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すぴーどすた~☆ ~近衛学園初等部女子フットサル部~  作者: 四季 雅
第1章 ☆チーム結成編!☆
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☆③─12話 本気のスカウト



 翌朝。


 登校の準備を済ませて家を出ると予想通り自転車がなくなっていた。父さんの仕業だろう。というのも、俺の部屋に隠していた自転車の鍵が無くなっていたからだ。どうやって見つけたんだか。



 また徒歩通学か。つまり……今日から動けってことだな。



 しかしだ。昨日は通学路で迷子になっているあの子に運よく出会えたけども、今日も同じように行くかは……














「……」


「……あ、楓様」



 いや出会えちゃったよ。良いことなのか良くないことなのか。しかも何が悲しいって雪姫がいる場所は通学路の途中にある公園のすべり台の上。まずい。もう涙が出てきた。


 雪姫はスカートを抑えながらスススーッとすべり台を滑って降りてくる。そんなところに登っても学校には着かないだろうに。すべり台だとしっかり認識していてこの体たらくでは今まで学校に着いていた方が奇跡と言える。



「おはようございます楓様」


「おはよう。ちなみに今日は平日で学校のある日だぞ」


「? それは知っていますが」



 どこからどう見ても休日に公園で遊んでいる奴にしか見えないからだよ。「休みの日だと思ってました~」とか言ってくれたほうが精神衛生上いくらか良かったのに。



「ほら。学校行くぞ」



 彼女の服についた土埃なんかをパンパンと払ってやり、手を差し出す。



「その手は……?」


「昨日みたいに強烈な迷子にならんよう手を握ってくれ。手が嫌なら服の端でも掴んでおいてくれてもいい」


「……なるほど。承知しました」



 恐る恐る、ゆっくりと雪姫は俺の手を取る。



 小さくて、一瞬氷かと思うくらいひんやりとした後にジンワリと人間らしい体温の温かさが滲み出てくる手。ちょっと力を入れたら崩れてしまいそうだ。



「あ……」



 雪姫は握られる手を見て頬を朱に染める。



(なんだかお姫様と王子様のようです……)



 彼女は自分でそんなことを想っておきながらその言葉にドキドキしていた。



 しばらく通学路を二人で歩く。別にこうして一緒に歩くこと自体は嫌ではない。なんたって究極の方向音痴を共にしているのだ。そんな余裕はない。



 けれども、たまに同じ高等部の奴らの視線が刺さるのが辛い。さっき「あいつ小学生と一緒に登校してるぞ。しかも手を握りながら」って聞こえた気がする。ああ、「なにあの不審者!」って指さされた……。うぅ、「うわwww あれきっもwww」ってギャルみたいな子に笑われてる……。


 俺もう今日学校行くのやめようかなぁ……



 俺が俯いてシクシク泣いていると、突然雪姫がピタリと止まる。



「すいません。少し……」


「どうした?」



 雪姫は胸ポケットから綺麗な刺繍の入った豪華そうなハンカチを取り出し、肌に当てるようにして汗を拭く。


 よく見れば雪姫はすごい疲れたような顔をしていた。頬に流れる雫が彼女の辛苦を表している。



「大丈夫か? もしかして急ぎすぎてたか?」


「いえ。少々暑いのが苦手でして……」



 あ……。今は五月といっても最近は異常なくらいに暑くなっている。数年前と比べたら七月なのかと疑うくらいに。俺でもたしかに暑いと感じるんだから苦手だという雪姫にとってはかなり苦しいだろう。


 別に今日は昨日と違って遅刻危機というわけではない。ゆっくりと休みながら行くか。



「すみません。もし気分を悪くしたなら手を離してくださっても構いませんので」


「バカ。そんなことしたらまたお前どっか行くだろ。それにお前の汗なんて嫌じゃない」



 俺だってスポーツやってきたんだ。自分から進んで相手に触れておいて汗がついたと騒ぐわけない。



 あと……別に雪姫の汗は汚く感じないしな。舞依達と同じようにロ──小学生の汗は邪魔で汚い物質というより、むしろそれが合わさることでさらに上位の存在へ昇華していくようなまさに賢者の石ならぬ賢者の水。何言ってんだ俺。



 俺が安心させてやると雪姫はキョトンとして、




「……楓様は小学生の汗がお好きなんですか?」



「んなわけあるかっ!!」


「ふふ。冗談です」



 ここは認めてはならないので勢いよくツッコむと彼女は口に手を当ててクスクスと笑う。


 俺はそれを見て、不覚にも、相手は小学生なのに、ドキッとしてしまった。



 ずっと氷のように無表情だったそれが割れて、中から微かな光が漏れ出たみたいに。つくづくこの少女は物語の本のなから出てきたみたいだ。



「なぁ雪姫」


「はい。なんでしょう」



 また手を握りながら歩を再開し、俺はとうとうあの質問を切り出すことにした。




「お前、フットサルやってたんだろ?」




 勇気を出してそれを口にした時、雪姫の足がビキリと凍り付いたように止まった。それと同時にこの世界の時間までも止まったのかと思ってしまった。



「……どうしてそれを?」


「説明は難しいが多分、おそらく、きっと合法な手段で情報を手に入れて俺に提供してくれるとんでもない奴がいてな。お前がフットサルをやっていたことをそいつから教えてもらった」



 こうして雪姫と出会えたのもそいつのせい……というのは言わないでおこう。きっかけはそうでも、本当に出会えたのはマジの偶然だしな。


 俺としてもこれを切り出すのはもっと後の方がいいかと思っていた。雪姫にも何かしらの事情があってフットサルから離れているわけだしな。



 鬼が出るか、蛇が出るか……





「俺は今、初等部女子フットサルチームの監督をやっている。あと数日で東京予選が開幕するんだ。だが……お世辞にもチームの状況はよくないしメンバーすら満足に集められていない。そこで、かつて全国でも7番に格付けされていると聞くお前の力を借りたい」




 正真正銘。真正面からのスカウト。隠し事や探り合いはなしだ。ロリにそんなの通用しねぇ!











「無理です」



 終わったぁ!!


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