は反対が多かったみたいだが、どうにかして押し切り今現在はしっかりと運用されているところを見ると手腕は確かなものだと判断できる。





『今年も始まる……「全国小学生女子フットサル大会」。明後日、各県での予選がスタートし、君たちは過酷な戦いに身を投じることになるだろう』




 その声はどこか心の奥底にまで響くような。自分の中の芯を丸ごと掴んでくるみたいにグッと入り込んでくる。



 俺は、少しだけ……それを「恐ろしい」と思ってしまった。




『一年間を通して……競い合い、成長し、己の力をぶつけ合う。どうか、この大会が君たちの将来にとって大きな一部となるように願っている』




 横の凪も俺と同じ感想なのか、箸が止まったままで若干恐れを抱いている。兄妹は似ると言うのか。それとも……これがこの男から受ける誰しもの印象なのか。




『それと──』





 ブツッ──





「は?」



 フットサル協会会長──「黒崎 灯夜」が次に何かを続けようとした時、突然俺と凪が見ていたテレビが暗転。


 停電かと思ったが、部屋の電気はちゃんとついている。受信関係が悪いのかと思うが……これは電源そのものが切られた感じだ。



 ということは、電源を切った奴がいるわけで。




「……父さんか。急になんだよ」



 俺達の後ろでリモコン片手の父さんが立っていた。いつの間にいたんだよ。幽霊みたいでなんか怖いぞ。




「そんなくだらねぇもん見てんじゃねぇ。小春が出した飯をさっさと食え」




 本当に何なんだ。言われなくても食うっつの。



 しかし……なぜだろう。今の父さんから……少しだけ「怒り」が感じられる。言い過ぎかもしれないが、それでも不機嫌な感情までは読み取れた。



 結局、父さんはリモコンをこっちに放ってきて離れていった。ソファーに寝転んでスマホなんかをポチポチ触っている。



「そういえばさ、思い出したんだけど」


「どうした」


「さっきの黒崎って人……いつだったか、昔にここ来たことあるよね? お父さんと仲良かった気がするけど……」



 凪がチョンチョンと横から俺の腕をつついてくる。そして何を言うかと思えば……あのフットサル協会の会長がうちに来たことあるだって?



「お前知り合いだったのか」


「いや、話したことはないしあんな感じじゃなかった気がするんだけど。っていうかおにぃも会ったことあると思うよ」


「俺が?」



 それこそ記憶にないぞ……。


 父さんの反応からして今は仲良い感じじゃないっぽいし、触れない方がいいだろうな。



 それに今はそんなことよりも……



 その時、



 ブー、と充電器に刺してあった俺のスマホが振動する。メールか何かが届いたみたいだ。

 俺は箸を咥えながらスマホを取りに行って確認すると、差出人はフットサル協会。



 なんでそんなところからメールが届くかと言うと、全国大会が始まる前に協会へ学校名、監督名、メールアドレスを登録することで無事確認が終了すれば大会に関する情報がホームページで発信された際にそれを教えてくれるのだ。



 そして、その内容は。




「凪、父さん。決まったぞ」




 俺の声に、ご飯を食べてる凪と寝転んでいる父さんが反応する。





「東京予選一回戦の相手……『龍泉(りゅうせん)女子』」




 俺達の、初の公式試合。その相手は龍泉小学校女子フットサル部。




 こ、これは……





 『桜庭さん。全国優勝を目指すというのなら、予選を一番に気を付けてください』




 菜穂ちゃんが警告してくれた、あの選手がいる、学校だ……!






 全国個人ランキング3位──「天下原乃蒼」が所属する、全国優勝最有力候補。




 去年全国準優勝「龍泉(りゅうせん)女子」……!!



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