☆②─15話 シスター・……デート!?
で、デートというわけで腕を組みながら2人で歩いているわけなんだが……
「ねぇねぇあの子すごく可愛くない? 芸能人かな?」
「子役女優だったりするんじゃない?」
凪が目立ちまくっている。こうなるかもとは思ってたからこいつと並んで歩くのあんまり好きじゃないんだよな……。だって、
「横の男なんか根暗っぽくない?」
「ねー。顔はちょっと良いけど暗いよね。ウケる」
凪と比べられてこんなこと言われるからだ。全部聴こえてるんだよ。ウケてんじゃねぇ。こっちは何も面白くねぇわ。
こんな俺だって中学の頃はちょっとだけモテてたんだぞ。ほ、ほんとだからなっ!
俺たちはショッピングモールに着くと、まずどこに行ったかというと……
「なんか予定とかあるのか?」
「うん。こっち」
凪に腕を引かれて連れていかれる。そこは……
「ペットショップ?」
ワンワン、ニャーニャーと犬と猫の鳴き声が響き渡る店内。凪は子犬を見たりしている。
「可愛い~♡」
「お前、犬好きだったのか?」
「うん。おにぃは好きじゃない?」
「俺は猫派だ」
俺は凪とは対照的に子猫を見ていく。
ニャーニャーというよりナーナーと鳴いているように聞こえる。
まるで「私はか弱い小動物なのです。飼ってくれませんか?」とこちらに訴えかけてきているようだ。
うぅ、すまん。ウチで飼ってあげることはできないんだ……。
「おにぃ何やってんの?」
「うおぉ! どした!?」
「いや、おにぃ1人で悶えてたから何してんのかなって……」
よく見ると周りのお客さんまでこっちを見ている。そんなに俺キモイ挙動してたの? 凪までこっちを心配してる目だ。
「やっぱこういうの見ると飼いたいって思うよね?」
「世話とか大変だろ。それに母さん犬苦手だから俺たちがいない時に世話ができない」
「わかってるもん。言ってみただけ」
凪は口を尖らせる。そういえば俺もかなり昔に父さんや母さんにこんなことを言って困らせてたかな。
「クラスで友達の里香ちゃんがね。犬飼ってるの。トイプードル」
「へ、へぇ~」
友達の、里香ちゃんね。友達……。
まだ転校して1ヶ月経たないくらいなのにもう自然と口に出るように友達の話できるんだ? さすが妹。お兄ちゃんの陰キャ具合を改めて認識させられるよ。スマンがトイプードルの話より里香ちゃんが気になってしまった。
「それで飼いたいな~って」
「今は無理だけど凪がもっと大きくなった時に母さんと相談してみたら? 母さんの犬嫌いは仕方ないけど何か良い道があるかもしれない」
俺は凪の頭を撫でてやり宥めながら言い聞かせる。俺にもペットを飼いたい気持ちがわかるからこそ応援をしてやりたい。
「今はおにぃがいるから我慢できる」
「え? おにぃ知らない間にペットにされてたの……!?」
衝撃の事実だ。俺ってとうとう妹からも人間として扱われていなかった……? 「お前は私の家畜だぞ」という隠されたメッセージです?
「そうじゃなくてっ! おにぃがもっと私に構ってくれたら寂しくないよってこと!」
「そうか。じゃあ母さんを犬から守るために俺が凪をいっぱい構ってやらないとな」
「そこはお母さんじゃなくて『凪のこと大好きだからこれからもずっと一緒だよ』って言ってよ」
「え?」
なんか変なセリフが一瞬当たり前の日常会話のように通り過ぎていった気がするが……気にしないでおこう。
次はフードコート。もう早めにご飯を済ませておこうと決めて11時半だが昼食に入ることにした。全然おかしい時間でもないしむしろちょうどいいだろう。
「凪、何食べる?」
「私はうどんかなー。ちょっと行ってくるね」
「1人で大丈夫か?」
「私だってもう小学生の高学年なんだから大人なんだよ? 結婚だってできるもん」
「『小学生』と『結婚』ってワードを同居させてて何もおかしいって思わないお前におにぃビックリだよ」
自分で小学生と言ってるはずなのに結婚て。
言ったら絶対に怒るだろうけど、この発言のフワフワ具合というのか……。どこか母さんに似てる気がするなぁ。
そこが似ちゃったかー。非常にマズイところを受け継いじゃったね凪ちゃん……
フードコートでの昼食なので各自食べたい物を決めてその店に注文しに行く。凪はうどんを買いに行くというので俺は席でも取っておいてやるか。
空いている席を見つけて座る。
凪が注文を済ませてこっちに戻ってきたら俺が席を離れる番だ。凪を待っている間に何を食べるか決めておかなければ。
「……ん?」
俺が店を物色していると知っている顔を見かけた。いや知っているどころではない。最近俺の頭を悩ませている張本人だ。
そう、宇津木詩織である。
宇津木もここで昼食を取ろうとしているようだ。
だが、驚くことに1人ではなく、なんと男がいた。
(彼氏……なのか?)
あの他人をゴミか何かとしか認識していないであろう超高飛車お嬢さんが友人の舞依たち以外とこんなところを歩くなんて信じられん。
しかもだ。相手は俺より年上で20歳くらい。
そのせいか彼氏と彼女というより兄と妹。もしくは叔父と姪。ただ、似てはいない。だから親族という関係ではなさそうに見える。
特徴といえば遊びに来ているだろうに服装はなぜかスーツ姿だ。かなりの長身でイケメン。あとは……どこか少し近寄りがたい印象がある。なぜだろうか……。
宇津木もまだ小学6年生の女の子とはいえ、将来絶対に超絶美人に育つだろうなと確信するほどにポテンシャルが高い。というか今も美人だし。ある意味でお似合いの2人でもある。
「けど、なんか引っかかるな」
宇津木はその男がついてくることをどこか嫌がっているように見える。表情もずっと仏頂面だ。そこから考えて決して彼氏とかではないよな。
……なんだか危ない臭いがしてきたぞ。
最近の宇津木は間違いなく何かに悩んでいる。その種こそが……あの男ではないのか? そう考えるのは飛躍しすぎか?
「なんにしても気になる。ちょっと話しかけに……」
俺は席番にも関わらず席を立とうとする。
遊びに来ているところにいきなり話かけるのも水を差すようで嫌だが、どうしても宇津木のことをはっきりさせたいという想いが強かった。
俺が宇津木の方に向かおうとすると……
「おにぃ、席取っててくれたの? ありがと」
「え? あ、凪……か」
凪が帰ってきた。手には注文した料理が出来たのを知らせる呼び出しベルを持っている。うどんを注文し終えたのか。
もう一度宇津木の方へ視線を戻すと……もう宇津木たちはいなくなっていた。ここで昼食を取るのを辞めたのか。
「おにぃどしたの? 立ち尽くしてるけど」
「なんでもない。俺も注文してくる」
行先を失って立ち尽くしていた俺はそのまま昼食の注文に行くことにした。頭の中はまだ宇津木のことでいっぱいだ。
「おにぃ、おいしーね」
「そうだな。落ち着いて食べろよ。時間はたっぷりあるんだ」
「わかってるってば」
凪が食べているのはざるうどん。俺は醤油ラーメンにチャーハンだ。凪はなんの天ぷらもつけずにうどん1つだけなので本当にお腹いっぱいになるのか不安だ。
「俺のラーメンも食べるか?」
「今はダイエット中だからいい」
はー。小学生でダイエットってか。全然太ってないくせに何を絞る気なのか。女子のこういうところはいつまで経ってもわからん。
「ダイエットっていうならスポーツすればいいだろ?」
「例えば……サッカーのマネージャーとか?」
「それはスポーツじゃ……いや、悪い。その話題はもうやめよう。俺が悪かった」
凪はくりっとした瞳でジロリと睨む。どうやらまだ俺がフットサルから遠ざけようとしていたことを根に持っているみたいだ。悪かったって。




