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すぴーどすた~☆ ~近衛学園初等部女子フットサル部~  作者: 四季 雅
第1章 ☆チーム結成編!☆
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☆③─41話 ボールを奪う? 奪わない?



 ~雪姫side~




「では、今から私が攻めますので連携して守備をしてみてください」



 雪姫は3人にそう告げる。理屈を教える前にまずは見せてみろ。それが雪姫のスタイルだ。

 公園の塀をゴールに見立て、それを守るように3人が立つ。雪姫がそれを(おびや)かしに行くというわけだ。




(連携……連携よね)




 詩織は頭の中で強く、それを繰り返す。一番大事なことで、これまで何回も言われてきていることだ。

 フィクソは守備の中心。守備ができないと話にならない。ましてや司令塔でキャプテンでもある自分が仲間と連携して守れないなんてありえない。



(もう……あんな悔しい思いはしたくない)



 キャプテンとして何も出来なかった龍泉との試合。仲間を導き、己のプレーで鼓舞していく朱堂瑠夏との差を感じた。




 そんな胸中の詩織に遠慮なく、雪姫はドリブルを開始する。




 上手い。詩織はそれを見て正直に思った。



 軽いタッチでドリブル中にボールのことなんか見ていない。しっかりルックアップが出来ている。



 そりゃ当然である。雪姫は自分と同じポジションをしていた。つまりチームの司令塔だったわけだ。自分以上にボールをコントロール出来るだろう。


 だが、守備に定評があるので、もしかすると攻撃は言うほどじゃないんじゃないかとか変な希望を持っていた。





 それこそありえない。今、目の前にいるのは元全国7位だぞ!?





 そうこうしているうちに、雪姫が加速してきた! 抜きに来るつもりだ!




「亜子!行って!」


「よっしゃ!」



 亜子が攻めてくる雪姫に特攻を仕掛ける。しかし、これは抜かれるだろう。



「ああっ!」



 スパァッ! と軽くフェイントをかけられ雪姫に抜かれる亜子。まだまだフェイントになれていない。


 しかし、そんなことは知っている。だからこそ、



(ここ!!)



 亜子を抜き去った瞬間に詩織が動く。雪姫への間髪入れぬ連続攻撃だ。連続でプレッシャーがかかればいくら雪姫と言えども……






「最悪ですよ、それ」


「へ?」




 ボールを取ろうと動いた先、雪姫の足元にボールはなかった。一体どこに……



 自分の足元に、揺らめく影。あっ……




 ボールは自分の頭上を越え、背後に降り立つ。ヒールリフト──雪姫は詩織が来る直前にボールを足で上空に上げたのだ。



 そのまま雪姫はボールを取り戻し、シュート。愛実は一切動けず、塀にバシンッと強い音を響かせる。



 ふぅ、と雪姫は一息つくと、



「今のは連携じゃないですよ。ただ単に特攻を連続で仕掛けただけ。3人で守ったというより1VS1を3回やっただけです。個人技で勝てないとわかっているのにどうしてそんな守り方をするんですか」



 ぐっ……えらい言われようだ。




「守備は何もボールを取りに行くことだけではありませんよ。むしろ、ボールをわざわざ()()()()()()()()()()()()()




「…………は!?」




 なんかいい助言でも飛んでくるかと思えば、雪姫はとんでもないことを言い放つ。




「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 取りに行かなくていいって……守備よ? ボール奪わなきゃやばいでしょーが!」




 守備とは自分たちの得点には一切結びつかない時間帯。言ってしまえば攻められているわけだから、自分たちがピンチの状態である。相手からボールを奪えばそのピンチな時間帯もそれだけすぐ終わる。



 ボールを奪いに行かなくていいとは……意味不明だ。




「では、今度は詩織さんが攻撃に入ってみてください。私と亜子さんと愛実さんが守備をします」


「……わかったわ」




 雪姫の言葉の真意はわからないが、聞くよりも見た方が早そうだ。詩織は反論をいったん止め、言われる通りにボールを受け取り準備する。


 そこから雪姫は何やら2人と話し合い、5分ほど経ったところでこちらに向き直った。




「いつでもいいですよ」



(ふん……見せてもらおうじゃないの)




 詩織はドリブルを開始する。


 そこですぐに自分との守備の違いは出てくる。




(本当に取りに来る気配がない……)




 自分がジリジリと近づくが、雪姫はこちらに向かってくる様子はない。それどころか、ボールを奪いたいと動こうとする亜子を手で静止までしている。



 自分はボールを持っているというのにまったくプレッシャーがかかっていない状態。これではシュート、ドリブル、パス……どの選択肢も選び放題ではないか。それもじっくりと準備する余裕もある。



 こういう時、まず気にするべきはシュートだ。打てるなら打たなくては。



 とはいえ、




(シュートコースはきっちり消されてるわね……)



 愛実、亜子、そして雪姫。3人もいればシュートを通す穴など見つける方が難しい。さすがにここからシュートは無謀すぎる。



 だったら……




(ドリブルで切り裂いていく!!)



 息を整え、一気に加速する!


 自分の視界には正面に雪姫、その後ろに愛実、左に亜子。一見すると右が空いているからチャンスに見えるが、雪姫が自分についてくると厄介そうだ。



 そうなれば。狙うは、亜子の方!



 軽やかなボールタッチから生み出される滑らかな進軍。ボールを足で操作しているというのに、素早い動き。これには亜子も少し対応が遅れてしまう。




「亜子さん! 諦めずついて行ってください!」


「りょーかい! うぬぬ……!」



 詩織を横からチェイスする形でなんとか食らいつく亜子。だが、それでは、




「甘いわよ! シュートコースが空いてる!!」



 雪姫を避けるためドリブルで左方向に進んだ。唯一の守備の亜子も自分の横にいる。足を伸ばしても、シュートされたボールには届かない!




(ほら見なさい!!)



 雪姫の考えを否定するように、勢いよく撃ちだされたシュート。



 そのボールは、




 バシンッ!!!!!!





「ふぅ……」


 愛実の体の中に、納まった。



「くっ……!」



 キーパー、いや、ゴレイロ「正面」。撃った瞬間に気づいたが、空いていたシュートコースには愛実が待ち構えていた。これでは止められるのも当然といったところだ。




 けれど、



(惜しかった。()()()()愛実がコースにいたみたいだけど、シュートまでいけたしもうちょっとで決まってたわね)



 結果は無得点に終わったが、シュートまでいけたのだ。この結果は悪くない。



 それもこれも……奪いに来ないのだから。じっくりとドリブルでどう攻め崩そうか考えることができたのだ。



 どうだ、と言わんばかりに雪姫を見る。




 その詩織に対し……




「お気づきになりましたか?……今の守備が」


「…………はぁ!?」



 守備? どこが??????????



「いやいやいやいや!! 私、普通にシュートできたわよ!? っていうか、何もしてなかったじゃない!!」



 普通にドリブルで崩して、普通にブロックされずシュートできた。




「シュートは運悪くゴレイロ正面だったけど……」


「運悪く……ですか」



 雪姫はボールを拾って詩織に渡す。



「では、もう一度どうぞ」


「…………」



 もう一回攻めろ、というのか。一体何なのだろうか。もしかしてさっきは失敗した? 恥かしくてやり直してくれという話なのか?



 よくわからないが……


 もう一度。





 今度もまた亜子の側を狙う。雪姫を避けて、左方向へ。



「亜子さん!」


「ほいさー!」



 やはりまたもついてくる。さっきの失敗があるから、今度は早めに。



 かかったな。



「んっ!」


「うぇ!?」



 亜子の方へ行ったと見せかけてからの強烈な切り返し。

 そのまま、左ではなく右へ!




 本命は、守備が誰もいない右方面!!



 雪姫がついてくるが、シュートブロックを狙っているのかボールを奪いには来ない。


 そうやってプレッシャーをかけてこないのなら、撃てる!!




 詩織は迷わずシュート!! 雪姫は足を伸ばすが……ギリギリ届かない!!




 そのままボールは……





 バシッ!!!!





 愛実の中へ。またもゴレイロ正面だ。





「くっ……さっきから惜っしいわね。シュートまではいくけど運がない」



 さっきも、今回もゴレイロ正面だ。


 シュートをあともう少し角度をきつくすれば決まっていただろうか。




 ……いや、さっきも、今回も亜子と雪姫はあともう少しでシュートブロックできるような位置にいた。振り返ってもあそこ以外撃てるところなんて……





「……え?」




 あそこ以外撃てるところがない? そして撃った先は……2回ともゴレイロ正面だった。



 詩織の中で時間が止まる。





 自分は最初シュートじゃなくてドリブルを選択した。なぜならその場所からはシュートコースが消されていたから。



 ドリブルで進むと、奪いに来るわけじゃなくてただ離されないようについてくることだけに専念していた。それは今考えれば、自分があるところに誘導されていたとも捉えられる。



 どこへ?




 ゴレイロ正面にしか撃てない位置へ。




 シュートを撃てていたのではない。「撃たされていた」のだ。




「やっと理解できましたか。守備ができないのはそこが原因です」


「!」



 後ろから雪姫が投げかける。自分の弱点を。



「守備は『ボールを奪うこと』だけだと思っていませんか? 極端な話、40分間ずっと攻められようともボールをゴールに入れさせなければ負けることはないんです。ならば、大事なことはゴールを守ること。そのために──」





「相手がやりたことをやらせない……ううん、違う。もっと先…………使いたい『スペース』を使わせない?」




「!! そうです。よく、わかりましたね……」



 雪姫が答えを言い切る前に、詩織はそれに辿り着く。


 正直これには驚いた。



 守備を意識する前にどうしても難しいところなのだ。ここは。




 通常、守備と聞くと真っ先に思いつくのはボールを奪くことだろう。



 なぜなら、サッカーやフットサル、それにとどまらず球技のほとんどはボールを持っている側が「攻撃」、持っていない側が「守備」だからだ。




 当然ながら、得点しなければ勝利できない以上、ボールを持っている方が安心安全。逆に持っていない方はいつ得点されてしまうか不安だ。はやくボールを奪いたい、よし奪いに行こう、そう思うだろう。





 しかしだ。視点をもっと広げると。




 では、サッカーやフットサルにおける得点に結びつくプレーのほとんどはどうやって生み出されるか。





 得点のアシストになるような有効なパス──ゴールに近い良い「位置」にいる仲間がいれば発生する。





 ドリブルで敵を抜き去りゴレイロと1VS1になる──強いドリブルに必要なのは自分が自由に使える「空間」の広さや速度。





 ゴレイロが取れないような強烈なシュート──長距離なら話は変わるが、距離が中距離~近距離であれば、シュートを撃てるような角度と「場所」。







 そう、強いプレーの全ては得点に有効となる「スペース」が鍵になっているのだ。




 では、それらからゴールを守るためにはどうするか。



 全てのプレーにおける有効な「スペース」を使わせないように守備側があらかじめにその場所を陣取っておけばいいのだ。



 それこそが、守備。ボールを奪うというよりも、ゴールを守るために何をするか。自分はどこにいるべきか。




 先の雪姫の守備も。



 最初に詩織からシュートを直接撃たれないために真正面に雪姫が陣取り防ぎ、ドリブルもゴレイロ正面になるような位置に行くようにわざと仕向けた。もっと言えば、詩織が動いた瞬間に、雪姫が背後の愛実にひっそりと指示を出して詩織が進んだ先で正面となる位置に動かしていた。




 ヒントは与えていた。しかし、これに少しのきっかけで気づけるのはさすがだ。




(正直。望みは薄いと思っていましたが、楓様が期待するわけですね。これは間違いなく才能がある)



 けれども、あまりにも経験が無さ過ぎて持ちうる才能をほとんど使えていないタイプ。この手の選手はきっかけ一つで思いもよらないレベルに化ける。が、才能が大きすぎる故に熟すのにかなりの時間を要する。




(守備が習得できるのはきっと早くても東京予選終了後。どこまで形になるかはわかりませんが、練習に付き合いましょうか)



 詩織の中で「守備」の方針が見えてきたことで、今日を境に彼女はまた進歩を続ける……!




(☆あとがき☆)


今回の話なんか難しいこと言っててよくわからんなーって人は「あ、ふーん」って感じで大丈夫です。僕も「あ、ふーん」って言いながら書いてます(なんじゃそら)

 あと数話もすれば一気にありえんとんでもない話があるので箸休めしといてください

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