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すぴーどすた~☆ ~近衛学園初等部女子フットサル部~  作者: 四季 雅
第1章 ☆チーム結成編!☆
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☆③─1話 暗闇に包まれた過去



「なぁ、『ししょう』。いつになったらおれはあんたよりもサッカーうまくなれるんだ!」



 サッカーボールを抱えた小さな少年は、自分よりも年上の少女へせがむように問うた。


 彼にはサッカーが上手くなりたい理由がある。

 目標に辿り着ける道筋がはっきりすれば、「ししょう」──彼女との日々の練習にも身が入る。今日は彼女の家に乗り込んで直に聞きに行ったのだ。



「あのね。一日二日で私みたいになれるわけないでしょ。まだまともにリフティングすらできないのに。それと師匠っていうのやめてくれる……」


「ご、5回ならできるようになった! これでもうあんたと同じレベルだろ!」


「さすがに怒るわよ……」



 師匠と呼ばれる少女は、自分の肩くらいまで伸ばされた黒髪を弄び、眉間に皺を寄せながらも耐える。

 リフティング5回で同レベルというならお前はどれだけレベルの低い奴から教わっているのだと。




「……おねーちゃん、だれ……その、ひと……」




 師匠が呆れていると、後ろから知らない女の子が出てきた。


 その子は自分よりも小さくて、あどけない(ひとみ)が師匠と自分とを揺れながら見つめる。


 師匠と同じ綺麗な黒髪、けれど長くは伸ばさずショートにしている。初めて見る男の子が家に来ているせいでオドオドとしているのがまるで怯えている小動物みたいだ。



 それと……自分の目にはなぜか、その女の子がキラキラと光っている星のように見えた。



「ししょう。この子は……」


「ああ……初めてよね。私の妹の────よ。小学二年生」


「ししょうにも妹がいたのか……」



 自分にも「ナギ」という妹がいる。小学二年生ということは、妹と同級生だ。



「お、おれ、桜庭楓(さくらばかえで)っていうんだ。おまえのねーちゃんの……『でし』をやってる!」


「でし……?」



 師匠の妹の────は、『でし』とは何だろう……と首を傾げて不思議がっていた。


 しかし、それは置いといて……こちらも、と口を開く。



「わたし、は……『────』。か……カエデ、くん……さっかーすきなの?」


「さ、さっかーは……今は、まだわかんねーけど……ちょ、ちょっとは楽しい……かも?」



 名前を呼ばれたことで少しドキリとしてしまったせいかボソボソと変な喋り方になってしまう。それでもなんとか答えは出せたが。



「わたしもね。おねーちゃんと、さっかーやってるんだぁ……」


「なに!? ────もさっかーやってるのか! ポジションは?」


「えっと……前にでるのはこわいから……うしろでまもる人」


「ディフェンダーってやつか!! すげー! ちなみにおれは『しれいとう』!」


「あなたまともにボールも蹴れないのに司令塔って……。言っとくけど今のあなたよりも──の方が上手いわよ」



 師匠は溜息をつく。それと聞き捨てならないことを言った。


 この目の前にいる子が自分よりもサッカーが上手いだって? そんなまさか。4歳も離れているのだからさすがに……



「カエデくんは、『しれいとう』がすきなの?」


「おう! だって、リーダーみたいでカッコイイじゃん」


「そっかぁ……」


「つっても、まだまだだけどなー。今もお前のねーちゃんにサッカー教えてもらってるところなんだ」



 それを聞いた時、──は、控えめにでもニコリと笑う。それにまたドキリとして。





「じゃあ……カエデくん。いっぱいさっかーうまくなったら、いっしょにやろうね」

 星みたいにキラキラと輝く笑顔を向ける──は、小指を立てて自分のところへ向けてくる。


「……おう。やくそく、な」




 俺も小指を出して、──の小指と絡めて結んだ。




 約束。いっぱいいっぱい上手くなったら、



 俺は──と一緒にサッ









「はっ!!!!!」



 ガバッと布団を跳ねのけながら起き上がる。

 目に広がったのは自分の師匠の家ではなく、なんともつまらない自室の光景。



「ゆ、夢……ゆめ、か……」



 ブルブルと悪寒(おかん)に震える体を押さえてベッドを出る。カーテンから漏れ出る朝日は俺の顔を照らしてほんの少しでも温めてくれるようだった。


 こんな寝覚めが最悪な日でも、休日でない限りは学校がある。


 早く学校に──



 時刻は8:00を指していた。

 あと30分で学校が始まる。



「また遅刻危機かよぉぉ……!!!!」



 桜庭楓は、扉を叩かんばかりにぶち開けて階段を下りた。





「かーくん、おはよう~」


「おはよう!!!! んで早速で悪いけど弁当もう用意できてる!?」


「はい。これ」



 母さん──「桜庭小春」は俺の降りてくる遅さからこうなることを察していたのか、すぐに弁当を渡してくる。



「…………こんなこと言うのは恥ずかしいけど起こしてほしかったな」


「起こしたも~ん。でも、かーくん全然起きないし」


「それは申し訳ございませんでした……」



 どうやら俺はよっぽど夢の世界に囚われていたようで。母さんの声なんか気にせず眠り続けていたようだ。



「それじゃ行ってきます」


「はーい」



 遅刻の危機となれば焦るのは当たり前。けれども、今日はただの変わりない一日ではないのだ。

 なんと本日はテストの日。今日遅刻なんかすれば一時間目のテストは目も当てられない点数で返ってくること間違いなし。


 そうなれば父さんからはバカにされるだろうし凪は怒る。

 悲しいかな、桜庭家の兄は何をするにも父と妹の顔を(うかが)っているのだ。



 とはいえそんなこと関係なしに、普通に考えてテストに遅刻なんてするわけにはいかない。

 自転車をフルパワーで回して特急で学校に──




「って自転車ないし!!!!」




 確認するとあら不思議。俺の自転車は忽然(こつぜん)と姿を消していた。

 鍵はかけっぱなしにしていたが、それでもまさか家に乗り込んできて堂々と盗む奴なんているまい。誰かが移動させたのか……と家をグルリと回って探そうとするが。



 そこで、ありえない物を見てしまった。




 車庫に。父さんの、車が置かれてあった。




 いや何を当たり前のことを言っているんだと思うだろう。ああそうさ。当たり前のことだ。


 だが、待ってくれ。



 本来ならあいつはもう学校に行っているはずだ。そしていつも通勤には車を使っている。



 つまり、今ここにあいつの車があるのはあり得ないんだ……!



「あのクソ野郎……わざと自転車使って通勤しやがったな……!」



 皆は信じられないだろうけど俺の父親は息子が学校に遅刻するのを本気で面白がっているとんでもないクズ野郎だ。これが学校の教師をやっているという事実もなかなかに日本の危機ではないかと思ってしまう。


 ……とはいえ、あいつの場合はまた何か意味があってこんなことをしている可能性もある。

 それで思い出したが、舞依と出会ったあの日も自転車がパンクしていたんだ。


 まさかとは思うが……な。いやほんとにまさかであってほしいんだが!!


選手名鑑④ ししょうのいもうと  

ポジション:ディフェンダー

シュート:? ドリブル:? ディフェンス:?

スタミナ:? スピード:?


幼き頃の楓の師匠にあたる人物の妹。ポジションがディフェンダーであること以外全てが現在は謎。その実力も幼い楓よりかは上手かったようだが……? 今もサッカーをしているかも謎。楓にとって、思い出の中で星のように輝く少女。

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