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すぴーどすた~☆ ~近衛学園初等部女子フットサル部~  作者: 四季 雅
第1章 ☆チーム結成編!☆
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☆③─14話 牧野愛実



 昼食を三人で食べ終えた後、雪姫の勧誘を凪へ完全に丸投げしてしまったことから少し心配になって様子を見ようと初等部に赴いた。


 行ってどうにかなるとは思っていないが、凪に朝あったことくらいは話しておこうかなと。



「あいつのクラスって1組と2組どっちだっけなぁ」



 学校のことなんか話さないどころか、あいつの場合は俺のあることないこと言ってるから怖くて聞きたくもない。ほとんど嘘ばっかだし。



「あれ? 監督さん?」


「ん? おぉ、愛実か」



 俺がフラフラと初等部区域の中庭を歩いていると、花に水やりをしている愛実と遭遇した。



「園芸委員なのか?」


「はい。お花、大好きですから」



 いいな。以前に綾瀬のことを図書委員っぽいとか言ったが、愛実はどことなく花とピッタリな気がする。優しい性格とかのせいかな。



 そうだ。ちょうどこんなところで会ったんだ。愛実には個人的に伝えておきたいこともある。



「愛実。その……守備のことに関してなんだが」


「はい」


「もっと仲間に指示とか……やっぱり無理そうか?」



 これは彼女がゴレイロとしてスタートラインをきってから初めに教えたことだ。守備の基本中の基本。仲間への指示出しは絶対に身に着けておかないといけない。



 しかし、それは今でもまったく形を成していない。



 それもそのはず。




「……すみません。私、指示とか出すのが得意じゃなくて」




 いつもこう返答する。



 ただ言葉通り苦手というだけなら俺もサポートをしながら習得させるが、どうもこれは「苦手」ではなく「嫌だ」という意思が見え隠れするのだ。



 そのせいで俺も強く言えず終いでここまでズルズルと来てしまった。


 相手が小学生の女の子だから、ってのもあるが……。

 




「本当に、すみません。私は皆の()()()()()じゃないとダメなのに……」





「どういうことだ?」


「……年齢ですよ。私、皆より早生まれなので」



 なんだ。そういうことか。てっきり留年みたいな話かと思ったけど。ははは、そんなわけないよな。バカか俺は。



「でも、そんなに肩肘張らなくても良いと思うぞ。早生まれと言っても一年変わるわけじゃないんだから」


「そう、ですよね」



 その時、愛実はガラン、と花へと傾けていたジョウロを手から落とす。


 中に入っていた水が零れてジワ……と地面を黒く染めていった。







「監督さん。私、ちゃんと『お姉ちゃん』やれていますか?」







 土で汚れたジョウロを拾わず、俺の方に向き直りそんなことを聞いてくる。


 なんだろう……なんともないような質問な気がするのに、簡単に答えてはいけないような気もしてしまった。



「あ……あぁ、皆頼りにしていると思うぞ。ゴレイロとして背中を守っているわけだしな。日常生活でも皆をサポートしてくれると聞いた」



 思った通りのことを言った。嘘偽りない。以前に舞依とチャットでメンバーの日常のことも聞いたことがあるんだが、そこでも愛実は「いつも自分達のことを気にかけてくれる」と言っていたしな。



「そうですか」



 それを聞いて安心したのか思い出したように地面に落ちたジョウロに手を伸ばす。


 お姉ちゃん……か。俺には凪がいるからお兄ちゃんなわけだが……




「愛実には弟か妹、いるのか?」




 なんとなしに、そんなことを聞いた。ただ、ふと気になって。


 愛実は一瞬だけジョウロへ伸びた手が止まり……再度伸ばしてそれを拾う。






「いますよ。妹が」






 こちらにニコリと笑顔を見せて、そう伝えてきた。



「俺の凪や詩織みたいにこの学校にいるのか?」



 伊織の例もある。もしいるのならちょっと見てみたい気もするし挨拶くらいはしておこうかな。いやいや、これ以上ロリの交友関係を広めるつもりはないんですけどね。



 愛実はそんな俺を無視してジョウロの中に水を入れようと蛇口へ向かう。


 蛇口をひねりながら、



「監督さん。いいんですか? こちらに来たのは何か用事があってのことだと思いますけど」


「……ああ、そうだった。凪のクラス知らないか?」


「凪さんの? あまり家ではお話しないんですか?」


「顔を合わせた時に話はする。驚くくらいに有意義な話が一切ないけどな」



 前に休日で暇だった時、ソファーに寝転んでいた凪に「お前って好きな数字とかあるか?」って聞いたら「おにぃ誘導尋問下手すぎ。どんだけ私がいるクラス知りたいの? 私と同じクラスに入りたいんでしょ? 初等部に転入するの? おにぃバカだもんね」とか言ってきた。


 日常の何の変哲もない会話を誘導尋問と取られるとはさすがのおにぃもビックリ! ちょっとだけキレて手で隠しながら中指立ててたら後ろの鏡に反射してたせいで速攻バレて顔面を蹴られました!



「凪さんは二組ですよ」


「そうか。助かる。じゃあな愛実」


「はい」



 愛実の件は……やっぱりひとまずは保留だ。まずは、目先のことに集中しなければ。




 この選択が間違いでないことを願うばかりだ。




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