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すぴーどすた~☆ ~近衛学園初等部女子フットサル部~  作者: 四季 雅
第1章 ☆チーム結成編!☆
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☆②─24話 誰も自分と同じじゃない



「あの~え、えっと……詩織?」


「なによ」


 桜庭凪は登校するなり教室でボーっとしていた宇津木詩織に声をかける。


 どこか小学生離れした雰囲気をもつ詩織に対して苦手意識がある子は何人かいるが、自分は別にそういうわけではない。


 ただ、「部活を辞めるほどの家の事情」を聞いてこいというなんとも失礼極まりない指令を兄から受けた凪は気が進まないでいた。

 本来ならやりたくないで済ませるが、それでもこれは兄からのお願いなのだ。断らないわけにはいかない。


 それに凪もせっかくフットサル部に入ったのにすぐ仲間がいなくなるのは良い気分ではない。


「詩織、なんでフットサル部辞めちゃうの」


「……フットサルに飽きたからよ」


「あ、飽きたって……」


 嘘だ。そんなわけない。楓が言うには最初こそやる気が一番なさそうだったが誰よりも練習を積んで試合では活躍したと。


 他の子とは違う難しい性格をしていても、「フットサルを楽しむ」という一点においては舞依たちと何も変わらない。絶対に飽きてなんかいないはずだ。兄からの話を聞いただけでもそれは伝わったのだ。


「あんたの兄に何か頼まれて話しかけてきてるんでしょ。何を言っても無駄よ」


「むぐぐ……」


 簡単に見抜かれた。とんでもない強敵だが……ここで引くわけには……



「相談ならなんでも乗るよ?」


「余計なお世話。それに……あいつと同じでそうやって首つっこんでくるのは嫌いなのよ。どうせ何もできないくせに」



 フイっとそっぽを向く詩織。


 ダメだ。相手にもされない。やはりまだ知り合って日が浅すぎる自分ではどうすることもできない。



 ここは舞依たちに期待したいところだが……そっちもダメそうだ。さっきから後ろの方でこちらの様子を窺っている。

 話しかけたくても、話しかけづらいといった感じだ。友達でも、「フットサルに飽きた」という言葉が強く彼女らを突き放しているのだ。


 いくら仲が良くてもそんなことを言われては心も傷つく。話しかけようとしても何を話せばいいのかわからない。



 小学生には対処の厳しい問題だ……。




   ☆




「くっそー。こうなったら『さいごのしゅだん』だ!」


 詩織からは離れたところで、亜子はそう叫ぶ。


「さいごの?」


「しゅだん?」


「ってなんですか?」


 舞依と奈夕葉と愛実の3人は揃って首を傾げる。亜子には秘策があるというのか。



「家族のことは家族に聞けばいい!」



 亜子の言い出したことは何かと思えば至極当然のことだった……。


「でも詩織が教えてくれないんだし……お父さんかお母さんに聞くの?」


「う~。しおりのおうちはすこしだけこわいかも」


 詩織の家のことは深くは知らないけれど顔が怖い人たちがいるくらいには知っている。それを相手に詩織のことを聞くという勇気はさすがになかった。


 けれど亜子は……




「違う違う! パパとかママとかじゃなくて……『妹』!」




「い?」


「も?」


「う?」


「と!?」



 舞依、奈夕葉、愛実……それといつの間にかすぐ近くにいた凪が反応した。


「え……詩織って妹いたの? 全然そんな話しなかったけど……」


「昔2人で遊んでた時に聞いたことがあった。えっと……今は3年生のはず!」


 舞依は詩織に妹がいたことなど初めて知ったが、実は亜子は詩織と幼馴染でもある。だから妹の存在を知っていてもおかしくはない。



「しおりがフットサル辞めた理由をさぐるぞー!」


「「「「おーっ!」」」」



 司令塔を取り戻すため、5人は次なる作戦を立てる。



 本を読んでいた詩織は変な寒気に襲われて「くしゅんっ!」とくしゃみをしていた……。




   ☆




「桜庭くん、大丈夫?」


「え……?」


 放課後、図書委員会の仕事で図書室の本の整理を任されていた。


 これは当番制で今日は楓と、もう一人の同じクラスの図書委員である綾瀬秋乃の番だったのだ。


 2人で本の整理をしている途中、秋乃は楓の様子が気になっていた。

 というのも朝に教室で白戸夏月を相手に大声を出している姿を見たからだ。自分が彼女と仲良くなりたいからどうしても何があったんだと聞きたくなってしまったのだろう。


「いや……喧嘩ってわけじゃないんだが、価値観みたいなものが違ったせいで俺が勝手にカッとなっただけだ」


「価値観……かぁ」




 本を決められた場所に置きながら、無音な空間の図書室で声がよく通る。

 自分の言葉で、そうやって耳に届くと冷静に判断できるようになってくる。


 白戸には白戸の考えがあるはずだ。

 冷たい……とは思ったが、頭ごなしに否定してやるのは少し待ったをかけるべきだったとも思うのだ。


 なにせ昨日の夜には俺も頭にチラついた答えでもある。もちろんすぐに却下したが。



 白戸はどうしてか詳しくは知らないが半ば父さんに巻き込まれた形でフットサル部のマネージャーなんかをしている。

 その目線から言えば誰かを追うのに集中するよりフットサル部の練習を継続させていくことがベストと思えるのも仕方がない。そういう目線も、大事だ。



「でも、それで良いと思うな。私は」


「価値観が違うことが……良い?」



「うん。意見が合う人と一緒にいると気分は良いだろうけどなかなか成長できない。色んな意見を聞いて、色んなものや色んな人に触れれば触れるほどきっと人は成長していくと思うから。…………これ、私じゃなくてお兄ちゃんの受け売りなんだけどね」



 なるほど。自分と似てるような奴と知り合うのは心地いいが、それよりも真逆のような奴と知り合った方が衝突したりして考えることもいっぱいあるってわけか。現にそうなってるわけだし。


 そう考えると……もうサッカーなんてやらないと決めてた俺がフットサルを楽しんでいる彼女らと出会ったことで変われたんだよな。綾瀬の言葉は一理ある。

 それに、そのきっかけになったのは父さんの差し金と言えども間違いなく白戸だ。


「それ。なんだかいい言葉だな」


「ふふっ。桜庭くんのお役に立てて良かった」


「俺も、あの子たちのことだけじゃなく白戸のことも、もっと知ってやらないといけないよな」



 本を棚へと差し込みながら、俺は白戸とちゃんと話をしようと決めた。



 高校生で監督なんかをやってる俺だが……まだまだ学ぶことの多い子供だな。



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