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すぴーどすた~☆ ~近衛学園初等部女子フットサル部~  作者: 四季 雅
第1章 ☆チーム結成編!☆
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☆③─51話 鏡越しの君、僕を叩き割る



「ふー……」



 慧はスポーツドリンクを一口含んで、リビングの椅子に腰かける。

 運動した疲れもあるが、それ以外にも精神的な疲れもあった。



 楓には奈夕葉の性根のようなものを治すと言って彼女の練習参加を控えさせている。だが、それにも時間制限がある。試合が近いのだ。


 今日が木曜。それで明後日の土曜日に近衛学園の第三試合がある。

 この試合はただの試合ではない。負ければ近衛学園の敗退が決まるものだ。敗者復活はない。立花舞依の事情を聞いて知っている以上、慧もこれに遅れるわけにはいかないという焦りがあった。



 かといって、奈夕葉に「ちゃんとやれ」と言って治るものではない。最初は無意識に出てる癖みたいなものだと思っていた。だからそれを矯正するくらいの気持ちでいた。



 けれど、奈夕葉は自身の行動をちゃんと自覚している様子がある。それでいて、治すつもりもないように見えるのだ。


 これは厄介だ。本人が今のままでいいと望んでいるのだから。そうじゃなくてはまさか今日の今日のまでもつれこんではいない。




 現状を整理するだけでもっと疲れてきた。





 ──いつも、そうだった。



(なゆは、いつも、いつも……)




 子供の頃から、なゆはやればなんだってできた。




「ねー、おかーさん! 100点とれたー!」



 僕が、小学校のテストで100点を取ると、お母さんはとても喜んだ。


 そこから、勉強することがすごく好きになった。頑張れば頑張るだけお母さんが喜んでくれるんだから。




 なゆは、僕を見て真似した。




 妹だから兄を真似るのか。お母さんが喜んでいるから真似るのか。理由なんて知らないが、身近な存在としては当然の帰着かもしれない。



 なゆは、僕よりできた。小学校なんてまだ入学していないのに、もう僕の知らない中学の教科書なんて読んでいた。


 お母さんは、僕よりなゆを褒めるようになった。それ以来、勉強に精を出すことをやめた。どれだけ頑張ってもなゆの方が天才なんだから。







 僕はゲームにハマった。

 別にサッカーゲームだけというわけではない。色んなものをやっていた。楽しすぎて休みは一日中やる時もあった。親には注意されたけど。



 なゆは、僕を見て真似た。



 一緒にやれるような対戦型のゲームをやる時はなゆとやるようになった。


 でも、なゆは僕より上手かった。上手かったというと変だが、きっとゲームに対する解釈が良くて理知的なプレーができていたんだと思う。めちゃくちゃ負けまくった。


 僕はそれが嫌でゲームに熱中するのをやめた。どれだけ頑張ってもなゆに勝てるとは思えなかったから。








 僕は、一年前から夜走るようになった。


 サッカーのために体力を上げる目的だ。最初は面倒だったけど、サッカーのためならと思うと慣れてくれば楽しかった。実際、体力も上がって部活で効果も実感できた。



 なゆも一緒に走るようになった。


 正直意外だったけど、あんななゆでも勉強ばかりだと気が休まらないのかと納得した。



 徐々になゆが体力を上げていくのが怖かった。小学生の妹相手に何を言っているんだと思うかもだが、一緒に走っていると抜かれることがとても恐ろしくて気が気じゃなかった。また、以前のように自分よりも優れていることを結果として知らされるのが嫌だったんだ。


 そうなる前に僕は理由をつけてなゆと一緒に走るのをやめた。












 なゆが…………フットサルを始めた。





 やめてほしい。もうやめろ。


 僕の後ろをついてこないで。それでいて、追い抜いていこうとしないで。どうせなゆは僕を置いていくんでしょ? そうやってまた僕を諦めさせるんだ。




 フットサルなんて楽しくないよ? なゆには向かないよ? どうせやったって近衛学園が全国で勝ち抜くなんて無理だよ?





 だから、フットサルなんて辞めよう?





 これ以上、僕のところに入ってこないで。なゆが悪くないのはわかってる。



 でも、サッカーだけは……やめてくれ……!




 色んな言葉が喉から出ようとして、それを言葉にならない空気となって口から這い出た。

 最近、家に帰ってきて僕にフットサルの話をしてくるなゆの様子でわかる。




 フットサル、楽しいんだね。楓から練習試合の決勝点を決めたのはなゆだって聞いたよ。なゆはフットサル、向いてるんだね。本気で、全国優勝したいんだね。







































 …………いっそ、怪我でもすればいいのに。




















 いや。今のは最低。嘘。嘘だよ。そんなこと本気で思うわけない。














 嘘じゃ、………………ない。嘘なんかじゃない。



 僕は、最低な兄なんだ。なゆが同級生に疎まれて虐められていた時、相手が許せない気持ちの中に、ほんの一ミリ、それだけ、一寸ばかり。





「良かった」と思ってしまった僕がいた。





 何でも出来るなゆにもできないことがあるんだ! どうにもならないことがあるんだ!やった! やった!!




 こんなの。






 僕も、なゆを虐めていた奴と一緒じゃないか……






「にーに」


 俯く僕の傍に。いつの間にか、なゆがいた。




「しょうぶ、しよう」



 ─清算の時が来たのだ。







☆あとがき☆



 次回奈夕葉編決着です。鬱なエピソードを書くのが得意な自分でもこの話と次の話は書いてて悲しかったですね……。これを読んだ後思うと楓のことが大大大好きな凪ちゃんってすごいですね。中学の思春期になっても楓のこと好きなのかなぁ……

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