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すぴーどすた~☆ ~近衛学園初等部女子フットサル部~  作者: 四季 雅
第1章 ☆チーム結成編!☆
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☆③─17話 三つ、あります



「今日の練習はこれで終わりだ。明日はゆっくり休みながら各々で戦略の最終確認。明後日の試合の準備をしておいてくれ」



 今日の練習も無事に、誰も怪我せず終えることができた。メンバーが少ないと過剰なくらい怪我に怯えてしまうのは仕方ないことだが……ひとまず安心できる。



 チームの皆が掃除を終えてシャワーを浴びている中、俺は雪姫が座っているベンチに向かう。



「まさか最後まで見てくれるとは思わなかった。今日はすまない」


「いえ。楓様にも、凪さんにも、いつもお世話になっているので」



 練習を見ていればウズウズしてボールでも蹴ってくれるかなと思ったんだが、残念ながらずっとベンチから動かず。期待してた展開とは違うけれど、飽きて帰られるよりかはマシだ。



「で、どうだった。全国レベルのお前の目からうちのチームは」


「言ってしまってもよろしいんですか?」


「構わない」



 不穏すぎる返しだな。その後の言葉に良い展開が待っているわけもなく。


 だが、多分今から言われることは一から十まで予想できそうだ。それくらい見てわかるレベルの穴がこのチームには存在するのだから。



「失礼ですが。全国優勝はおろか東京予選すら勝ち抜けませんよ、このチームでは」


「なかなか……厳しい意見だな」


「三つ、指摘します。おそらく楓様も気づいておられると思いますが」



 綺麗に背筋を伸ばしたままの凛とした姿勢で、こちらに視線も投げず口だけを動かす。


 その、氷の造形のような唇から、




「一つ目。フィクソやゴレイロがまったく守備に指示をしていません。このチームでこれは致命的です。守備が一切機能していないのは間違いなくこれが問題と言っていいでしょう。宇津木さんが攻撃寄りな選手であることも一つの要因ですが」




 予想通りでおっしゃる通り。詩織に関しては、まだまだ守備の感覚が身についていないことが原因だ。そっちはまだいい。


 だが、あれから愛実の方にも相談はしているが、どうにも一歩踏み出してはくれない。このままでは誰かとゴレイロを交代する事態もありえるが……まだ、彼女の可能性を否定はしたくない。そんな気持ちがあるせいで俺自身もまた一歩踏み出せないのだ。




「二つ目。ポジションを交代させるべき選手がいます。これに関してはなぜ彼女をあのポジションにしたのかを問いたいですが……聞かないことにしておきます。ですが、彼女は絶望的なほどに今のポジションに向いていない」




 ……。これも、言われた通り。


 このチームには今のポジションにまったく向いていない選手が一人だけいる。これは凪にも指摘されたことだ。そして俺もそれには気づいている。



 しかし、これにもまた俺自身に確信には至っていないが希望的観測のような理由があってあえてポジションをそのままにしている。そんなことを一々雪姫にまで伝えたりはしない。理解されないだろうから、この理由は。





「最後に。楓様、貴方に問題がございます」


「ん? 俺か?」





 これは予想外。てっきり選手のことをいくつかダメ出しされるとは身構えていたが……俺のことか。いや、外の目から教えてくれるなら願ったり叶ったりだ。俺だってフットサルのことに関してはまだまだだからな。




「貴方は……本当に勝とうと思っているのですか?」




 勝とうと思っているかだと? それは聞き捨てならないぞ。



「俺が本気じゃないって言いたいのか?」


「いえ。誤解でしたら申し訳ございません。貴方は……どこか一歩引いた状態で選手を見ている気がしたので」


「そんなバカな。俺にも覚えがないぞ、そんなの」


「そうでしょうか? 私には、練習を見ている貴方が時折怯えのような感情を抱いているように見えましたが」



 怯え……俺が? 何に怯える?




「楓様は無意識のうちに自分をセーブしているのでは? まるで、『見えるものを見てしまわないように』……と」


「!!」




 こいつ……選手だけじゃなくて俺のこともそこまで見ていたのか。




 雪姫の言うこと、それは……「勝利のルート」のことだろう。




 前の来栖谷戦の時もそうだったが、俺はこれを意図的に見ないようにしている。試合に集中してしまうと今でも見えてしまう気がするから、雪姫に言われた通りたしかにどこかで一歩引いているかもしれない。



 そう。監督でありながら、観客のようにして。



 雪姫にはそれがお見通しってことか。



「随分と、目がいいんだな」


「…………それでは。これで失礼します」



 雪姫はペコリと一つだけ礼をして去っていった。



 柊雪姫の勧誘はこれで失敗した。




 俺達は、このまま東京予選の初戦へと挑むこととなる……


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