☆③─7話 フットサル部のキャプテンだ~れだ♡
そして……最後に、
「あ……これ、」
舞依が袋の中をまさぐっていると、その中にあった最後のアイテムに気づく。
それは、衣服のようなものだった。
そう。大会に必要なもので衣服のようなものと言えば……あれだろう。
「私たちの『ユニフォーム』ですっ!」
舞依が手に掲げていたのは黒を基調としたデザインに黄色のラインが複数入ったユニフォーム。
「うおー! すげー! かっちょいいー!」
亜子がワイワイと叫びながら喜んでいる。こういうの好きそうだもんなー。ポジション決めの時も一番テンション高そうだったし。
まぁ、わかる。なんと言っても長く付き合うことになる自分たちの象徴みたいなもんなんだ。むしろこんなに遅くなって申し訳ない。
「黒って……暗くないかしら? かと思えば黄色のラインが明るいというか。チグハグね。なんでこんなユニフォームにしたのよ。バカなの?」
詩織がぶーぶーと不満垂れる。言いたいことはわかるけどわざわざユニフォーム登場した瞬間に言うことないじゃんよ……ったく、仕方ねぇな。
「これはな、夜空の中を走る星……それをイメージして作られたデザインのユニフォームなんだよ」
「え、なに、こんなチグハグなデザインにもちゃんと意味あったの」
「今考えた」
「やっぱバカね。あと発想が恥ずかしいわ」
小学生に「発想が恥ずかしい」とか言われる高校生って……。ちょっとカッコいいと思ったのに……恥ずかしいって……
「ねーねー! これ背番号どうなってんのー! 好きなの選んでいい?」
ここもやはり亜子というべきか。ユニフォームのデザインの次は気にするのそこだよなー。すっげーわかるわ。
「あー……一応言っとくと大会の規定でゴレイロは1番にしないと──」
「よっしゃー! アタシ1番ねー!」
「聞けよ! はえーよ! ちょっと待てー!」
亜子から背番号1のユニフォームを奪取してなんとか着るのを止めさせる。練習試合とかでは構わないが、大会で好き勝手に番号決めて審判を困らせるのは大変だ。
「あと、キャプテンやエースなんかは5番が多いらしいぞ。サッカーでいう10番みたいな扱いだな」
そう聞くと目の色が変わる子が現れる。
「じゃあアタシ5番!!」
「……仕方ないわねー。あたしがこのチームをまとめあげてあげるわ」
亜子と詩織が同時に声をあげた。亜子は元気よく、詩織は仕方ないとか言いながらも内心やりたそうに。
見事に声が重なると二人はムッと目を合わせる。
「えー! アタシがキャプテンやりたいー!」
「あのね、キャプテンっていうのはチームのリーダーなわけ。それはつまり司令塔のあたしってことでしょ」
「しおりは司令塔やってるからキャプテンくらい良いじゃん!」
「司令塔やってるからキャプテンなんでしょうが!! 適当に決めていいものじゃないわよ!」
「たしかにキャプテンは適当に決めていいものじゃないが、ヒートアップしすぎるなよ……」
……こうなるなら背番号のこと言うんじゃなかったなー。
しかし、キャプテンとは重要なものだ。そいつ次第で、チームの色が決まる。
例えば亜子がキャプテンになったなら、どれだけピンチな時でも元気な彼女がリーダーとして鼓舞することで諦めない心を宿すことができるだろう。
逆に、詩織がキャプテンになれば、どんな困難な状況でも冷静沈着な彼女がリーダーとして導くことで冷静に対処できるようになるだろう。
つまり、キャプテンを決めることはチーム作りにおいて最後のピースを埋める行為に等しい。決して適当に決めていいようなものじゃないんだ。
「「じゃーんけーん!」」
「って、ちょっと待てー! 言ったそばからお前らこらぁー!」
俺の心境なんかガン無視でこいつらさっそくジャンケン始めようとしやがった! 特に詩織! お前さっき適当はダメって言ってただろ! なんでお前までジャンケンで決めようとしてんだ!!
「じゃあ楓はどっちがキャプテンに相応しいと思うのよ」
「かんとく! アタシだよね?」
「お、おい……」
口出ししたらしたで今度はこっちに矢が飛んできた。なんでそうなるの……
「あの……」
「な、なんだ、舞依?」
と、思ったら助け船が。舞依、こいつらどうにかしてくれ……!
「私も、キャプテン……やってみたいですっ!」
「……」
助け船がそのまま弾薬庫に突っ込みやがった……! 大爆発じゃねえか……!
「楓!」
「かんとく!」
「楓さんっ!」
ズズイッ!と三人が迫ってくる。
う、だ、誰を選べばいいんだ……これは……
こ、……これ、……は……
「く」
「「「く?」」」
詩織と亜子と舞依が俺の次の言葉に耳を立てる。
「く……『くじ引き』……とか、どう…だ……?」
「「「…………」」」
結果。
「ふっ……やはりあたしがこのチームの真の長ってわけね……!」
箱の中に一つだけ当たりクジを入れて三人に引かせると、当てたのは詩織だった。
あーあ適当に決めちゃったよ。あーあ。あーあ!!
「ねぇ。ほんとにクジで決めちゃったけどいーの?」
「もう知らん……」
さすがの白戸も心配になったのか、俺の方に意見を求めてきた。俺もヤケクソになっているのでそれ以上は何も言えなかった……。




