☆②─1話 マイ・シスター
お待たせしました。2つ目の話がようやく書き終わりましたので公開していきます。「40話」と表記してもよかったのですが、「ここからここまでが一つのお話ですよ」とわかりやすくしたかったので②─1話としました。もしかすると今までの話も「①─1~39」と表記するかもしれません。
ではでは、2本目もよろしくお願いしますー!
俺は、近衛学園初等部の体育館にいた。
あれ……? 俺は何のためにここにいるんだっけ?
「楓さんっ」
元気に跳ねるような声と共にヒョコッと俺の視界に現れる体操服姿でセミロングの女の子─舞依だ。そうだ、俺は舞依と個人練習をするためにここにいるんだっけ?
「楓さん……練習を続けましょう」
「そう、だな」
俺はまだ微睡がかった頭を動かして舞依に従う。
「舞依。今のお前の全てを見せてくれ」
俺に舞依に指示をとばす。
今、舞依はどこまでできるのか? どんなところが苦手なのか? そういうことを知りたくて言った言葉なのだが……
「わ、わかりました……。はいっ!」
そう言って舞依はいきなり自分の体操服をペロンッと捲し上げる。……捲し上げる!?
「ちょっ、舞依! 何してるんだ! やめなさい!」
「私の全てを見てください! 楓さんっ!」
「ストップストップ! そういう意味じゃない! や、やめろ!」
俺は慌てて目を閉じる。目の前には(おそらく)上半身半裸の舞依。この状況を誰かに見られたら選手に脱ぐのを強制させた変態監督という汚名を学園中にとどろかせてしまう。マズイ……!
「そういう意味じゃない……? 上じゃなくて下ってことですねっ! わかりましたっ!」
「全然わかってない!!」
舞依はハーフパンツも脱ぎ(おそらく)パンツだけの姿になる。アカン。これは、アカン。
「舞依、ダメだ! 早く着なさい!」
「『来なさい』……? わかりました!」
「アカーン!!」
肌色成分90%の舞依はそのままギュッと抱き着いてくる。
肌から直接伝わる温かさやフワリと匂うフローラルの香り。
ロリってこんなにあったけぇものだったんだ……。ずっとロリとくっついていればカイロなんていらないじゃないか。
「楓さぁん♡♡♡」
「あぁ、もう、どうでもいいやぁ……」
俺は諦めと同時にバタリ、とその場に倒れた。
☆
ジリリリリリリリリ!!
「はっ!」
突然鳴ったうるさい音のせいで俺はガバッと起きる。体の上には布団が掛かっていて、場所は体育館などではなく自分の家の自室。
「あれー? 舞依ー? どこだ?」
寝ぼけ眼で俺はここにいるはずのない舞依を探す。あの温かさを求めて。
その時、ドアの方から妹の凪の声がした。
『おにぃどしたの? 何か探してるの?』
「いや、舞依が……」
そこまで言った時、覚醒した。俺は何を言ってるんだ。アホか俺は。そしてなんというアホな夢を見ていたんだ。
『まい?』
「なんでもない!」
すぐに否定する。自分の兄が朝からロリを求めていたなんて知れば激しく軽蔑することだろう。
『早く降りてきなよ?』
「お、おう」
時計を見てみるとちょうどいい時間。きっと凪も今さっき起きたとこなんだろうな。まさかお兄ちゃんがロリの夢を見て目覚めたとは思うまい。
さて、今日からどんどん忙しくなる。なにせチームの課題は山積みだ。気合い入れて頑張るぞ!
俺は自分の頬を叩いて眠気を追い出し、自室を出た。
1階に降りてリビングに行くとテーブルには父さん、母さん、そして凪がいた。
「ほひぃ、ほはほう」
「はいはい。おはよう。口に食べ物なくなってから喋ろうな」
俺は挨拶してきた凪の横に座る。
なんだか最近は偶然なのか、すごく上手い具合に顔を合わせなかった気がするからこいつの顔を見るのもちょっとだけ久しぶりなところがある。
糸のように細く綺麗な髪。水色のリボンでツーサイドアップにした髪型はこいつに合っている。両側にピョコンとある小さいテールは小動物感を醸し出し守ってあげたいと思わせる。
パッチリとした目は整った顔立ちと共により可愛さを引き出す。
……妹のことに何を熱くなって解説してるんだか。
俺と凪ははっきり言うとあんまり似てない。父さんと母さんのパーツを引き継いではいると思うのだが並べて見るとよく「似てない」って言われる。その代わり凪と母さん、俺と父さんを比べると「似てる」と言われるんだけどな。
(こいつ、東京に来た時いきなりモデルのスカウトみたいなの受けまくってたんだよな……。俺も一緒にいたはずなんだが俺には全然話が振られなかった……というか眼中にすらなかったのかも)
「おにぃなにジロジロ見てんの?」
「いや、なんでもない」
母さんが「朝ごはん持ってくるね~」とパタパタとキッチンの方に向かっていく。俺はそれを待っていると父さんがトースト片手に凪に向かって余計なことを言ってくる。
「凪。お前まだ『おにぃ』とか言ってんのか?」
「別になんでもいいじゃん……」
凪はちょっと顔を赤くして父さんから視線を逸らした。
呼び名って中々変わらないんだよな。長い間「パパ」「ママ」と言ってるとそこから「父さん」「母さん」と呼ぶきっかけが見つからないというやつかもしれない。別に気にしなくていいと思うけどな。「おにぃ」、俺はいいと思うよ?
「前も言ったけど学校では『お兄ちゃん』って呼んでるんだよな?」
「それもうツッコまなくていいから……ってかそれなんで知ってるの?」
「それは、」
俺は舞依に聞いたとは言えないため凪から視線を逸らす。父さんは大笑いしそうな顔してるよ。ウゼェ。
「じゃあ、おにぃは『おにぃ』って呼ばれるの嫌?」
「むしろ『お兄ちゃん』って呼ばれるのも今はむず痒いかな。このまま『おにぃ』続投でいいぞ」
「シスコン」
「なんでそうなるんだよふざけんな」
どう答えてもシスコンから逃れられない質問やめろ。俺はようやく出てきた朝ごはんのトーストにジャムを塗ってかじりながら溜息をついた。
そういえば俺がサッカーやってた頃は凪もサッカーやってたんだ。結構上手かったのに辞めちゃって少し勿体ない。多分俺がサッカー辞めたことに原因があると思うのだが……。
「なぁ凪」
「何?」
凪はトーストを食べ終えてティッシュで口回りを拭いていた。あ、頬にハチミツついてる。
「お前、またサッカーやる気はないのか? いや、サッカーとかじゃなくてもフットサルとか……」
近衛学園初等部女子フットサル部は今メンバー集めに必死になっている。
5人だけで全国大会を制すなんてほぼ無理ゲーだ。フットサル部という場所はあの子達5人にとっての居場所のようなものでもあるだろうがこればっかりは仕方ない。
そこで俺はサッカー経験のある凪をフットサル部に引き込もうと思った。
だがこれを言った時に自分のミスに気づく。凪がフットサル部に来るってことは監督の俺とあそこで出会ってしまうということだ。
すると俺が女子小学生たちの監督をしてたことが思い切りバレる。何言われるかわからんから今まで避けて来たのになんで自分から死ぬようなことをしてしまったのかと激しく後悔する。
しかし……
「……やんない」
「そ、そうか。悪いな。あはは……」
わりぃ。内心セーフ!!!!って思っちゃったよ。舞依達からすれば欲しい戦力だろうに。
「ねぇ、おにぃは……」
「ん?」
「……なんでもない」
凪は何かを言おうとして、でも言うのをやめて俯いた。
察したよ。どうせ「おにぃはまたサッカーやらないの?」だろ。
凪は度々それを気にしてる。俺がサッカーの試合をテレビで観る時やサッカーに関する話題が出た時はいつもそうだ。
観たり、話をしたりするのは別にいい。でも、やるのだけは、まだ…………。
「朝からそんな暗い顔するな。ほら、顔上げろ。ほっぺにハチミツついてるぞ」
「へ!?……むぐ」
凪がビックリしてこっちを向いた時に俺は指で凪の頬を拭ってやる。
おぉ、なんてスベスベモチモチとしたほっぺなんだ。さすがJS。我が妹とてそこは変わらんか。
「あ、ありがと」
頬が朱に染まると同時にお礼を言ってきた。
構わん、妹の面倒を見るのは兄の仕事……もとい、おにぃの仕事だ。
だが次の行動がダメだった。俺はその指についたハチミツをペロッと何の気も無しに舐めてしまう。それを見た凪は一気に顔が茹で上がったかのように赤くなる。
「なっ!! なんで舐めるのバカおにぃ! バカバカ!」
「いてっ、いててっ」
横からポカポカポカとハンマーパンチが襲い掛かる。別に兄妹なんだから気にすんなよなー!
凪は恥ずかしそうにそのまま「行ってきます……」と言って半ば逃げるようにして家を出た。可愛いところもあるかと思ったら変なところで狂暴だ。
凪が出て行くと、それを見計らったかのように父さんが口を開いた。
「楓」
「なんだよ」
「お前が逃げ道を作ってる限り、向こうも逃げ道を用意するんだぞ」
は……? いきなりなんだ。何が言いたいんだよ。回りくどい言い方だな。そんなわかりにくい言い方じゃ俺はなんの反応もしてやらないぞ。
「……行ってきます」
なんだか居心地も悪くなり、俺も退散することにした。
逃げ道……か。もっとサッカーと向き合えとでも言いたいのだろうか。
俺には俺のペースってのがあるんだ。急かされてやるようなことじゃないだろ。
選手名鑑①「立花舞依」ポジション:ピヴォ
※パラメーターは5段階評価(例外あり)
(平常時)
シュート:1 ドリブル:1 ディフェンス:1
スタミナ:3 スピード:6
(ゾーン状態)
シュート:4 ドリブル:4 ディフェンス:3
スタミナ:0(約40秒) スピード:7
・桜庭楓に導かれた少女。過去の英才教育によりいつでもゾーンに入れるという特異性と驚異のスピードを持っており、その速さはなんと未だ成長中。……が、足元の技術が壊滅的で実はシュートもよく枠から外れる。しかし、豊富な陸上大会経験から誰よりも本番には強い。




