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すぴーどすた~☆ ~近衛学園初等部女子フットサル部~  作者: 四季 雅
第1章 ☆チーム結成編!☆
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☆②─22話 『勝利の瞬間』



 ただ……全国優勝に関してだが、そう楽観視できない。思った以上にかなりの難関なのだ。



 その道のりとしてだが、まず大会以前にやらなきゃいけないことがある。


 チームや個人の実力に対して「ランキング」があることから察しが付くかもしれないが、選手の情報をちゃんと登録しておかないといけないのだ。


 「フットサル協会」というものが存在していて、そこが一括して全選手の情報を管理している。当たり前だが登録した選手しか大会には出られないわけだ。

 前に近衛学園の初等部女子フットサル部のランキングを調べた時は「圏外」と出ていたが、あれはそもそも登録していないチームもそのように出るらしい。父さんにも確認したけど予想通りまだ登録が済んでいない。




 登録が済めば、次は「東京予選」。


 これはすごく変わった形式なのだがトーナメントやリーグ戦をするものじゃないようだ。

 どうやらフットサル協会が同県の登録された学校の中でランダムにマッチングし、場所も指定して試合をさせるらしい。

 その場には協会から派遣された審判も同行しての公式試合。それをいくつかこなして勝率が良い学校が次のステージに進める。



 その次のステージこそが「関東予選」。

 これは普通のトーナメント。同じ形式で選ばれた関東圏の学校が争う。そして勝ち抜けた学校は関東代表として「全国大会本戦」に進める。


 その全国大会本戦にもまた色々とあるわけだが、今はそんなこと気にしても仕方がない。


 なにしろ関東予選。ここにとんでもなく大きな壁が存在しているのだ。

 それは……




 ☆




「桜庭さん。全国優勝を目指すというのなら、予選を一番に気を付けてください」


 来栖谷女子との練習試合後、皆が片づけをしている間に個人的に菜穂ちゃんと話をした。


 彼女が戦略のことで話をしたいと言っていたのでそれに付き合うのと同じく、俺も聞きたいことがあったのだ。



 それは関東にどれほどの実力を持った選手がいるのか。

 もっと言えば最高で個人ランキングがどのくらいの選手が関東にいるのか、という話だ。



 なにせ菜穂ちゃんのチームは関東2位。去年は関東予選で準優勝だったのだ。かなりここの事情には詳しいはず。

 小学生相手に申し訳ないが、聞けることは聞いておきたい。


「それは俺もちょうど知りたかった。関東で一番強い選手といえば……誰なんだ?」


 南菜穂は自分の結んでいる髪の毛を触りながら記憶を手繰る。去年の関東予選のことを。

 少し言いづらそうにして。口を開く。




「関東1位にして、全国個人ランキング3位……『天下原(あまがはら)乃蒼(のあ)』」


「全国……3位!?」




 それを聞いた瞬間に全身の肌がゾクリと冷えた。


 覚悟はしていた。もしかすると、とんでもない奴がいるんじゃないかと予感もしていた。

 最悪なことに予感は的中。ランキングがどういうものを基準としているかはまだ不明だが、とにかく全国で3番目に強いと評される選手がいるというわけだ。


「菜穂ちゃんは……その子がいるチームと試合したんだよな」


「はい。あの子はその時5年生でしたけど……先輩を含めた私のチームは惨敗でした。あの子1人だけに好き放題やられて。それはもう……ひどいくらいに。スコアも……8-0です」


「8点も……。攻撃的なチームなんだな」


「攻撃的なチーム? いえ、違いますよ」



 え? という俺の反応を見て菜穂ちゃんは苦しそうに笑う。




「8点はあの子1人だけで取った点数なんです」


「1人で8点!? そんなバカな……」



 思い出すのも辛いように。話してくれる。その選手のことを。恐怖に怯えながらも。

 彼女と試合することがそれほどトラウマのように刻み込まれるというのか。悪夢の詳細を聞いているみたいな心地だった。


「しかも全国大会でも去年準優勝。優勝は逃しても得点王はあの子で……攻撃力だけでいえば間違いなく全国トップです」


 天下原乃蒼。小学生にこんなこと言うのはあれだが……そんな化け物みたいな子と嫌でも関東予選で絶対戦うことになるのか。

 5年生でもそんな実力なのにさらに1年強くなっている。ここまで来ると頭が痛くなってくるな。


「それと……これは、本当かどうかは……わからないんですけれど」


「ん? なんだ。なんでも言ってくれ。ただでさえこっちは情報が少ないからな」


 菜穂ちゃんは迷う。これは思い出すのが辛いとかそういうことじゃなさそうだ。


 まるで……「こんなこと言ってしまっていいのかな」という風。何があるというのか。






「あの子は……自分が得点する時間─『()()()()()』がわかるって言われてるんです」



「勝利の……しゅん、かん?」


「はい。私たちの時もそうだったんですが、試合で突然「~分~秒」って時間を予言みたいに呟くんです。そしたら……絶対に予言した時間ぴったりに得点するんです。寸分の狂いもなく。まるで元からそうなると決まっていたかのように……」



 そ、それは。


 偶然か? いや、しかし。


 普通なら笑い飛ばすところだ。「そんなことありえない」と。「何を言っているんだ」と言いたいところだ。


 けれどもそういった超常的な現象が起こることを俺はもう知っている。



(俺の……「勝利のルート」と同じだ。まさか小学生のフットサルの中にもいたとは……)



 決してありえない話ではない。才能云々の話で言えば子供の頃が最も開花しやすい。



 その話で言うならば「天下原乃蒼」以外にも、全国大会にはさらに何人も同じような「才能」を持っている選手がいたって不思議ではない。



「すいません。変なこと言ってるってわかってるんですけど……」


「いや……大丈夫だ。ありがとう」



 この現象については実際にそれと似たようなことが起こっていた俺が一番の対策となるわけだ。そうは言ってもこれといって案があるわけではないが……関東予選へ進むと決まればいくつか作戦を考えておこう。


「ごめんな。自分が負けた試合のことなんて思い出したくもなかっただろうに。それも、大きな大会となれば」


「いえ。お役に立てたようで何よりです。それに……今度こそ負けませんから」


 その目にもう恐怖は映っていない。「次こそは勝つ」という意思が秘められている。



 わかるぞ。気持ちよく勝った試合よりもボコボコにやられて負けた試合の方がより強く記憶に残るもんな。でも、その記憶で闘志を燃やすんだ。そこで心が折れるか、諦めないかでプレーヤーの成長が大きく変わる。


 「失敗は成功の基」なんて言葉を軽く使うつもりはない。

 成功する……つまり勝つことは決して簡単なことじゃないから。お互い必死に練習して本気でやっていればどちらが勝つかなんてわからない。。




 それでも、負けることはいつか勝つための力になる。これだけは絶対だ。




「桜庭さん。今日の試合ありがとうございました。すごく楽しかったです」


「ああ。俺も楽しかった。次は……東京予選もしくは、関東予選で」


「はい。次は絶対負けませんからっ!!」



 俺と菜穂ちゃんは握手をして、約束をした。

 また、戦おうと。



選手名鑑?「天下原乃蒼」 ポジション:アラ


シュート:? ドリブル:? ディフェンス:?

スタミナ:? スピード:?

※現在情報収集中


・関東最強と言われる選手。全国個人ランクは3位。昨年の全国大会では準優勝し、今最も全国優勝に近いとも噂されている。また、桜庭楓と同じく『勝利の瞬間』という常軌を逸した「才能」が宿っているらしい……? 成長を続ける星々と激突する日はいつか……

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