☆③─46話 背負っているもの
2連敗…………か。
試合が終わっての夜。俺は公園のブランコに座ってゆらゆらと揺れながら考えに耽る。
今日の試合が終わった時、さすがに落ち込むかと思ったが、それでも皆の士気は案外悪くなかった。
『まずは一勝目指そう!』
『次こそ勝つぞ!』
『頑張ろう!』
色んな言葉をかけあっていた。
だが、事はそう楽観的には済まない。
まずいんだ。今日2敗目を記録したことは。
ファーストステージは全5戦で、勝率のいいチームから次へ進める。
そして、過去の資料を見ても未だかつて2勝3敗という結果でセカンドステージに上がれたチームは存在しない。
つまり、
俺たちは、次負けたら問答無用でこの全国大会の敗退が決まる……!!
敗者復活はない。次負けたら本当に終わりだ。次どころか、残り3戦はもう1敗すら許されない崖っぷちの状況に陥っている。
前に言っていた雪姫の「龍泉を1戦目に引いてしまったことが最悪」というのはこれのことだ。3敗できない以上、龍泉という勝ちを拾うことが難しい相手を引いてしまうことはもちろん、勢いに関係する初戦でってのも悪い。
ここまで騙し騙しやってきたが、現実的なところが見えてきたな。
初心者が全国で戦うのにレベルアップするには2ヶ月はあまりに少なすぎた。せめて夏に到達さえ出来れば……
「よーし! 今日も練習頑張るぞー!」
俺がふーっと息を吐きながらブランコを漕いでいると、夜の静かな公園には似合わない大きい元気な声が。
この声の主は亜子。そしてなゆちゃんを除いたフットサル部メンバーに、雪姫を加えた計6名。
次の3試合目は2日後。相手チームを分析しての試合なら俺の得意分野だが、このランダムマッチング方式では当日まで相手が明かされない。
この一戦目のルールがここまで厄介とはな……。追いつめられるとキツさがわかってくる。
とはいえずっと嘆いてはいられないので。
俺と詩織で司令塔としての特別練習、舞依と凪と雪姫でドリブル練習、亜子と愛実でシュート練習に分かれた。
皆、今日の試合はかなりハードで疲れているだろうからこの練習は自由参加にしたんだが、2連敗している事実を各々が重く受け止めている。
そして詩織も……
「ああもう! ぜんっぜんとめらんない!!」
もう何度か俺にドリブルでぶち抜かれて腹を立てている。
詩織は自身の守備力の低さを課題にしている。だからそれを克服しようと俺の攻撃を止める守備練習を提案してきた。
まぁ、手加減していてもこれなんだよなぁ……
「詩織。やる気は買うが、俺じゃあロ──女子小学生とは技術も体格も違う。練習になんないだろ」
俺じゃなくて、まだ舞依、凪、亜子と練習してた方がやりやすいはずだ。接触しているわけじゃないが、相手の体が大きければ無意識に気圧されて引き気味にもなってしまう。これが癖になれば本番で相手に向かっていく気概まで消えかけてしまいかねない。
「わかってるのよ……ッ! そんなことは……。でも、もっと強くならなきゃ……!」
「勝たなきゃいけないのは俺だって同じだが、どうしてそこまで──」
「あたしは、キャプテンになったのよ。このチームの。あたしが引っ張っていかなきゃいけないのよ……!」
「!」
俺だけじゃない。俺だけが背負ってるわけじゃないんだ。
詩織だって、このチームを背負っている。もしこれで負けて舞依がチームを去ることになれば、きっと詩織はずっと気に病むことになる。
それに、今日の試合も自分が真っ先にスタミナ切れでチームの足を引っ張ってしまった。その悔しさもあるんだろう。
嫌なんだ。誰かに頼りきりで状況に流されるのが。
彼女は自分の手で切り拓く。勝利を。栄光を。掴みたい世界を。
「それに。もう負けらんないんでしょ。あたしは楓みたいにバカじゃないの。今の状況にだって気付いているわ」
「なんともクレバーでいらっしゃるな詩織お嬢様は。相変わらず一言多いのだけはムカつくがその通りだ」
いや俺だって気付いとるわ!! つか気づいてるから元気ねぇんだよ! ったく……こいつは。
「じゃあ、めっちゃ厳しくいくぞ!」
「了解。望むところよ!」




