☆②─2話 新メンバーを見つけますっ!
「ねぇ舞依。あの件、どうするの?」
近衛学園初等部、休み時間。宇津木詩織は教室で立花舞依に話しかける。用件は昨日の部活のことだった。
☆
~昨日~
「新メンバーが欲しい!」
5人の少女の前で、監督である桜庭楓は宣言する。
「急になによ? 幼女をもっと増やしたいってこと?」
「ちげぇよ! ああいや、合ってるは合ってるんだけど……」
宇津木は呆れた顔をする。言い方ってのがあるじゃんさぁ。
「フットサルはサッカーと違って選手交代に関するルールが非常に緩いんだ。だからこそ、そこを上手く使うことで戦略が大きく広がる。なにより、このままだと誰かが怪我でもしたらいきなり一人減った状態で戦うことになるんだぞ?」
このまま5人だけで試合を行うことは綱渡りがすぎる。来栖谷との試合では何も起こらなかったが……あれは運が良すぎた。常時ビクビクして試合を見るのはもう勘弁願いたい。監督としては心臓に悪いのだ。
「でも、誰を入れるって話にもなるわよね?」
「そこでだ。『勧誘』をしてほしい」
「勧誘?」
5人が声をそろえて疑問符を頭の上に浮かべた。
「そうだ。同じ学年でも後輩でもなんでもいい。サッカー、フットサル経験者だろうが初心者でも。興味を持ってくれる人がいたら声をかけて体育館に連れてきてほしいんだ」
ここは舞依たち頼りになってしまう。
さすがに女子小学生相手に高校生の俺が「君、フットサルやらない? 体育館に来て」なんて言ったら即逮捕。全然普通の言葉なのに怪しく聞こえてしまうのがとても残念だ。
そこで舞依たちにそれを頼む。同じところで学ぶ生徒の話に関して少しくらいは耳に入ってくるだろう。あの子はサッカーやってたとか、サッカー好きだとか。
そんな子をサッカーではなくフットサルの道へと引き込む。まさに「ロリの道を知るのもまたロリ」というわけだ。うむ。けっこう良い言葉だこれ。気に入った。
「いいかな?」
「いいけど……うまくいくかなー?」
あの亜子でも不安そうだ。
わかる。わかるぞ。これは勧誘自体の不安もあるが、それだけではない。今まで自分たち5人でやってきたフットサル部に他の人が入るというのも思うところがあるのだろう。
それに関しては我慢……というわけではないが、どうか輪に入れてやってほしい。同じフットサルをやる仲間として。無理にやらせるつもりはないけど「仲間」を作ってほしいというのは本当の気持ちだ。
「じゃあ、頼んだぞ」
☆
ということが昨日あった。
「楓さんの頼みだから……頑張るっ!」
「はぁ。あんたあの豚にお熱すぎよ」
グッと小さな拳を握りしめ、舞依の瞳に映るメラメラと燃える炎を見ると詩織は大きな溜息をつく。
「楓さんは豚さんじゃないもんっ!」
「あーはいはい」
さすがに舞依相手に豚だなんだと言うのも気が引けるのでこの「楓が豚かどうか」の話は始まる前から終了。話を勧誘の件に戻す。
「もう亜子達は動いてるらしいけどね。張り紙とか声かけたりとか」
「じゃあ私たちもやろうっ!」
「えぇ……」
舞依はガタッと椅子を吹っ飛ばす勢いで立ち上がる。それに詩織はあまり乗り気ではなかった。その反応が舞依は気になってしまう。
「新メンバーが入れば一気に……ええと……」
「戦略が広がる、でしょ?」
「そうっ! そうなるんだよ?」
詩織が補足してあげると舞依はそれそれ! と自分のセミロングの髪をぴょんぴょん跳ねさせて元気に反応する。
完全に余談だが舞依はこういった無垢な反応がクラスの男子の間で密かに人気になっている。今もチラッとこっちを見てきた男子が何人かいた。
「そうね……まぁ考えとくわ」
「もうっ!」
それでも詩織の返答は微妙なもの。ただこれには訳があった。
(私には、きっとなんの意味もないもの……)
詩織は舞依の見ていないところではぁ……とまた溜息をつき、窓から見える空を見上げた。
☆
~高等部~
「今日はフットサルないんだよなぁ」
俺は教室でボーッとしていた。
考えてみれば放課後はあの子たちとの時間しか予定がないからフットサル部のない日は基本的に俺は暇人になる。
なんの楽しみもない一日ほどつまらないものはない。その日の全てが作業になってしまった感覚だ。俺って毎日ロリを楽しみにして生きてたんだな~。
「おーい。なにボンヤリしてんの」
と、俺が腑抜けていると白戸が話しかけてきた。
「白戸か。今日はフットサルがないだろ? そうなると俺はやること何もないから暇だなーってな」
「一日でさえもロリ成分を摂取できないと禁断症状が出るってこと? うーわ気持ち悪っ」
「お前、俺の話を最初から聞く気ないだろ」
なんでわざわざこんなこと言いに俺のとこに来るんだよ。これだからぼっちは……。あ、俺もぼっちだった(笑)
「あんた、そんな暇だったら自分の生活をどうにかしたいとは思わないの?」
「俺の生活?」
「友達作るとか、なんか趣味見つけるとか」
友達に趣味か。ここで「サッカーやらないの?」って言わないあたり俺も気を遣われてるのかね。
けど、そうだよな。舞依たちのことばかり気にするより俺自身も止まったままじゃダメだ。いい加減中学のことに踏ん切りをつけて高校生活をより良いものにしなければ。
「にしても友達かぁ。中学の頃はどうやってできてたんだろう。自然にできてたような……何かあったような……」
「ま、あんたみたいな根暗じゃ当分できないだろうけど」
「そのセリフお前にだけはどうしても言われたくなかったよ。自分のことどう評価してるんだよ。お前も相当な根暗だろ」
「女は顔と身体さえ良けりゃアホな男が話しかけてくる」
最低な発言だなオイ。しかもそれ友達とかそういうのじゃなくない?
あと、お前は自分で自分のことを可愛い女子と思ってるんだな。たしかにこいつはすごい可愛いんだけど。性格以外がな!
「今日、委員会とか決めるしそれで一緒になれた奴と仲良くなったら?」
なるほど。委員会か。
どこの学校でもそうかもしれないが、この学校では生徒はそれぞれ何かの委員会に属さなければいけない決まりがある。各クラス2名ずつで色んな委員会に割り振られるのだ。
決め方は別に固いものじゃない。やってみたい委員会があるなら挙手して希望したり、決まらなかったら人気のない委員会に勝手に配属されたり。そんな感じだ。
「しかしなぁ……まだ俺にはハードルが高い。なぁ白戸、一緒に同じ委員会に入らないか? お前だって知らん奴と一緒になるよりかマシだろ?」
「え……? あ、………うん」
うわ……今こいつ「お前と一緒になるよりか知らない奴と一緒になった方がマシなんだけど……」って顔した! うっそだろお前……今のは結構傷ついたんだけど! 俺って他人以下だったの!?
「白戸、お前……」
「別にいいけど。で、何委員会に入る? 大変そうなのはパスで」
そう言われるとどうするか悩むな。俺は教室に貼られている「委員会一覧」を見てどの委員会にするか決める。
「うーん。じゃあ図書委員会とかどうだ? 楽そうだろ?」
「じゃあそれで」
「よし。決まりだな」
これで俺と白戸は契約完了。一緒に同じ委員会になることが決定した。
~数分後~
「それでは今から委員会を決めようと思います」
このクラス1-1の担任の先生が教壇で生徒を見渡しそう宣言する。
「それではまず、美化委員会に入りたい人は挙手を」
始まった! 一番手は美化委員会。俺と白戸が狙っているものではない。なのでここで手を上げてはだめだ。
「次、図書委員会」
いきなり来た! さぁ白戸、いくぞ!
「はい」
俺は手を上げる。想定ではここで挙手した人数は2人以上のはずだ。
もし規定人数から溢れるとジャンケンとかで決めなきゃいけなくなる。そうなれば白戸と同じになれるかどうかは運次第になるんだが……
「2人、ですね」
おっ! おおっ!! ちょうど2人? ということは……ということは?
「桜庭楓くんと綾瀬秋乃さんですね」
いや誰やね~ん!! 白戸やないんか~い! って、ちょっと待て。ちょうど2人だというのにお前の名前が挙がらないのはなぜ……?
俺は自分の席の列の後ろを見る。白戸の席を確認すると……
「……zzz」
(寝てるしっ!!)
なんで委員会決める時間なんかに寝てるんだよ! そもそも寝るの速すぎだろ。まだ休み時間終わって5分経ったか怪しいくらいなのに。
こうして俺は知らない人(しかも女子)と同じ委員会になった……。
ちなみに白戸はずっと寝ていたせいで最後に余ったので人気のなかった「掲示委員会」というものに決まっていた……




