☆③─9話 うちのマネージャーは……
「よし。一旦休憩だ」
俺の指示で選手は全員ベンチに戻ってくる。
「ふはー! 数日後には大会なんだよね! 燃えてきたー!」
いの一番にベンチに走り戻ってきた亜子は俺が持っていたドリンクを引っ手繰るとガブガブ飲みながら気概を伝えてくる。だからまだ練習終わりってわけじゃないからそんな飲むなって言うとるのに。しかもそれ俺のなんですけど……
「はい。ドリンクとタオル」
その横では新マネージャーとなった綾瀬が皆に早速サポートを始めていた。
「ありがとうございますっ!」
「ありがと」
「ぐっど」
「たすかります……」
「ぐぬぬ……亜子……」
うんうん。優しく無垢な子達はマネージャーのやることが当たり前ではないとちゃんとわかっている。若干一名こっちを見ながら呪詛みたいなものを吐き出している子もいるけどあれもきっと無垢な反応故だろう。うんうん……
そんな一幕をボーっと眺めながら飴ちゃん舐めてるマネージャーもどきがいるんだが……
「白戸。お前いよいよ仕事しなくなったな」
「だって仕事なくない? 綾瀬さん、ストップウォッチは代わりに計ってくれるし、ベンチや必要な道具は代わりに用意してくれるし、ドリンクとタオルも代わりに用意してくれるし」
「今までお前がやってたように言うけどその代わりとなってたのはお前じゃなくて全部俺だからな?」
「そうなんじゃない? あんたの中ではね」
「誰の中でもだよ」
ほんとどうして父さんはこんなのチームに入れちゃったの……
今はチームの危機的状況なのに本当にそれを理解しているのか。綾瀬が来てくれて本当に良かった。もう一度言おう。綾瀬が来てくれて本当に良かった……!
「いてっ!」
俺が心の中で唸っていると後ろから尻を蹴られる。
「おい。何するんだ」
「顔がなんかムカつく」
「尻が二つに割れるだろまったく……」
「そのまま全身真っ二つになればいいのに(笑)」
こいつぅ……!
ああもういかんいかん。何度このやり取りをしてイラついているのか。いい加減学習しろ俺。こいつと真面目に会話しても良い結果にならないんだって。
こいつのことはマネージャーというより幸運を呼ぶ置物的な何かだと思っておこう。いるだけでご利益があると信じた方が精神衛生上幾分かマシだ。
「綾瀬。今のところマネージャーやってみてどうだ?」
「楽しいよ。それに皆が頑張ってる姿を見てると私も頑張らなくちゃって思えるから」
おぉ……。小学生組に負けないくらい無垢な意見だ。どこぞの置物にも聞かせてやりたい。
「でも……なんだかチームの皆、どこかピリピリしてるね」
サポートしている側でも自然と感じ取れてしまったか。
皆の不安はわかる。俺もあれこれと注文して基礎練習から戦術練習まで色々とやらせているが、「自分が今どれくらいの実力なのかがわからない」んだ。
それも全て練習試合が組めないことにある。
東京予選が本格的に近づいてきた今、メンバーもろくにいないチームと練習試合をやろうと承諾してくれる学校がいない。
実は以前に来栖谷女子と練習試合を組めたのは父さんのコネがありまくりどころかコネしかない結果によるもので。その来栖谷さんもこれ以上は俺達との練習には付き合っていられないというのが現状だ。まぁあそこは今年こそ優勝候補である天下原乃蒼のいるところに昨年のリベンジを、と燃えているからな。
練習の成果は……いきなり本番でわかる。これ以上に怖いことはないよな。
どうにか、監督としてどうにかできないか……
悩みながらも時間は過ぎていく。楓は漠然としたこの不安を取り除こうにも解決策が見いだせないこの状況に歯がゆい気持ちになっていた。
それを遠くから見ていた父である桜庭遼は企みが含まれているかのような笑みを浮かべていた……
☆あとがき☆
前回もでしたが、今回もボリュームが少なくてすみません!
どうしても前回の雪姫が屋上にいるシーンを最後のオチに持っていきたかったのと、次回から話が一つ動き出すのでこんな切り方になりました。次回楽しみに! 感想とかもあればいつでも! ゴールデンウィークはたくさん読もう!!(笑)




