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すぴーどすた~☆ ~近衛学園初等部女子フットサル部~  作者: 四季 雅
第1章 ☆チーム結成編!☆
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☆③─47話 白銀一閃




 楓と詩織が1VS1の練習をしている時、雪姫がついている舞依と凪の方でも同じ練習が展開されていた。





「ボールを見すぎです。フェイントが甘すぎます。ボールタッチ最悪です」


「そ、そんなに……」




 全然上達しない舞依へのダメだし会になってしまっているのが少し残念なところだが……。




「んー。なんでかなー」


「どうしたんですか? 凪さん」



 は~、と息をついていると、舞依の練習の様子を見ていた凪が不思議がる。






「舞依ってボール自体は部が始まる前からいくらか蹴ってたんでしょ? 本格的に練習してまだ日が浅いから技術が身についていないのはわかるけど、ボールタッチまで全然身についてないのはなんか変だな……って」





 実際、フットサル部の中でもボールを蹴っている年数は元々楓と一緒にサッカーをやっていた凪に次いで長い。それなのに、フットサル部の中でもボールタッチはぶっちぎりでワーストだ。


 試合中の超絶技巧な技を見せるゾーン状態のせいでわからないようになっているが、素の力はまったく成長していないのだ。




「な、なぜでしょうか……? 全然才能ないんでしょうか……」


「あっ! いや、そういうわけじゃなくて! え、えっと~……」




 しょぼーんとする舞依にどうフォローしたものかと凪は困る。けれど、それは雪姫も考えていたことだった。




(たしかにこの上達の遅さは何かありますね……。私から見ても違和感はありますが、それが何かと言われるとわかりません)




 雪姫は困っている二人のところへ駆け寄る。一つ汗を拭うと、提案を持ちかける



「上達が早い遅いは仕方ありません。コツを掴むかどうかですから。ですが、時間が無いのも事実。ここは視点を変えて練習しましょう」


「視点を変えて?」





「苦手を克服したり、基礎スキルを上げるよりも、得意なことを伸ばすんです。それならば足踏みして時間を無駄にすることなく、上手くいけばファーストステージを乗り越える力に結びつくかもしれません」




 雪姫は全国大会経験者だ。サードステージまで進んだことのある猛者の中の猛者。ゆえに、短期間で少しでも力をつける術を知っている。



 決して劇的に変わることはないだろうが、悩んでばかりで特訓の時間を消費することは望ましくない。




「私の得意……」





 舞依の得意。自覚している部類で言うなら「足の速さ」だ。これだけは絶対に誰にも負けない。



 けど、それを伸ばしたところで意味がない。足をこれ以上速くしても仕方ないし、そこから先となると基礎スキルが足りない今は想像もできない。




 となると……






 (ゾーンの時間増強……!)





 舞依の切り札である『ゾーン強制解放』。陸上の100mでは強制解放時間は「1分」だったが、色々なことを気にしたり、ボールを扱う繊細な技術が必要だったりと、陸上との運動量の違いからか時間は「40秒」と短くなってしまっていた。




 これをせめて「1分」に戻したい。違いは20秒くらいだが、これだけあればゾーンを解放した自分なら1点取れる可能性がある。




「あの、柊さん。私と本気で勝負してくれませんか?」



「私と……ですか?」




「はい。それが、私の成長に繋がるんです」




 ゾーンの時間を伸ばすには、とにかくフットサルの運動量に慣れるしかない。


 それも、相当な運動量が必要となるであろう、簡単にはいかない強い相手との勝負。




 これまでゾーンの時間を大きく消費させられたのは来栖谷の南菜穂や、龍泉の朱堂瑠夏。このレベルになるとたった40秒では心もとない。しかも次戦うとなると当然警戒もしてくる。下手すれば40秒全部もってかれることもありうる。




 これまで戦ったどの相手よりもきっと強い……柊雪姫と戦えば、今よりもレベルアップが見込めるかもしれない。




「……わかりました。真剣勝負がお望みであれば、」




 雪姫は舞依からの勝負の申し出を了承する。

 舞依が自分で考えてそれが必要だと判断したのなら、






「推して参ります」








  〜☆☆☆〜









「はぁ………は……ぁ…………ぁ」



「……ふぅ。もう終わりにしますか?」





 舞依と雪姫との真剣勝負。




 始まってここまでで対戦回数はもう20回を超えた。




 戦績は、舞依の20敗。それも全て互いが交錯しようとする一瞬で終わり。瞬殺だ。






 21戦目が始まる。


 舞依が目の前の相手を抜くため、動くこうとする。が、




「あっ……!」



 動こうと、する瞬間……の前、つまり寸前を狙われる。感覚を超えた雪姫の動きに舞依の体はまるで凍り付いたかのように動けずボールを簡単に奪取される。



 その様子を何度も傍から見ている凪は雪姫の動きに注目していた。




(おにぃから聞いてたから知ってるけど、あれが柊さんの『銀世界』……)





 柊雪姫は幼少の頃から体が弱かった。色んなスポーツに興味はあれど、自分がそれをプレーできるとは思えず、ずっと外から選手のプレーの動きを見ていた。



 幸い、家は裕福な家庭だったのでテレビ等の映像ではなく興味を持ったスポーツはアマ、プロ問わず実際の試合の、さらに間近な席でそれを見続けることが出来た。





 期間は小学4年生まででなんと5年間。





 その5年間という圧倒的な「見」の蓄えは、彼女の目にある恐るべき力を身につけさせた。






 それは「人体の動きを識る力」。彼女の眼には筋肉の動きを正確に読み取る力があった。





 人間が力を加える時、その寸前には必ず「脱力」がある。



 当然だ。常時力を込めた状態でずっと生活している人間なんていない。力を抜いている状態から力を込めることで、「動く」という動作があるわけだ。



 脱力→力を入れる→動く→脱力→力を入れる→動く……と意識せずとも人体とはそのように機能している。





 そして雪姫はその過程を視覚的に感知することが出来る。力を込める瞬間を「見る」ことが出来るのだ。








 さらにそれが出来るならば、逆に「脱力」している瞬間も感じ取れるということだ。







 「脱力」……文字通り力が抜けている時に相手の対応は難しいだろう。それこそ、そんな時に相手がボールを奪って来たらどうなるか。



 きっと、動けず何も出来ずボールは奪われる。まるで体が凍り付いたかのように。



 つまるところ。





 雪姫独自の守備技術である『銀世界』とは、相手が「脱力」した瞬間を見極め強襲する先手を超える先々手必勝の守備。相手が仕掛ける寸前で止める技なのだ。



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