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すぴーどすた~☆ ~近衛学園初等部女子フットサル部~  作者: 四季 雅
第1章 ☆チーム結成編!☆
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☆39話 「『さっかー』ってなんですか?」



 わたし、立花舞依。小学()年生。今はおじいちゃんに言われて街を走っています。


 おじいちゃんは厳しいです。ずっと走らされてわたしが泣いても「走れ」って言います。

 わたしが走る時にいつも「すとっぷうぉっち」というもので時間を計っています。おじいちゃんはそれを見てたくさんたくさん怒ります。

 お父さんも厳しいです。おじいちゃんといっしょになって怒ります。昔はいっぱい遊んでくれたのに今は笑った顔も見なくなりました。


 毎日毎日いっぱい走ります。いっぱい怒られていっぱい泣いてまた明日も同じことをします。

 たまに「たいかい」というものに出てそこでも走ります。一番を取るとおじいちゃんとお父さんは「それでいい」と言います。でも笑ってくれません。


 そこで一緒に走った子は皆わたしをこわい顔で見てきます。まるでお化けを見たような顔です。あまり「たいかい」で走りたくありません。

 今日も昨日と同じです。ただ走るだけです。この後も短いきょりを早く走るれんしゅうが待っています。




 もう、いやです。やめたいです。走りたくないです。




「おっと!」


「あ、あうっ!」



 下を向いて走っていたらだれかとぶつかりました!

 わたしはコテンと尻餅をつきました。その時、わたしはすぐに足を気にします。けがをするとおじいちゃんがすごく怒るからです。


「ごめん! 大丈夫?」


「あ……だいじょうぶ、です」


 顔を上げると男の人が手を出してきました。わたしはそれをおそるおそるさわります。あまり男の人と話したことがないから少し怖いです。

 男の人は「ちゅうがくせい」という方でしょうか。手にはなにやら白黒のボールを持っています。へんてこなボールです。「ぱんだ」みたいです。


「ん? これ気になるの?」


「え? あ、あうぅぅ……」


 わたしがボールをジッと見てたことがバレました! すると男の人はそのボールをパッと放すとポンポンと足で上手にけっています。

 ……わわっ、すごいです。ぜんぜん地面に落ちません。この人、もしかして「ぴえろ」という方でしょうか?


「俺、サッカーやってるんだ! 君もサッカーに興味あるの?」


「え、え、えぇぇと、わたし、走ったこと、しか、なくて、その、『さっかー』っていうの、その、よくしらなくて、」


「え!? サッカー知らないの!? テレビで見ない? 同じ学校の男子は?」


「あううぅぅぅ……」


 この人すごくグイグイ聞いてきます!


「そっかぁ~。走るのも良いけどさ。せっかくの脚なんだぜ。走るだけじゃ勿体ないじゃん! ボールを蹴るのすっごい楽しいぞ? ほらっ!」


 そう言って男の人はポイッとわたしに向けてボールを放ってきました!

 わたしは思わず脚が出てその、「ぱんだ」みたいなボールをけってしまいます。



 ボンッ!



 ボールはそんな音を出してはずみます。そのボールは男の人の方にとんでいきました。


「おっと。へへっ、ナイスパス!」


「????? ないす? ぱす?」


 この人なに言ってるかわかりません!

 ……でも、なんだかこの人すごくたのしそうです。笑顔でボールをポンポンと上手にあやつっています。やっぱり「ぴえろ」です。


「そうだ。俺のチーム、また近い内にサッカーの試合あるんだ。テレビでもやるからさ。見てみろよ! 絶対楽しい試合にするから!! あ、チームは『三滝(みたき)中学校サッカー部』ってとこなんだけど」


 そこまで言った時、どこかから別の人の声がします。


「おーい(かえで)! お前こんなとこにいたのかよ! 探すの大変だったんだぞー!」


「あ、わりぃ!」


「お前……なんで修学旅行にもサッカーボール持ってきてるんだと思ったら。ホテル抜け出して何やってんだよ。そろそろ点呼あるぞ」


「マジか!」


「お前ほんとサッカーのことになるとやることメチャクチャだなぁ。兄がこんなサッカーバカだから凪ちゃんも心配するわけだ」


「凪のことはいいだろ……」


 この人のおともだちさんでしょうか。なにやら「ぴえろ」の人が怒られています。


「えっと……もし良かったら応援してくれよな。君、名前なんて言うの?」


 名前聞いてきました! お父さんはあやしい人には名前をおしえちゃいけないよと言っていましたが……「ぴえろ」はあやしい人なのでしょうか? わかりませんが、わるい人じゃなさそうなのでだいじょうぶそうです。


「え、あ、あぅ、た……」


「た?」



「た、ば、……、ぁ……、ひ!」



 男の人とお話したことがあまりないせいか声がでません! しかもきんちょうのせいかさいごへんな声でました! これじゃわたしがあやしい人みたいです!



「……『たんば あき』?」



 ぜんぜんちがいます!!


「じゃあアキちゃんだな。またなー!」


「ぁ……な、なまえ」


 言うだけ言って行ってしまいました。名前を聞いておいて自分は言わないなんてひどいです。


 ただ、「さっかー」ですか。すごくふしぎなものです。今でもあのボールをけった足が少しだけジンジンします。足をけがしたらダメなのに。

 なぜか、それがけがのようなものではないと……すぐにわかりました。




 それから何日か過ぎてある日。テレビをつけた時に何かのスポーツが映されていました。

 いつもは「プ〇キュア」のようなアニメしか見ないのですが今日はふと目にとまりました。


 よく見ると、あの「さっかー」というやつです! しかも「さんたきちゅうがっこう」と書いています!

 あれ……あの人は「みたきちゅうがっこう」と言っていた気がしますが……この「三」は「み」と読むのでしょうか。むむむ。



『すごいすごい! またも三滝中の得点です! そして今回も桜庭選手のパスが冴えてますね~』


『得点には必ず彼が絡んでいますからね。もしかすると近い内に化けるかもしれません。底知れない才能を感じます』



 む。あれはあの時の人です!


 わわっ……すごいです。あんな遠いところからビューンッってボールをけっています! あの人「ぴえろ」じゃなくてクラスの男の子が好きな「かめんらいだー」の人でしょうか?

 わたしいつも「プリ〇ュア」見てるのでその前にやってる「かめんらいだー」は知ってます。へんし~ん! ってしてばちこーん! って敵さんをキックしてビューンって飛ばしています。きっとあれです。


『桜庭選手。今年から全国に手が届くようになりましたが、試合終わって一言ありませんか?』


 なにやらきれいなお姉さんに「いんたびゅー」されてます。顔が真っ赤です。どこ見てるんですか。



『えっと……そうだなぁ。何言えばいいんだろう。あ、そうだ。アキちゃーん! 見てるか? 勝ったぞー!』


 きゅうにテレビでわたしの名前を呼んできました! びっくりです! でも、その名前ちがいます!


『あ、アキちゃん? えっと……もしかして桜庭選手の彼女さんだったり?』


 しかも変なこと言われてます!


『いやいや! そんなんじゃないです。その、……前に修学旅行で会った子なんですけど、サッカーに興味を持ってくれたみたいで。それでその子に今日の試合を見ててって言ったんです。見てくれてるかはわかりませんけどね』


 覚えててくれてたんですね。少しだけ胸の奥が温かくなってきました。この気持ちはなんでしょうか……。


『それはそれは。なぜ試合を見てくれと?』


『俺、サッカーはこんなに楽しいんだぞって見てくれてる人に教えるために試合も楽しさ第一でやってるんです! もちろん勝つことも大事ですけど。でも、一番はやってる人も見ている人も楽しいって思えるサッカーで、俺はそれを目指してるんです!』


『なるほど。三滝中学校と言えばチームワークで有名になりましたからね。将来がすごく楽しみです。きっと来年はそのサッカーを体現できるようになっていますよ』


『ありがとうございます!……じゃあ最後に。アキちゃん、サッカーが面白そうって思ったらやってみてくれよ! 絶対楽しいって思えるから! 俺もずっとずっと、サッカー続けるからさ!!』


『はい。元気あるメッセージをありがとうございます。桜庭楓選手のインタビューでしたー』



 ……。「さっかー」、ふしぎです。見ていると、ワクワクします。

 この人もふしぎです。言葉がすごく温かくてポカポカしてきます。


 それに……この人の笑顔を見るとなぜかドキドキします。とても楽しそうに「さっかー」をしている姿はすっごくまぶしいです。きれいです。キラキラしてます。お星さまみたいです。




 わたしもあんな風に……なれるかな。




「さくらば……かえでっていうんだ……」


 それからいっぱいいっぱいこの人の「しあい」を見ました。

 どの「しあい」も星みたいにキラキラした笑顔でやっています。「たいかい」で暗い顔して走ってるわたしとはまぎゃくで……それを見るたびにドキドキします。なんだか顔も熱くなってきました。風邪をひいちゃいましたかもです。


 学校に行って、お昼休みになると体育館に行くようになりました。

 そこでボールを探します。あの白黒の「ぱんだ」みたいなボールではないですが……同じ大きさくらいものを見つけて自分の脚でけってみます。


「あ、あぅ……」


 「かえで」くんとちがって変な方向に飛んじゃいます。これすっごくむずかしいです! わたし、ヘタクソですっ!


 でも、今はヘタクソだけど、いつか、いつか、いっぱいうまくなって、










 「かえで」くんといっしょに「さっかー」したいなぁ……









 夜空のように暗い顔で走ることしか知らなかった少女は、あの日出会った眩しい笑顔の少年といつかまた会う日を夢見てボールを蹴りながら道を進む。


 1人の少女に星のような光を見せた少年は、仲間達との輝かしい未来を夢見てボールを蹴りながらその道を進む。


 

 夜空と星。2つが合わさればそれは何よりも綺麗な星空となる。




 2つの道が交差する時は、まだまだ先のことである……



 これで「すぴーどすた~☆」の1つ目の話は終了となります。楓と舞依の現在と過去がそれぞれ交差する始まりのお話でした。

 次の話はただいま書いておりますのでもうしばらくお待ちください。またノベル1巻分くらい完成したらどんどん出していきます。

 次の話はチームのツンデレ(?)司令塔と、楓のツンデレ(?)妹の2人がそれぞれ主軸となった話になる予定です。はたして2人はデレてくれるのか……じゃなかった、と、とにかくお楽しみにっ!


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